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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
終章  魔石職人
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魔石職人

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記) バグ=バグ(台詞表記)

   終章  魔石職人


 商業ギルドで安全確認が済むまでの間に、もう少し改良を施しておこうと研究を続けることにした。こちらの人間は、日本ほど衛生的ではないから、どこぞの風呂よろしく全員共有で治療液に浸かるっていうのもどうなのかなって考えたのだ。

 それで思い付いたのは、薬と同じく体内に入れて治療してみてはどうかというものだった。

 金属を体内に入れるというのはどうかと考えたりもしたけれど、一応前のものも頭を浸けても呼吸できればなあって感じで考えていたので、今更かなって思える。でもこれは実際に人体に変な影響が出ないのかどうかの検証が必要だと思われた。

 それと、どの道使い捨てになる魔道具なので、必要量が少なくて済むって利点もあると思われる。

 全身を浸ける必要がある量が、薬みたいに飲むのだからせいぜいがコップ一杯という量に減る感じだろうか? それにある程度日数がかかる場合、ずっと浸かっているのよりある程度動き回れるようになるのと、治療の間場所を取らないなどの利点も出てくると思われた。

 そう考えると、服用タイプの使い捨て魔道具にするのがいいかもしれない。

 しばらくの間服用タイプが出来ないか開発をしていると、商業ギルドから呼び出しがかかった。

 幸には商業ギルドに行って来ると言って、早速向うと応接室へと通される。


 鑑定員「ロップソンさん、わざわざ申し訳ありませんね」

 ロプ 「いえ、それで治療の魔道具の件ですよね? まだ安全性の確認には早い気がしますが、何かありましたか?」

 鑑定員「はい、今回教会の方といろいろと打ち合わせをさせてもらったところ、多少の条件は付きましたが使用許可がもらえることになりました。そこで一ヶ月の安全性を確認し終えた段階で早速魔道具を使おうという話になりました」

 ロプ 「そうですが。正直揉めるかもしれないって考えていたので、ホッとしました」

 鑑定員「そうですね。私共もかなり時間がかかるものだと思っていましたので、ちょっとビックリしているところですよ。それで条件の方ですが、教会の仲介で魔道具を使用すること。これは仲介料を取る意味でも理解できる提案でしょうね。それと魔道具を使用する者を教会側が決めるということでもあります。決定権が教会側にあるのであればプライドもそれ程気にしなくていいってことなのでしょう」

 ロプ 「それは困った人が利用できなくなってしまいませんか? 僕は困っている人を助けたくて魔道具を開発したのですが」

 鑑定員「そうですね。ではまだ正式稼働していないので、その辺りを詳しく話し合ってみますよ。魔道具の製作者がそう言っているのに突っぱねるようなら、教会のイメージが下がるって言えば、多少は譲歩してもらえるでしょうしね。ただこちらも教会も、多少の利益を求めていると思いますので、無報酬で治療をという話になると難しいと思いますよ」

 ロプ 「わかりました。確かにそれは僕としてもちょっとって気がするので、そこまでは言いません。でも適正価格でお願いします」

 鑑定員「わかりました。ですがこの治療価値はかなり高いものですので、どうしてもそれなりの金額は請求することになります。ですので、治った後の仕事の斡旋や、分割での支払いなど何かしらの方法を提示できる形で進めるようにしましょう」

 ロプ 「そうしてもらえるのなら嬉しいです。よろしくお願いします」

 鑑定員「では今回の試験が成功だった場合の商談を進めましょうか」

 ロプ 「はい、お願いします」

 鑑定員「まず、この魔道具の使用回数などは決まっていますか?」

 ロプ 「調合の方の栄養剤を使っているのと、衛生面の問題もありますので一回毎にメンテナンスを行いたいと考えています。今は液体状の魔道具と栄養剤が混ざっている状態なので、それを蒸発させて毎回栄養剤を入れ替える感じでお願いしたいと思っています」


 これは服用タイプを研究している間も、ちょっと気になっていたので、もしこっちが開発できない場合の緊急策として考えていたことだ。雑菌などもこれで燃やして消毒できるので、衛生の面では問題なくなるだろう。呼吸の点では、体内に金属を入れるのはやはり問題になりそうな気がするので、チューブを銜えてもらって空気を送り込むのが良いかもしれないな。


 鑑定員「その蒸発させるっていう工程は魔法とかが必要になりますか?」

 ロプ 「いえ、容器の方にそういう魔道具を組み込ませたいと思っています」

 鑑定員「そうすると治療魔道具と、メンテナンス用魔道具がセットになるのと、栄養剤が必要と言うわけですね?」

 ロプ 「はい」

 鑑定員「栄養剤は錬金術の合成でしたか・・・・・・そのレシピは売ってもらえますか?」

 ロプ 「セットのようなものですので、含んでと考えていますよ」

 鑑定員「わかりました。ではそれらを考慮した値段を付けさせてもらいますね。今回はうちの支部だけでの設置になりますが、今後他の支部でも設置されるかもしれません。その時は追加発注させてもらいますね」

 ロプ 「はい、その時はよろしくお願いします」


 その後提示された金額は、目が飛び出そうな程の値段が付いていた。それだけの価値がある発明だったってことなのだろう。まあ完全に安全が確認できたらって話だけれどね。それとそれだけの金額になると持ち運ぶのは危険なので、そのまま預けてもらうようにお願いする。まあギルドの方としても、結構な金額になるのでわざわざ用意するのは手間だったようなので、快く了承してもらえた。


 ロプ 「ただいま~」

 幸  「お帰りなさい。どうだった?」

 ロプ 「まだ安全を確認している段階だけれど、教会の方が認めてくれたそうだよ。これで引退した冒険者とかもまた、復帰できるかもしれないな」

 幸  「よかったね!」

 ロプ 「ああ、それにもし問題がなかったら、凄い金額で取引が成立しそうだから、かなりお金には余裕が出来るよ」

 幸  「それじゃあ、いつでも冒険者を引退できるね」

 ロプ 「まあ結構冒険者は楽しいから、続けて行きたいって思うけれど、いつでも止められるのは嬉しい感じだな」

 幸  「お祝いする?」

 ロプ 「いや、まだ正式な決定じゃないから、決まってからにしよう」

 幸  「そうね」


 結果を待つ間、もう少し扱いやすい魔道具にしたかったので、服用するタイプの物を研究していたのだけれど、やっぱり大量の金属を体内に入れるのは体によくないようだった為、中止する事になった。少量なら問題なさそうなのだが、それだと魔道具としての効果が低くて、予定していた治療効果にならないようだった。

 まあ、衛生面の問題もクリアできたから、服用タイプは諦めても問題ないかな~

 そうなると空いた時間で、途中になっていた野菜の開発を進めて行くとしようかな。という訳で、また幸にも手伝ってもらいつつ、野菜を合成して行くことにした。


 ロプ 「はぁー。もっとこう、美味しい野菜と美味しい野菜を合成したら、もっと美味しい野菜になるって単純に考えていたんだよ」

 ジャド「まあ、普通はそう考えるわな」

 ロプ 「だろう? でも出来上がったものは、ただの雑草とか野菜になったとしても収穫量が増えただけとか、ちっともこちらの思惑通りになってくれない」

 ニナ 「やっぱり私にはそういうチマチマした作業は向かないな~」

 ミア 「そうですか? 結構生産も楽しいですよ」


 そう言いつつ、ミリアナが指導した通りに縫い物をしていた。


 レイ 「私にもちょっと難しいですね」

 ジャド「こういうのは向き不向きがあるからな~」


 結局あの後いろいろと合成して野菜を作り続けて来たけれど、野菜そのものになることの方が珍しいくらいで、美味しい野菜にすることはできていない。

 一ヶ月の安全確認が終わって、正式な契約を結ぶ事ができた為まとまったお金が手に入ったこともあって、おめでとうと野菜が上手く行っていない残念会を兼ねて、みんなが家に遊びに来て騒いでいるところだった。

 ジャドが気を効かしてお酒とかも買って来てくれていたので、ちょっとしたおつまみを幸が作ってくれる。今はお酒を飲みながらそれらを食べて愚痴をこぼしたりしていた。まあついでにこの機会にってミリアナとレイが裁縫を教えて欲しいと言ったので、教えたりもしていたけれどね。

 とにかく思い思いに楽しんでいる。


 ジャド「まあでも、治療の方は上手く行ったようで良かったじゃないか。かなりの高額になったんだろう?」

 ロプ 「ああそっちはいい収入だったぞ」

 ニナ 「いいな~」


 まあいつまでも腐っていてもしょうがない。冒険も生産も気持ちの切り替えが大事だ。ということで愚痴は止めて、もう少し有意義に時間を使うことにしよう。

 僕のやり方では偶然に頼った錬金合成になってしまう為に、まともな調整というものが難しい状態なのが失敗の元なんだ。そこらあたりのコツをケイト教頭先生に聞いてみるか、そもそもの手段をもっと別の方法で考えて行くべきなんだろうな~

 一度ケイト教頭に相談してみて、難しそうなら別の開発でもしてもう一度戻って来るとかしてみよう。


 ジャド「お、切り替えたか」

 ロプ 「ああ、悪いな愚痴って」

 ジャド「いや、気にしなくていいぞ」

 幸  「それにしてもミリアナさんは裁縫上手ですね」

 ミリ 「確かに、才能はあるな」

 ニナ 「さすがだね!」

 ミア 「そうですか? でもこれくらいなら普通にできそうですけれどね。昔はよく破れた服を繕ったり、雑巾やタオルにしたりと、教えられましたから」

 ニナ 「あー、私それ苦手だったよ」

 レイ 「私も、ちょっと苦手にしていました。だから余計に剣の修行の方にのめり込んだって感じですが」

 ニナ 「わかるわかる~」


 ミリアナは革の扱いはきつそうだけれど、布を扱うのはそこそこできそうな感じだった。たぶん教えていけば革も扱えるようにはなるのだろうな。

 それにしてもみんなやっぱりこういう小手先の作業より体を動かしたいってところは、冒険者なんだなって思える。その後もついでにみんなで食事をして騒ぐと、いい気分転換にはなったようだ。こういう時の仲間っていいものだと思えたよ。

 それからしばらくすると、治療の魔道具は知れ渡るようになって、商業ギルドには希望者が押し寄せているようだった。

 その商業ギルドからは正式に他の支部に置く為の治療魔道具を発注されたので、ケイト教頭先生にもう一度錬金術を教えてもらっていたのだけれど、一時中断して納品作業をすることにした。

 そんなある日の夜。家の中に知らない気配を感じて飛び起きることになった。


 ロプ 「誰だ!」


 こんなに近くまで進入されたのに、まるっきり気が付けなかったことを悔しく思いながらも周りを見回してみて、幸がいなくなっている事に気が付き侵入者を睨み付ける。これだけの手練れだ。幸を誘拐する事が目的じゃなく、僕に何かさせたいのだろうと予測を付ける。

 この男はまるっきりこちらの事を脅威とみなしていなくて、こちらが下手に手出しできないとわかっているのか、無防備とも取れそうな態度でそこに立っていた。実際幸を人質に取られているのなら、下手に逆らえない。


 男 「どうせ気が付いて起きるのなら、もう少し早く起きて欲しいものだが・・・・・・とりあえず幸の安全は確保させてもらった」


 こちらが警戒してどうにかして、幸を助ける手段を探そうと考えていたら、そんなことを言って来た。幸の安全を確保した? その言葉を鵜呑みにするのならば、この男は味方だってことだが、誘拐したのはそもそもがこの男である。

 それとも自称正義の味方とかで、幸が僕に誘拐されたとか、訳のわからないことを考えている頭のおかしなやつなのだろうか? 僕がいろいろな可能性を考えていると、また目の前の男が喋りだした。


 男  「レイシアと眷族にそれぞれ対処をお願いできるか? 隣の家にも確か仲間がいたと思うがそっちはこちらで対処しよう」


 でもこれは僕に対して何か言ったわけではないな。風の魔法で仲間と通信しているのか? そしてその会話の中にレイシアさんの名前があったようにも思えるけれど、そんな訳ないよな?


 男  「頼む」

 ロプ 「誰と話している!」


 いい加減、こちらを無視してやり取りをする男に苛立って、そう問い詰める。夜中に突然やって来て、幸を連れ去った男だ。確実に味方だという証拠でもなければ信用することはできないだろう。


 男  「マインドブロー」


 そう改めて警戒し直していると、案の定魔法で攻撃を仕掛けて来た!

 それに対して予め警戒していた僕は、精神を活性化して男の魔法に対抗する準備をしたのだけれど、男の使った魔法は僕以外に向けられたものだったようで、こちらには何の影響もなかったようだ。そしてその効果は意外と近くから物音が聞こえて来たことで、そいつらに向って発動したのだと理解させられる。

 目の前の男の後ろ、廊下に倒れている黒尽くめの男が倒れるところが見えた。まだこれだけではこちらを油断させる為の芝居という可能性もあるか? そう考えていると、男が玄関の方へと移動して行く。まるで僕のことなんて気にしていないような態度だ。

 相手の意図もわからないままでは最悪な事態に対処できないと考え、とりあえずその男を見失わないようにしようと考えた。玄関に向う途中には、気を失っていると思われる黒尽くめの男が他にも倒れているみたいで、もしこれが芝居でないのなら、あの一瞬でこれだけの相手を無力化するだけの実力を目の前の男が持っているということを証明していた。

 厄介そうな相手だな。そう思っていると、男が玄関から外に出る寸前で家の扉が別の者によって開けられた。


 ジャド「ロップソン! 無事か!」


 仲間と合流できたことに、少しだけホッとする。まだ男が味方かどうか確信を持てないから安心はできないけれど、少なくともジャドが来てくれたなら、まるっきりの無抵抗でやられはしないぞ。

 そう警戒して男を睨み付けていると、ジャドもそれを理解して男を警戒してくれた。そんな警戒をしている中、その男は再び誰かと連絡をしていたようだな。そしてそれが終わったと感じたのか、ジャドが男に問い詰める。


 ジャド「それで、お前は何者なんだ? 敵ってわけではないのだろう?」


 さすがに異常事態だった為、鎧を着ける暇がなかったと考えられたが、上級冒険者らしい立ち振る舞いに見える。油断なく男を観察しつつ、隙あらば拘束できるよう身構えていた。


 男  「まあ、僕が敵なら今頃お前らは死体になっているだろうな。それよりリーダーなら仲間の安全くらい確認したらどうかと考えるがな」


 目の前の男にそう言われ、ジャドは慌てたように飛び出して行った。この男が味方だとわかった訳ではないけれど、確かにそれを確かめるまでじっとしているのは得策ではないかもしれない。特に僕達のリーダーとして行動するのならば、今現在敵対していない相手より、確実に敵だと判断できる者に対して行動を起こした方が余程いいだろう。

 まあ、そうするとまたこの厄介そうな男を僕だけで相手しなければいけなくなるのだけれどね。


 男  「幸、起きたか?」


 とりあえず、怪しい動きを見せたら直ぐ間合いに飛び込めるよう距離を詰めようとしていたら、幸の名前が聞こえて来た。


 男  「とりあえず仲間と合流させるので着替えろ」

 ロプ 「幸は無事なんだな!」


 男の言葉に思わずそう確認していたけれど、この男何者なんだ? 幸に命令しているってことは、幸の知り合いってことなのか?


 男  「直ぐに合流できる、いちいち騒ぐな」


 こちらは心配で仕方ないというのに、まともな返答をくれなくてますます苛立って来る。

 男としばし向き合って睨み付けていると、目の前に幸が現れた。何でって考える前に、思わず無事が確認できて抱きついてしまう。幻覚とか映像とかそういうものじゃなく、確かに今ここにいると幸の体温を感じてそう実感できた。

 やっと心から安心できたよ・・・・・・


 男  「幸、この指輪をいつでも身に着けておけ。危険が迫ったら自動で装備を身にまとうようにしてみた」

 幸  「ありがとう、バグ君」


 え? 今幸はバグ君と言ったか? 大人の男を捕まえて君付けなのも驚いたけれど、その名前は確かどこかで聞いたことがあるぞ・・・・・・


 ロプ 「魔道具・・・・・・お前が発明王か?」

 幸  「ロップソン、いろいろお世話になっているんだから、あまり失礼なことは言わないでね」


 思わず呟いた僕に、幸が微妙に責めるような表情でそうたしなめて来た。確かにこの男が発明王ならば、幸だけでなく僕もいろいろとお世話になっていると言ってもいいだろう。

 僕は直接助けられた事は今回が初めてになるのだろうが、幸がどれだけ世話になっているのかだけ考えても返しきれない程の恩がある相手だった。僕としてはそのおこぼれみたいなもので、美味しいご飯が食べられていたりする。

 レイシアさんのところから貰って来る料理の材料があるからこそ、日本に馴染みきった僕達は飢えなくてすんでいるといっても過言ではないだろう。これは幸に責められても反論の余地もないな・・・・・・


 ロプ 「ああ、これは失礼しました。今までいろいろ幸がお世話になりました。それと今回まだ何があったのかわかりませんが、助けていただいたようでありがとうございます」


 改めて味方だとわかったので、僕は心を入れ替えてお礼を言うことにした。一度ちゃんとした形でお礼を言いたかったのは確かだしね。まさかこんな形で僕まで助けられるとは思いもしなかったけれどね。


 バグ 「まあ、構わんよ。そんなに幸が大事ならさっさと結婚してしっかり守れよって言いたいがな」

 ロプ 「っ! 余計なお世話だ」

 幸  「バグ君ったら・・・」


 余計なことをと思ってみたものの、幸はなんだか嬉しそうというか、待っていたのか? 照れて真っ赤になっているものの、嫌がっている様子はなかった。

 ということは、これは悪いのは僕の方だな。せめてもう少し名前が売れるとかして、幸に不自由させないような暮らしをって考えていたのだけれど、ちゃんと気持ちだけでも伝えておくべきだったか?


 バグ 「幸、何ならこちらで日本式の結婚式を準備してもいいぞ。サフィーリア神は結構お茶目な性格みたいだから、日本式の結婚式を挙げても、こちらの祝福をくれるみたいだ。まとめて祝えるぞ」

 幸  「あ、じゃあその時はお願いしてもいいかな?」

 バグ 「ああ、問題はどこで結婚式をするかだろうが、ロップソンがはっきりしなければどこで式を挙げるとか、決められんか」


 まるで親子のような会話をして二人でこちらを見て来た。さすがにこの視線は痛いな。


 ロプ 「じゃあ、幸・・・・・・」

 バグ 「ここでプロポーズとか、さすがにムードも何もないと思うがな」

 ロプ 「ぐっ!」


 これ以上待たせるのも申し訳ないと思い、気持ちを伝えようと思ったのに、いきなりズバッと切り込まれた。さすがに言われた僕も、発明王に言われたから結婚を申し込むのはどうなんだって後から気が付いたよ。自分でも気が付けたから余計に反論も何もできなくなったよ!

 さすがに男として情けないかと思い頭を抱えていたら、ジャド達が家の庭に転送されて来た。


 ロプ 「なあ、ひょっとして発明王は、転送の魔法も使えるのか?」

 幸  「うん、普通に使っているよ?」


 さっき幸もいきなり目の前に現れたけれど、余裕がなくてそこまで考えが回らなかったが、それってかなりの上級魔導師じゃないか。それだけの力を持ちながら、僕を越える魔道具を作る高い技術力も持っているだなんて、ちょっとショックだった。

 発明王は、どこから取り出したのかバジリスクの革かな? それを広げて僕らに話しかけて来た。レイシアさんがその広げられた革を発明王の後ろから除き込んでいる所を見ると、そこに何か書いてあるのかな?


 バグ 「まずは状況を説明しておこう。今回君達が襲われる原因になったのは、ロップソンが魔道具を安易にばら撒いたことが原因だ」


 微妙に落ち込んでいると、さらに落ち込むようなことを発明王が言って来る。


 バグ 「お前の作った治療用魔道具だが、それには若返りの効果が認められたそうで、ウルグフォルン国という国の貴族連中がこの魔道具を不老不死の魔道具として、お前の身柄を狙っていたみたいだな。ジャドだったか、お前らはそれに巻き込まれ、人質として誘拐されるところだったという訳だ」


 そして、発明王の言った説明に、何だそれはって思う。僕としては普通の治療をするだけの魔道具のつもりで開発したのに、何でそれが不老不死の魔道具になるんだ? 訳のわからない言いがかりを付けて来たそのウルグフォルン国ってところに、文句を言ってやりたい気分だよ。


 ジャド「危ないところを助けていただいて、ありがとうございます。それと先程は失礼した」

 バグ 「安心しているところ、申し訳ないがこれは一時的な話だ。今後もロップソンを狙って来る者はドンドン増えると思うぞ。今回は幸が巻き込まれた為、ついでに助けたが次は助ける気はない。そこをよく理解して欲しい」

 ロプ 「えっと、何故今回は助けてくれたのですか?」

 バグ 「そうだな・・・・・・君達に理解できるかわからないが、僕は幸に対して仲間意識がある。当然直接的な知り合いなどではないが、こっちとしては普通に仲間だから助けようと思っただけだ。ただずっと守り続けようみたいな考えはないので、まあ今回だけは助けることにした。後は自分達で何とかするべきだと思う」


 いろいろと納得できたような、何一つわからないような微妙な感じだな。とにかく今回だけは助けてもらえたけれど、次はないってことでいいのだと思う。まあ当たり前だろうね。これでも実力的には上級の冒険者になってきているのだから、多少のごたごたは自分達で解決するべきだ。


 バグ 「じゃあな」


 そんなことを考えていたら、発明王とレイシアさんは、転移して帰って行ってしまった。それにしても、貸しが雪だるま式に増えて行って、もう返しきれない程積み重なってしまった気分だよ。これ、どうしたらいいんだろう・・・・・・向こうは貸しとも思っていないのかもしれないが、どこかで返していけないものかな。


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