鎧の完成
登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記)
直ぐに考え付く治療法方は、自然治癒力を強化することだった。これは既に実践していて、幸の指輪にはもうその機能が備わっている。しかし、大怪我に分類できる怪我を負った時はどうなのだろう? 自然に治るものなのだろうか?
おそらくその時はミリアナのような癒し手による治療が必要になるだろう。
でも、僕には治療の魔法が使えない。自然治癒力をあげるという事だけでも、僕は他の魔法使いより優れていると考えられる。本来ならば、魔法使いに治療手段は存在していないのだから。
そう考えると狩人や戦士が学ぶ応急手当の方が、まだ優れていると思われるが、止血やせいぜい骨が折れた時に添え木をして固定するとか、川で溺れた者を助けるとかであって癒すというものではない。
後は調合師や錬金術による薬だろう。調合師の薬は自然治癒よりましという感じで、ものによっては日数がかかる方法になり、錬金術による薬ならば魔法薬と呼ばれる即効性の高い治癒が期待できる。
そう考えると、僕の目指すべき治療法方は錬金術を取り入れる方向になるのだろうか?
今まで作って来た魔道具研究は、全て魔法を利用したものだったので、錬金術の力を魔道具に組み込むというのはまったくの新しい試みである。せいぜい属性石の合成が錬金術と関わったくらいだろう。
だけれど、今回は魔法の治療薬を魔道具化する為の方法が必要そうだ。
これは時間がかかるかもしれないな~
そう考えて、僕はある程度長期化することもわかっているけれど、研究する事に決めた。
その後しばらく研究した結果、調合効果を魔石化することはできないみたいだった。
初めのうちは何かしらの方法がないかがんばって考えてみたのだけれど、そもそも魔石化された石に魔法を書き込むという作業によって魔道具は完成している。僕のこの書き込み作業は魔石にしか通用しないものではあるけれど、その仕組みそのものは魔法使いが全員使っている魔法そのものだ。
僕はその魔法式という構成をアレンジしているに過ぎない。つまり何が言いたいかといえば、錬金術で作り出されている薬には、この魔法の構成が存在していなかった。
薬になる前段階では錬金陣を使っているものの、そっちを書き換えても意味がなかった。そして一度合成が完成した薬が魔石にその効力を宿すこともなかった。上手くいかないものだな~
そこで代わりとして考えたのが、錬金合成による、治療効果を持つ魔石の開発というかそういう効果が含まれているであろう魔石の発見である。
実在するのかどうかも怪しいものだけれど、このまま研究して行くよりはまだ、可能性が高いと考えられる。
その研究途中でジャドがやって来た。しばらくは研究に没頭しているって言ってあったので、実に一月振りくらいになるのかな? みんなもかなりの長期休暇に、のんびりしていることだろう。
ジャド「がんばっているようだな」
ロプ 「おう、久しぶりだな」
幸 「ジャドさん、いらっしゃい」
ジャド「サチさんもお久しぶり。ロップソン、今日来たのはソロソロ鎧を作って貰いたいなって思ったのと、ここらでちょっと冒険にでも行っておかないかって考えて誘いに来たぞ」
ロプ 「そうだな、たまには行っておかないと体が鈍るか。鎧は後でいいのか?」
ジャド「そこまできついやつに行く予定じゃないからな。冒険者としての感覚が鈍らないように行っておこうって感じだ。それとサチさんをリーダーにして、俺達を指揮してもらって冒険に慣れてもらおうってやつ、あれを試そうと思ってな」
そんな話をしていると、お茶を運んできた幸がビックリしていた。丁度話が聞こえたんだろう。
幸 「え、私がリーダーをするんですか? 素人なので上手くできないですよ!」
ジャド「まあ初めはそんなもんだよ。いきなり完璧にしろって言わないから安心してくれていい。それに今回こっちは全員ベテランの冒険者なんだから、間違った指示を出した場合はこっちで修正するか、代案を言うからそこまで緊張することもないぞ」
ロプ 「そうだな。今回は幸の冒険者としての経験値稼ぎといった感じか」
ジャド「そうそう、冒険者としての必要判断力を養う冒険だ。ついでに俺達は体が鈍らないように運動させてもらうって感じだな。サチさんは武器を持って行かないでもいいくらいだぞ」
ロプ 「まあ何があるかわからないのが冒険だから、さすがに武器無しは危険過ぎるな」
ジャド「それもそうだな。まあそこまでは言い過ぎだけれど、今回は正しい判断ができるかどうかの特訓だと思えばいい」
幸 「はあ、わかりました。できるかどうかはわかりませんが、がんばります」
ロプ 「じゃあ、とりあえず鎧の採寸をするか?」
ジャド「お、じゃあ頼む」
その後採寸とデザインなども決める為に、形状記憶魔道具を使って完成予想の鎧を作り、幸にも意見を聞きながらあーだこーだと鎧を考えていった。冒険は明日行くと話になったので、ジャドはそのまま家に帰って行き、こちらは鎧を作る準備でもしておくことにした。
本当にこの魔道具のおかげで、その場で望みの形が作れるようになったので、かなり楽になったものだな。
というか、液体金属が使えるようになったから、こいつももっと使いやすくできるのではないか? というか、そのまま直接形が作れたりしないのかな?
ちょっと気になったので、試してみることにしよう。
研究を始めて直ぐに、液体金属をそのまま使って形を作ることができるようになった。まあ核になる魔道具とかどういう形にしたいか指示する魔道具が必要なので、今まで使っていた金属の粉を液体で凍らせるってって方法が、液体金属の形を固定させるって方法に変わっただけなんだよね。
おかげで振り回しても大丈夫にはなった。ただ、武具として使うには強度が圧倒的に足りないことも判明した。今までの装備に比べて、あきらかに強度が足りていない。結局のところは、普通に作って行くしかないのかもしれないな。
まあ、元々は金属の液体だった物を固めただけなので、振り回すのは大丈夫だろうけれど、他の硬い物にぶつければ変形してもおかしくはないだろう。
ふと、この状態で材質を変えてみたらどうなるのかが気になった。まあ、駄目元だしと考え試してみたところ、ちょっと黄色っぽい感じの金属に変わる。
おー、よくはわからないけれど変化はおきたな。強度などを確かめたところ、今まで使っていた金属よりも硬くて軽いように思える。なかなかいいんじゃないのかな? どうせ試験的なものなので、とりあえずこれで一式分用意して使ってみてもらおう。問題があれば、普通に作っていけばいいと気楽に考える。
ただ、さしあたっては形を形成する為の媒体が混ざっている為に、そこで強度が弱くなっているみたいだった。なので、魔道具を少しいじって、媒体を使わないでも形成できるように接触地点に造形物を作るよう、魔道具を改造する。魔道具を樽に入れた液体金属に触れさせて造形物を作り上げた後、液体金属から引き上げてそれでよければ切り離しで、駄目なら液体金属に戻す感じだな。
おかげで、かなり時間がかかる作業になると思われた鎧の製作は、今日だけで完成してしまった。いろいろな属性耐性やら防御の魔法やらを組み込んだ鎧一式を完成させて、僕は錬金合成の方の研究に戻ることにする。まあ、今日はもう時間はないから、そこまで進まないけれどね。
翌日、僕は幸と一緒に冒険者ギルドへとやって来た。
ロプ 「おはよう~」
幸 「おはようございます」
ミア 「おはようございます。久しぶりですね」
レイ 「おはようです」
ニナ 「おっは~」
今回は仲間の内三人が先に来てお茶をしているようだった。早速合流するとお茶を出してもらい、休みの間に何をしていたのかって話で盛り上がっていた。女性ばかりで盛り上がっていたので、僕は会話には参加しないで魔道具のアイデアが何かないか、周囲を見ながら考えることにした。
そうしていると、残りのメンバーがやって来たので、早速挨拶をして依頼を受ける。
マギーで現地へと移動しながら、今回の依頼についての打ち合わせをする。ここからが幸のリーダーとしての仕事の始まりだな。
ロプ 「それで、今回の依頼は、どこまで説明していいんだ? モンスターの生態とかは説明するのか?」
ジャド「そうだな、いきなりノーヒントで指揮しろって言われても、混乱してまともにできないだろうからな。未知の敵っていうのはもう少し段階を踏んでからにするか。じゃあまずは敵の生態から説明しよう」
ニナ 「いきなり最初っからウォームってきつくない?」
ミア 「そうですね。知っている私達でもちょっと考えちゃいますね」
ジャド「まあそこは相談しながらってのでもいいと思うぞ。何も全部が全部、リーダーが知っていなければいけないわけじゃないからな。適材適所を理解するっていうのも必要な事だ」
レイ 「なるほど。確かにその見極めは大事だと思います」
ロプ 「今回は前もって敵の情報を教えておくってことだな? 本来なら自分で調べるなり、聞いたりって感じだと思うが、まあそこは今回こっちで準備したって感じか」
ジャド「バランスが難しいな」
ミリ 「教える側っていうのも、難しいものだな」
ジャド「だな。まあとりあえずウォームって敵についての予備知識を前もって教えておくぞ」
幸 「はい。お願いします」
初めてのリーダーで、幸が緊張している事が声だけでもわかった。マギーを運転しているので、そうそう後ろを見ていられないけれどチラッと見てみた感じ、がんばるぞって感じで拳を握り締めて気合を入れていた。
僕は後衛なので、必要ならば現場ではしっかりサポートしてやろうと考えながら、ジャド達の会話に耳を傾ける。
ジャド「まずウォームの厄介なところは、普段ウォームは地中にいて、こちらの攻撃が届かないというところだ。つまりおびき出して戦わなければいけない。それとダメージが蓄積すると、やつらは地中に逃げ込むからそれを阻止、又は逃げられる前に一気にダメージを与えなければいけない」
幸 「厄介ですね」
ニナ 「だいじょーぶだよ。前にも似たようなやつ倒してんだから、そんなに難しい事じゃないよ」
ミア 「確か音で誘き寄せたんでしたか?」
ジャド「音というか、振動だな。やつらは地中では振動を頼りにして、獲物を狙っているようだ。なんせ土の中じゃあ前は見えないし匂いなんてわからないだろうしな」
ミリ 「確か、体全体で振動を感知しているって話だったか。だからこちらが動くと相手に位置がばれる」
ジャド「だな。危ない時などは動かないって覚えておくといいかもしれん」
幸 「わかりました」
ロプ 「今回は数体、いるんだったか?」
ジャド「ああ、確認できたのは三体だったかな。潜っているらしいから実際の数は不明らしいがな」
ミア 「三体以上は確実ってことですね」
ニナ 「ウォームって、あまり群れないの?」
ジャド「そうだな、普段は大抵一体のことが多いかな。状況によっては数が集まるそうだ。今回はその珍しい状況ってことだろう。街道に現れたって話だが、そこを通る旅人や商人目当てってことは、餌場にされたんだろうな。野生動物なんかは危険を察知して逃げられやすいが、一般の人間は鈍いからな。地中から来られたらまず逃げられんだろうよ。だから複数集まったって感じじゃないか?」
ミア 「そうでしょうね」
ジャド「さて、それじゃあいよいよ本番ってことで、作戦はどうする?」
幸 「え? もうですか?」
ニナ 「サチさん、ガンバ!」
無責任な応援をしているようだけれど、ちゃんとフォローしようって気持ちは伝わって来た。僕も心中で応援しておこう。まあ何かしら不足部分があれば、知恵でも何でも貸すけれどね。みんなもそれは同じなのか、さっきまでの和やかな雰囲気は引き締まった空気へと変わったようだ。
幸 「えっと、じゃあ。まずウォームが反応するという振動というのは、どのくらいなんですか?」
ミリ 「確か、五十メートル先の人が歩く振動とかにも反応するとかだったか」
ジャド「こっちの情報も、それくらいって話しだな」
幸 「それじゃあ、二箇所で同時に大小の振動があった場合はどうなりますか?」
ミリ 「それはウォーム次第だろう。近場に行くやつと、振動の大きい方を狙うやつ。好みというか趣味というか、個体差があると思う」
ニナ 「試してみるしかないね」
ロプ 「そうだろうな~」
はっきりいって、そこまで詳しく検証をした人はいないか、資料に残した人はいないだろう。こればかりは実際に試してみないとわからないな。まあ、どんなモンスターでもそうなんだが、ゴブリンのようにどこにでもいて、数が多いとかじゃなければ早々データ取りはできないだろう。捕まえて試すとかもできないだろうしね。
幸 「じゃあ、大きい振動によって、小さい振動がかき消されたりってしますか?」
ジャド「それは紛れてわからなくなるだろうな。もしくはわかっていても大きい方に引き寄せられるかだな」
レイ 「ですね。ただ、その大きい振動が止まれば気付かれると思いますよ」
幸 「えっと、魔法で持続して地震を起こすものとかってありますか?」
ロプ 「ああ、それなら普通にあるぞ。問題ない」
幸 「では二・三箇所で大きさの違う地震を起こしてもらって、敵を分散。数が少ないところのウォームを倒して同じように他のウォームを退治するっていうのでどうでしょうか?」
初めての作戦立案で緊張しているのか、固唾を飲んでみんなの反応を待っている気配がした。聞いた限りだと、作戦自体特に問題はないと思う。
ジャド「いいと思うぞ。実際に試していないから結果がどうなるか、まだわからないが文句のない作戦だと思う」
ニナ 「うんうん。ばっちりだね」
ミリ 「戦っている間、他の地震が大きければ気付かれずに倒せるだろうし、そういう意味でもいい作戦だと思う」
ミア 「後は実際に戦ってみるだけですね」
ジャド「担当などはどうする?」
幸 「あ、そうですね。魔法はミーリスさんも地震の魔法は使えるのですか?」
ミリ 「それなら問題なく使える」
幸 「では、ウォームが三体なら地震を三箇所に起してもらって、それぞれそこに釘付けにしてもらって、それ以上になったら、四箇所くらいに起してもらってもいいですか?」
ロプ 「その時は僕とミーリスで二箇所ずつか、こっちが二箇所受け持つから、ミーリスは少なければ一箇所ウォームが一杯いたら二箇所頼む」
ミリ 「了解した」
幸 「それじゃあ、一つの地震に一体だけ釘付けなら全員で一体を倒す感じで行きましょう。複数来た時は、ジャドさんとレイさんがそれぞれ抑えてもらって、レイさんの受け持っている方を先に倒して、後はみんなでって感じでどうでしょうか?」
ロプ 「一つの所に三体いたら、地震をやめて別の所に誘き寄せるのか?」
幸 「あ、はい。それでお願いします」
ジャド「いいんじゃないか。初めての作戦にしては特に問題になりそうなところはなさそうだ」
ニナ 「サチさん凄いよ。ばっちりじゃん!」
幸 「いえ、今はじっくり考える時間もありましたし、いろいろ教えてもらえましたから」
レイ 「そうですね、こういうのは計画が狂った時こそ、判断力を試されるものでしょうから。今後でしょうね」
ロプ 「数こなして行くしかないな。直ぐできるって考えずに、気長にやって行こう」
ミア 「安全な時と、危険な場所での対応は、随分と違いますからね」
ジャド「だな。そろそろか」
ロプ 「じゃあマギーを止めるぞー」
そう言って停止すると、まずはジャドに鎧を着てもらうことにした。一応完成したから、使い心地を見てもらいたいしね。
ジャド「もう完成していたのか? 異様に出来るのが早いし、こいつは何の金属を使っているんだ? 金にしては色が薄い感じだし、随分と軽いな」
ロプ 「なんのって言われると、よくわからないが強度は前より硬いと思うぞ。試しに使ってみて使い心地とかいろいろ調べて欲しい」
ジャド「そうだな、試してみるか」
しばらくは鎧を着るのと、体を動かして動きを確かめる時間が必要だったので、ここでお茶にすることになった。じっくりと動きを確かめた後、早速ウォームがいる辺りまで慎重に移動する。
まあ、このメンバーの中だと体重を感じさせないような動きが出来た人は、ニイナとミーリスくらいかな? 残りのメンバーはなるべく振動を抑えてじりじりと移動して行く。
そのまましばらく進むと、幸がみんなを見回してウォームの情報を伝えて来た。
幸 「ウォームは五体いるようです。地震を起こす位置を伝えるので、よろしくです」
それに対してハンドサインで了解と伝える。
幸は落ちている石を拾って右の方の二箇所に投擲して、そして左の方の二箇所にも飛ばしたのを確認する。その落下地点を目標として地震を発動させようと思うがまずは魔法が重ならないように合図しておこう。ハンドサインで奥の二つは任せろと伝えて魔法を唱えた。
ロプ 「大地の怒りをここに示せ、アースシェイク」
ミリ 「大地の怒りをここに示せ、アースシェイク」
本来ならば数秒続いて消える魔法だけれど、今回はそのまま継続させる為、僕とミーリスはアースシェイクの継続で動けない。しかしそのかいがあってウォームが震源地から五体飛び出して、こちらの予測通りにその場で獲物を探していた。
一箇所だけ二体が飛び出している以外は、一体ずつに別れてくれたので、ここまでは計画通り上手く行っている。早速幸から手近のウォームへ攻撃を仕掛ける合図が出された。
魔法による支援と今回は幸の銃による攻撃が禁止されていた為、攻撃力がかなり下がっているものの、ジャド達の攻撃は確実にウォームにダメージを蓄積させていた。そろそろ倒せるかなって思った頃、ウォームが地中へと逃げ出す。
幸 「全力攻撃!」
すかさず幸による指示が出されるけれど、ほぼ同時にジャド達は防御を捨てて攻撃を叩き込んでいた。これは幸の指示っていうよりは冒険者の勘で動いたな? 判断力としては褒められる反応だけれど、幸の訓練として見ると微妙だな~
まあそれによって一体目が倒れたので、まあとりあえずは良しとして、次の事を考えないと駄目か。幸にはタイミングを見て逃がさないようなアイデアを、みんなにはこれは幸の訓練であるという事を考えて行動して欲しいものだ。
幸 「ジャドさん、レイさん。合図したら剣をウォームに突き立てて、動けば自分で体を傷付けるようにしてください」
ジャド「了解!」
レイ 「了解!」
簡単に次のウォームとの戦い方が提案された。普通ならそんな事をすれば剣が折れそうなものだけれど、魔法の武器なら何とか破壊されずに済むだろうな。まあ上手く行く事を願っておこう。
下手をすると二人分の攻撃力が減って逃げられる可能性もあるのが注意点だろうね。
そして二体目のウォームにダメージが蓄積してそろそろ逃げだすのではって考えていると・・・・・・
幸 「ジャドさん、レイさんお願いします!」
二人への合図が先に出された。それにより地面から飛び出した体の根元部分へと二本の日本刀が深々と突き立てられる。
ギャアアア
ウォームが叫んで苦痛を訴える中、ニイナとミリアナの攻撃は続き、ジャドとレイもサブウエポンとして持っていた武器で攻撃をしていく事で止めを刺すことに成功した。二体目はあらかじめ対策をしたおかげなのか、逃げる前に討伐する事に成功したな。
それとともに、ミーリスが維持していた二箇所のアースシェイクに飛び付いた敵を排除できたので、ミーリスも攻撃に参加できるようになる。これで先程よりもさらに火力を上げて攻撃していくことができるようになった。そこからは本当に早かった。
まずは一体だけのウォームをさくっと倒した後、残りの二体の内片方を、事前に打ち合わせていた通りにジャドが押さえ、残りの片方を全力で討伐。僕はそこからアースシェイクを維持する必要性がなくなっていたので攻撃に参加させてもらったので、ほんとにさっくりと倒せた。
そして残りは幸以外でがんがん攻撃することができたので、逃がす隙もなく止めを刺すことができた。
幸 「みなさん、お疲れ様でした~」
ジャド「おう! サチさんも指揮お疲れ~」
ニナ 「サチさん、初めてにしては完璧だったよ!」
ミア 「お疲れ様でした、サチさん。文句のない立派なリーダーぶりでしたよ」
ロプ 「お疲れ様。ばっちりだったな」
相変わらず、討伐部位を集める作業はきついようだったけれど、戦闘中のとっさの指揮もばっちり出来ていたように思う。みんなで上手く出来てよかったなって言い合いながら、幸の初リーダーをした依頼は終わった。帰り道も特に問題は起きなかったので、冒険者ギルドで報酬を受け取ると、久しぶりにみんなで集まってお疲れ様会をする。
ロプ 「そういやあ、ジャド。鎧の方どうだった?」
ジャド「ああそうだったな。軽くてなかなか良かったぞ。しばらくはこっちを使わせてもらおうかと思う」
ニナ 「いいな~。私は金属鎧だと音が邪魔になるから革鎧じゃないと駄目なのに~」
ロプ 「いや、稼働部分に細工をしたらいけるんじゃないか?」
ニナ 「え? じゃあ私も金ぴかな鎧を着られるの?」
ジャド「そりゃ無理だろう。重量の問題もあるしな。一部に金属を使う鎧って感じじゃないか?」
ロプ 「だな。全部を金属にするとさすがに重量がかさむから、一部に金属を使った鎧なら作れると思う」
ニナ 「うーん。それでもいいや。作ってくれる?」
そう言うと上目使いでおねだりして来た。仲間相手に何やってんだか・・・・・・まあ、元々作る予定ではいたけれど、何か力が抜ける想いだ。ジト目で見かえすと、てへって感じでおどけた顔をして来る。
レイ 「私も鎧を作ってもらいたいな」
ミリ 「私もあると助かる」
ミア 「私はローブですから、特に変化無しですね」
ロプ 「ちゃんとみんなの分も作ろうと思っているよ。もちろんミリアナの分も考えている。ミリアナは何か革鎧は駄目とか、金属は駄目とかそういうのはあるか?」
ミア 「え・・・・・・特に制限などはありませんよ。そうですね、しいて言えばあまり物々しい格好は止めた方がいいかもしれませんね」
ロプ 「そうか、ならぱっと見は普通のローブみたいに見えるようなものならよさそうだな」
ミア 「あ、それなら良いと思います」
ニナ 「よし、新しい装備が手に入るんだね! ロップソンさん、頼んだよ!」
ロプ 「あいよ。まあ直ぐには出来ないかもしれないがな。そこは我慢してくれよ」
ニナ 「はーい」
ミア 「ありがとうございます。よろしくお願いしますね」
レイ 「よろしくです」
ミリ 「助かります」
ジャド「ってことは一度ロップソンの家に集合だな?」
ロプ 「そうだな、採寸させてもらってもいいか?」
ニナ 「あー、微妙に男性に調べられるのは恥ずかしいな~。まあでも、仕方ないのかな?」
ミア 「確かにそうですね。でも我慢します!」
そんな感じで、恥ずかしいからちょっとお酒を飲んで気を紛らわせるとか言って騒いだ後、家でみんなの採寸をさせてもらい、元から全身金属鎧のレイと部分金属鎧だったミーリスの鎧をその場で作って魔法を付けて渡すことにした。
ニイナとミリアナの鎧は、金属以外の素材も使う為、採寸して液体金属でサイズを記録して後日渡す事になった。結局お酒を飲んでいても恥ずかしそうだったな。こっちもさすがに恥ずかしいよ・・・・・・
翌日、早速ニイナの鎧を作ることにする。革鎧をベースに金属を所々に配置して強度を上げつつ、音などが出ないように注意していく。というか、普通に消音機能を付ければそこまで気にしないでもいいかもしれないな。そう考えれば、重量の方もある程度まで魔法で軽減すれば、金属で作ってもいいかもしれない。
ならば革鎧ベースを止めて、金属鎧をベースに所々革を使い扱いやすさを高めた鎧にしていこう。ニイナは盗賊なので、動きを阻害しないような鎧がいいだろうからね。ミリアナのローブは見た目そのままで裏地を革鎧や金属を使うことで、防御力アップを目指してみる。
そんな感じで丸々一日かけて鎧を作って行った。ジャド達の鎧も、もう一度魔法を調整して、みんなの鎧に消音と、重量軽減する魔法を追加することにしよう。




