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アイドルは異世界の女悪魔の話⑧


「あ゛っ……いつっ……!」


 レフィリアは咄嗟に光剣で鎌の刃を逸らし直撃こそ避けたものの、大きく吹っ飛ばされ、闇の神殿の鉄扉にぶちあたり、扉をひしゃげさせるほど身体を激しく打ちつけてしまう。


「オオオオオオッ!!!!!」


「流石はエリジェーヌさまああああ!!!!!」


「スゴイぞぉー! かっこいいぞおおおおお!!!!!!」


 エリジェーヌのド派手な決め技を観た会場の観客たちは大歓声を上げて盛り上がる。


 これじゃあ、アイドルのライブどころかむしろ女子プロレスじゃないか。


 そんな悪態を頭の隅に浮かべながら、全身を軋ませる激痛を我慢して抑え込みつつ、レフィリアは何とか立ち上がってみせる。


「しつこいぞ、金ぴか女ァ!」


「さっさとくたばんなさいよ!」


「死ね! 死ね! 死ね!」


 会場の観客から自分に対しては、逆に心無いヤジが飛んでくる。


 この場所にいる全ての者達が、自分に対して敵対心を抱いているという嫌な状況。


 すごく、すごく精神的に苛み、身体の痛み以上にレフィリアを痛めつけてくる。


「おっ、そう来なくっちゃ。まだまだ終わったりなんかしないでよね」


 地上に降りたエリジェーヌは、得物の大鎌を変化させると、今度はハルバードの形態にしてレフィリアへと迫って来た。


「舐めるなッ……!」


 レフィリアも応戦する形でエリジェーヌへと急接近し、互いに目にも止まらぬ斬撃をぶつけ合うこととなる。


「そらそらそらそらッ!」


 やはりエリジェーヌが繰り出してくる連続攻撃は、あまりにも速い。


 パワーだけならレフィリアだって引けを取らないものの、今の彼女では受け止めるだけで手一杯な状況だ。


「どうしたのレフィリアちゃん! もうバテてきちゃったのかな?!」


「くっ……この……ッ!」


 何とか反撃の糸口を見つけたいが、今のところエリジェーヌにそんな隙は全く見受けられない。


 それどころか、蓄積したダメージがレフィリアをより厳しい状態へ次第に追い込んでいく。


「吹っ飛べェ!!」


「い゛ッ……!」


 エリジェーヌのハルバードによる大きな振り回しを受けてレフィリアは弾かれるように突き飛ばされ、床を転がりつつ膝をついてしまう。


「はぁー、こんなもんかぁ。レフィリアちゃんって思ってたほど、そんなに強くはないんだね」


 エリジェーヌはハルバードをくるくると回しながら、余裕そうにレフィリアを見下ろす。


「くっ……!」


「まっ、でもそれなりに楽しかったよ。じゃあ、あんまり弄るのも何だし、そろそろ終わりにしてあげようかな」


 そう言うとエリジェーヌはハルバードの刃に赤黒い魔力の奔流を迸らせた。


 それはまさしく死神が振るう処刑のギロチンで、これよりレフィリアの首を断とうというのだ。


「今宵のライブは貴方の斬首を以てフィナーレ。……あっ、首のないレフィリアちゃんを抱きかかえながら一曲最後に歌うのもいいかな」


 ややハイになっているせいか、そんな恐ろしくも悪趣味な台詞を吐きながらエリジェーヌはレフィリアの所へつかつかと歩み寄って来る。


 拙い、拙い、拙い。


 避けなければ本当に殺される。


 しかし、今の満身創痍なレフィリアではエリジェーヌの速度に反応して回避できる気がしない――!


「レフィリアちゃん、私からの一撃プレゼント、手向けとして受け取って」


 そしてエリジェーヌは最高の笑顔を向けつつ、悍ましい魔力を放出しているハルバードを大きく振り上げた。


「ハートフル・ハルバードッ――!」


 殺られるッ――!


 レフィリアがそう覚悟した、その時――


 ガシャリと、エリジェーヌの腕に何かが巻きついた。

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