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【本編完結】公爵令嬢は転生者で薔薇魔女ですが、普通に恋がしたいのです  作者: 卯崎瑛珠
第一章 世界のはじまりと仲間たち

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〈28〉お誕生日パーティです 1


 

 いよいよお誕生日パーティ当日。

 レオナは十五歳になった。この王国では十六歳が成人なので、ほぼ大人である。


 前世であれば、思春期真っ盛りの年齢だ。

 

 遊び回っていておかしくはない歳なのに、この世界の男子はもう世に出て、士官したり騎士団に入ったり、商売を始めたり、店に勤めたり、社会人待ったナシである。

 貴族女子なら婚約して来年結婚、など普通のことであり、一生を添い遂げる人が家の繋がりや体裁で決まるなんて、本当に過酷な世界だなあ、とレオナは思う。


 そうやって現実逃避気味に考えているのは、ドレスのコルセットがキツくて、アクセサリーが想像以上に豪華だったからである。

 

 ベルナルドは、完全にやり過ぎていた。

 

 素人目でも、前世なら軽く億はするであろうブルーサファイアのチョーカーが、青いベルベットの化粧箱に鎮座したまま持って来られて――本当に目が眩んだ。

 

 チョーカー部分は様々なカットのエメラルド、ブラックオニキス、ダイヤが薔薇の茎のように連なり、ちょうど左鎖骨の上に大粒のブルーサファイアが配置されるデザイン。

 花開いた薔薇のようにカットされており、イヤリングもお揃い。フィリベルトのネックレスを合わせると、青薔薇の斜め下に金の薔薇がきて、二輪刺しのようになる。


 ドレスはいわゆるヴィクトリア調の襟ぐりが浅く、上半身は身体にフィットしたデザインで、七分袖の裾にたっぷりのフリル。下半身部分は何重ものレース、中はパニエでボリュームを持たせている。

 深紅のベース生地に、たくさんのビジューと薔薇の刺繍、ウエストに巻かれたブルーグリーンのリボンは、左の脇腹で大きく結ばれ、結び目にはまたカットダイヤで装飾された、ブルーサファイアのブローチ。チョーカーと連動するデザイン。

 さすがマダム、計算し尽くされていると感心した。


「とってもお似合いです! お嬢様」

 丹念に肌の手入れからヘアスタイルまで仕上げたマリーは、満足げだ。レディですから、と初めてのフルアップ。首元が心許なく、うなじを見せるということは、かなり勇気がいることなんだなと実感していた。緻密に編み込まれた髪をまとめて、顔の横だけ少し巻いて垂らしている。オーソドックスで上品。姿見で見ても、え、わたし? といった感じで、現実感がまるでない。


 レオナの希望で、夕方から夜までディナーを楽しむだけの小規模なものではあるが、皆で着飾り、料理長の腕によりをかけたフルコースメニューを食べ、フィリベルトはバイオリン、アデリナはピアノを披露する。

 

 家族で、産まれた時から今までの思い出話をする、何よりも愛しく大切な時間だ。

 

 今回招待したのは、家族に加えていつものシャルリーヌ、バルテ侯爵夫妻とシャルリーヌの弟リシャール、ジョエル(毎年誘うが大抵任務で不在、今年は奇跡)に加えて、今年初めてのラザール、カミロ、テオ、ゼルだ。

 ルーカス、ヒューゴー、マリーは給仕に専念だが、居てくれるだけで嬉しい。カミロはダメ元であったが、出席者が限られているのであれば、と快諾頂けた。嬉しかった。



 コンコン……



「レオナ、入っても良いかい?」

 まだだいぶ早い時間にも関わらず、ベルナルドが部屋を訪れたことに戸惑いつつ返事をすると

「少々困ったことが起きた」

 と部屋に入るなり低い声で言われる。



 ――え?



「……レオナは、エドガー殿下と親しいのかい?」



 ――は?



 ブンブンと、即座に首を振る。


「だろうね……だがいらっしゃっている」



 ――はい!?

 まさか強引に押しかけたっていうの!?

 信じられない!



 茫然としていると

「殿下いわくは、日頃から親しくしている学友なのだから祝いたい、ということだが……招待状がないのでルーカスが困っていた」

 と苦い顔で続けられた。

 あまりに非常識な言い分に、レオナは怒りすぎて何も言葉が出てこなかった。みるみる身体が震えてくる。

「今はフィリベルトが対応中だ」

「すぐに参りますわ、お父様」

 出したことも無い低い声が出た。やはりローゼン家の人間だなと、部屋の温度が一気に下がったことで実感するレオナの後ろに、マリーが静かに従った。

 


 ベルナルドのエスコートで、玄関ホールへ続く中央階段に向かうと

「堅苦しいことを言うな、フィリベルト」

「ですが殿下、本日の主役はレオナでございます」

「日頃から親しくしているのだから、歓迎されるに決まっているであろう!」

「招待状をお持ちではないのに、ですか?」

「みなの目を気にして誘えなかったに違いない!」

 などと、ふざけた回答が鳴り響いていた。

 

 残念だと思っていたのは間違いだった。馬鹿だった。

 頭が痛くなる。

 

 レオナはこそりと、ベルナルドに断る。

「……お父様、私にお任せいただけますか?」

「分かった。いつでも助けるからね」

「ありがたく存じます」

 

 レオナの足元から、冷気が階下に向かってゆっくりと降りていく。



 ――ごめん、とても抑えられない。

 私もまだまだ子供だな。


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 お読み頂きありがとうございました。


 2023/1/16改稿


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