祭りは終わり日常へ
登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記)
出店で怪しいところがないか見て回っていると、オセロをやっていたお店で景品が不明な部分があるのを発見した。このパターンはひょっとするかなと思い勝負しようと考えたけれど、勝負の方法がオセロから変わっているようだった。昨日オセロで負けたからかな? そして今日の勝負方法は将棋らしく、目的のコインと思える景品を手に入れるには、飛車角を手に入れて他の駒を取り過ぎないようにしなければいけないみたい。
これは難易度がかなり高くなったなって思っていると、幸が勝負を挑んでいた。
幸 「オジサンイイデスカ?」
親父 「おっと、昨日のお嬢さんか、受けて立つ。今日は負けないからな」
おっちゃんは腕まくりしてリベンジに燃えている様子だった。でも幸は将棋結構強かったんだよな~ まあプロとかではないので、素人の中でわっていうか仲間内でわって感じだったけれど・・・・・・
僕は初めから幸が勝つ事を疑っていないけれど、果たしておっちゃんがどれくらい粘れるかってところに注目していた。
親父 「じゃあまずは駒の説明からするぞ」
幸 「ダイジョウブデス。ルールハシッテイマスカラ」
駒の説明をいらないといった幸に、おっちゃんはまさかって感じの顔を向ける。ある意味、ゲームのド素人にルールを把握しているおっちゃんが余裕で勝つつもりで出していた出店なので、その優位性が崩れる事はおっちゃんの敗北にも繋がる。まあこんな顔をするのもわかるけれど、大人気なさ過ぎだろうって言いたい。
勝てないのが嫌だって、どこの駄々っ子だよって言いたいよね~ そのくせ他人の負ける姿は見てみたいとか、性質が悪いよ・・・・・・
ロプ 「幸、がんばれよ」
幸 「任せて!」
思わず応援してしまったけれど、幸は気負う事無く張り切って返事をした。
往生際が悪いというのか普通は挑戦者から始めるものの、おっちゃんはまた自分から駒を動かし出すと段々と考える時間が延びていくようになった。それに対して幸はほんのちょっと考えるだけで、ドンドン駒を動かして行く。
おっちゃんの駒は、もう既にこの段階で飛車角が無くなっていたりする。幸が美味しそうな場所に囮を動かすと、面白いように飛びついていて、あっさり駒を取られていたからね・・・・・・いや、いくらなんでもそんなわざとらしいところに動かした駒に、飛び付くなよって言いたかったよ・・・・・・
まあその結果、何のドラマ性も無くあっさりとゲームは終わり、無事にコインを貰えた。散々せこい手を遣って負けたおっちゃんは、どう見ても惨めな感じだったよ。おっちゃんはもう少し布石で打たれた駒の配置を、チェックしておいた方がいいと思うな。
ロプ 「そろそろ一度合流しようか」
幸 「わかった」
待ち合わせの一時間には少し早そうだったけれど、もし他に出店があったとしてもゲームに参加している程の時間は無さそうだったので、ひとまず合流してコインの枚数を確認する事にした。
ロプ 「よう、そっちの調子はどうだったんだ?」
ニナ 「へっへ~ん、私は三枚見付けちゃったよ!」
合流地点に指定した家の庭で、ニイナとミリアナがお茶しているのを見付けたので声をかけてみると、余程自信があったのかそんな答えを返して来た。何か申し訳なくて、思わずこっちは四枚って言いそびれたよ・・・・・・
幸 「ワタシタチハヨンマイデス」
そんな中、幸はさくっと報告してしまう。結構ざっくりと切り込んで行くんだな~
それを聞いたニイナの満面の笑みが一瞬で凍り付いた。
ミア 「私は一枚だけでした。見付けるの難しいですね。偽物のコインなら一枚見付けたのですが、それを合わせて二枚って感じです」
ロプ 「ああ、でも本物が一枚見付かっているなら、十分だぞ」
ニナ 「偽物もありなら七枚だもん!」
ロプ 「七枚か。それは普通に凄いな。やっぱりどこかに隠されていたのか?」
ニナ 「うん。簡単なやつだと人目に付かない壁の上とか、屋根の上とか、窓枠のところとかにあったよ。まあそれは殆ど偽物だったけれどね~」
ロプ 「そんなところは探さなかったな・・・・・・さすがニイナって感じだな」
ニナ 「でしょでしょ~」
ロプ 「こっちは丁度二人で半分ってところで、二枚ずつって感じだな」
幸 「イエ、ロップソンガサンマイデ、ワタシハイチマイデスヨ」
ミア 「ロップソンさん、サチさんお疲れ様です。とりあえず他の仲間が来るのを待ちましょう」
ロプ 「ああ、じゃあのんびりするか~」
幸 「オジャマシマス」
雑談しながら他のメンバーが来るのを待つ事にした。せっかく家に来ていたので、作りかけのニイナの日本刀を見せたりもして、少し待っていると続々とみんなが集まって来る。
僕と幸で四枚、ニイナとミリアナで四枚、残り二枚あれば冒険者ギルドに報告できるから、おそらく余裕なんじゃないかな? やって来たレイとミーリスが一枚ずつ持っていたので、幸とミリアナにここに残ってもらい、残りで冒険者ギルドへと向かう事にした。
マギーが使えたら移動が早いけれど、これだけ人がいたらさすがに動けないからな~ コインはニイナが十枚持つ事にして、みんなで囲むようにして冒険者ギルドへと向かう。普段はお仲間のはずの冒険者仲間ですら今回はコインを掏ろうとしたり、力で奪いに来るかもしれないのでその対策としてニイナに預かってもらう事にした。
一応盗賊には掏りの技術というものを教えているので、逆に掏りに対する防衛手段なんかもある。僕らの中でコインを持ち歩くならやっぱりニイナが適任だろう。素早いしな。
後少しで冒険者ギルドに付くといったところで、前方に冒険者が立ち塞がるように出て来たのを見て、僕は襲撃だと判断した。ギルドのまん前で襲って来るのかよ・・・・・・
後ろ手に、ニイナとミーリスにハンドサインで隙を突いて先行しろと合図を送る。通じているかどうかはわからないものの、レイが横に出て来てくれたので、おそらくは大丈夫だと判断して、進路を確保しようとする。
ロプ 「どいてくれ」
冒険者「コインを置いて行ってくれるならどいてやるよ」
男はそう言うと僕の肩を掴む形でこちらの動きを封じようとして来た。既に肩を捕まれている状態では今更魔法詠唱など間に合わないと判断して、こっそりと取り出しておいた針をそいつの手にちくっと突き刺す。
冒険者「てめえ、何しやがる」
ロプ 「こっちの台詞だ!」
レイ 「邪魔だ」
おそらくこいつの仲間も隠れていたのか、そっちをレイが対処してくれているようだった。目の前でこっちに掴みかかって来た冒険者の男は、先程の針に塗られていた麻痺の効果が徐々に出て来たのか、肩を掴んでいた手の力が抜けて来たのでレイの加勢をすることにした。
レイが動きを封じている隙にこっちにも針を刺し対処完了していると、ニイナとミーリスが冒険者ギルドの中へと滑り込んで行った。
こっちは他にも出て来た仲間の相手をする為、もう少し時間がかかるかな。後はニイナ達に任せよう。
合計で五人の男が麻痺して動けなくなったところで、ニイナとミーリスが戻って来た。
ニナ 「無事に報告できたよ~。そっちも終わった?」
ミリ 「さすがに中では襲われなかった」
ロプ 「こっちも終わったから、合流しようか」
レイ 「みんなお疲れ様」
ニナ 「お疲れ~」
行きの緊張もなくなって、僕らはのんびりと家に向かう事になった。
ニナ 「ところであの針って魔道具?」
帰り道そうニイナが聞いて来たので、返事を返す。
ロプ 「いや、あれはせっかく錬金術を習っていたからそれの技術を使った痺れ薬だよ。正確には調合だけれどね」
レイ 「確か、新しく勉強した技術でしたか」
ロプ 「ああ、まあ今は魔法の支援と防御の方の勉強だけれどな。その前に教えてもらっていた技術だ」
ミリ 「そちらも生産なんだな。やっぱり戦い方が変則的かもしれないな」
ロプ 「まあ確かに一般的ではないかもしれないが、先生に聞いたところによれば、錬金術師が前衛で戦っていた事もあるんだって言っていたぞ。使い方次第なんだってさ」
ニナ 「使い方か~。さっきの針がそうだよね?」
レイ 「でしょうね。あれは相手を殺さずに無力化できて便利だと思いましたよ」
ロプ 「まあ、いざって時の手札の一つだな~」
ミリ 「そういうのは一杯持っていた方がいいな」
ロプ 「だな」
ニナ 「ねえ、その痺れ薬、頂戴」
うーん。取り扱いとか、大丈夫かな? ある意味こういうのは盗賊に向いているのか? お試しで少し分けてみるっていうのもいいかもしれないかな?
ロプ 「ちょっと待ってろ」
バックパックから小瓶を取り出して、そこに痺れ薬を分けてニイナに渡す事にした。今後どう活用して行くかは、ニイナ次第だろうな。でも注意はしておくか~
ロプ 「わかっていると思うが、落としたり取られたりはするなよ?」
レイ 「確かに、盗られたら危険ですね」
ミリ 「油断はしないように」
ニナ 「はーい」
家に戻るとジャドも戻って来ていて、コインを三枚集めたと言っていた。
ジャド「がんばったんだがな~。一足違いだったか・・・・・・まあいい、みんなよくやってくれた!」
そう言って、結果発表がおこなわれる夕方までのんびりと過ごす事になった。この後町に出るのも面倒という話になり、露店などから料理などを買って来て家の庭で騒ぐ事になったので、僕はちょっと失礼してニイナの日本刀を仕上げる作業をさせてもらう。まあ、みんなと話しながら作業できるように、庭に道具を持って来てやっていたけれどね。
幸は料理を作ってくれたので、買って来たものと幸が作った料理とをテーブルに並べて、ジャドが持って来た酒を飲んでしばらくはそれぞれのコイン集めの話などを話題にして盛り上がったりしていた。
僕からの話はコインと、最終日に行われることになった、隣国との料理対決の話なんかもしていく。まあ立会人みたいになってしまったので、別行動になるって言っておかないといけないしね。
ニナ 「私も試食したいな~」
ミア 「そうですね。美味しい料理なら味わってみたいかも」
ロプ 「試食は商業ギルドの食品課の連中がするからな~ さすがに参加は難しいかも・・・・・・まあ場合によっては一般からも評価するようになるかもしれないけれどな。まあ絶対食べられるって保証はないかな」
ニナ 「可能性はゼロじゃないんだね?」
ロプ 「まあ、どうなるかは、実際にやってみないことにはなんとも言えないかな。イベントとはいっても急遽決まったやつだからな」
ニナ 「じゃあ見に行く!」
ロプ 「見てるだけになるかもしれんぞ。あまり期待はし過ぎるな」
そんなに目をキラキラさせられても、こればかりはどうにもならんだろう・・・・・・まあそうは思うものの、一般の試食も打診してみるかなって考えてみた。好みとかもあるしね。
夕方までわいわいと過ごした後、僕達は冒険者ギルドへとやって来た。主だった者や、入賞者が到着すると簡単な結果発表が行われて、僕達は三位に入賞する事ができたようだ。僕らより早かったところが上に二つもあったのか・・・・・・結構早く集まったって思っていただけに、上には上がいるんだなってちょっと舐めていたと自分の評価を見直す。
やはり本格的な冒険を生業にしているところは、相当実力が高いのだろうね。
ちなみに結果発表とかあるものの、別に賞金とか景品の類は何も出たりしない。これは冒険者としての評価に繋がったりするので、そっちの顔を覚えてもらえる方が景品みたいな扱いになっていた。実際これで名指しの指名が来たことのある冒険者チームなども存在するのだそうだ。
なので結構侮れない真剣勝負のイベントでもある。結果もわかったことだし、その場で解散になり僕は商業ギルドに寄って一般審査員とかどうかと打診をしてから家の方へと帰ることにした。
まあ帰ってから少し日本刀を削る作業をしてから寝るんだけれどね~
翌日は昼の勝負事の準備があるので、朝から商業ギルドまで手伝いに来ていた。まずはギルド前に会場となるスペースを造る為に、人の流れを区切って会場をセッティングしていく。その後料理を作る為の簡易キッチンを配置して、道具なども用意していった。
今回食材は自分達で用意するよう指示していたので、こちらで特に用意とかはしていない。場所と料理を作る環境と道具を用意しさえすれば、野次馬の観客の整理が主な仕事になる。今回は一般の人にも試食してもらい、審査に参加してもらう事になっていて、それを聞いた隣国の連中は仲間を集めに散っていった。
おそらく自分達の作った料理に投票するように言いくるめる為だろう。やる前から小細工するとか、もう既に自信がなくて不正する気満々だって言っているようなものだね。
まあそれがわかっていても、こちらとしては明確な不正の証拠が無い限りどうすることも出来ないんだけれど、その当たりはどうする気なんだろう・・・・・・
ロプ 「なあラグマイズさん、向こうは組織票を入れて自分達に有利な状況を作ろうとしているみたいだが、何か手は打ってあるのか?」
客 「別に、普通に料理を食べてもらうだけですよ。わざわざ不正しなければいけない程、落ちぶれていないのでね」
ロプ 「はあ、自信があるんですね」
客 「自信とはまた違いますが、まあこちらも専門なので、やることをやるだけです」
ロプ 「ああ、料理人でしたか。それならばお任せしてもよさそうですね」
客 「まあそのようなものですね」
専門とか言っていたので、料理人かと思ったけれど、違うのか? そういえば、料理人ならそう言えばいいのか・・・・・・じゃあ専門ってどんな専門だ? 少なくとも、料理とかけ離れてはいないようだけれど・・・・・・料理評論家とかだったりするのだろうか? それなら料理を作ったり出来る人も中にはいるので、問題無さそうだけれど・・・・・・
まあお手並み拝見って思っておくしかないな。
準備が整い、集まって来た一般の人も会場周りに集まって来たので、早速料理対決のルールが説明された。
まず素材は自分達で集めて来る事、これは前もって説明されていたけれど、追加で集めて来ても問題ないと発表している。そして料理を作るのは観客が見ている前でのみで、既に料理になっているものを持ち込んだ場合は不正として即失格とする。料理を作る時間は一時間の間で、最低でもメインの料理を一品、デザートを一品作ったら後はどれくらい用意しても問題はないそうだ。
採点方法は、商業ギルドの食品課が味の判定を行うが、今回は見学に来ている一般人にも審査に加わってもらい、味と見た目を評価してもらう事になった。
そして早速料理は開始される。見ている間に、ラグマイズさんが大きなフライパンで白いものを炒め始める。まだ開始して一分経つかどうかという時間で、目の前のテーブルにはドンドンとその炒め物が並んでいく。この人道具まで持ち込んでいるみたいだな。
お手伝いとして来ている男が、出来上がった皿をテーブルに並べ終わると、何かを焼き始めた。
客 「温かいうちにどうぞ~」
圧倒されていた野次馬に向けてそう声をかけて来たラグマイズさんに反応して、出来上がった料理を手に取って行く一般客に混じり、僕も審査員に皿を運ぶことにする。
ニナ 「うま!!」
後ろから聞き慣れた声が聞こえて来たので振り向くと、ちゃっかり一般客に混ざって試食しているニイナを見付けた。他の仲間達も一緒に食べていて、満足そうに笑っている中ミーリスはなぜか懐かしそうな顔をしていた。故郷を思い出すような表情といった方がいいのかな?
普段どちらかといえば無表情に近かったりして、クールでちょっとボーイッシュだなって思っていたけれど、こうして見ると普通に女の子だなって思えるな。それにしても、この料理を懐かしいと思うってどういうことだ?
いろいろ考えていると、次の料理もできたのかそっちもドンドンテーブルへと運ばれて来た。おっと、僕も仕事しなくっちゃな。慌てて新しい料理を審査員の元へと運ぶ。
幸 「ロップソン、チャーハン食べる?」
ロプ 「これ、やっぱりチャーハンだったか。てことはあのラグマイズさんってレイシアさんの関係者か?」
幸 「どちらかといえば、バグ君の部下かな?」
ロプ 「へ~」
手が塞がっていたので、チャーハンを食べさせてもらったけれど、確かにこれは美味いな。日本でもこれは美味いって言えるだけの味だと思うと、これは審査する必要すらなく勝負ありだろうと思う。欲をいえば、日本で食べたお米の方が口に合う気がするけれど、そこは仕方ないだろう。
ロプ 「じゃあ、こっちは餃子であっているよな?」
幸 「だね。さっきデザート作っていたけれど、そっちは杏仁豆腐だったよ」
ロプ 「中華でそろえて来たってことか。あれは早くで量が一杯作れるから、もってこいかもしれないな」
幸 「みたいだね。じゃあお仕事がんばってね」
ロプ 「ああ、また後でな」
仕事に戻って、料理をドンドン運ぶ事にした。ひょっとしたらミーリスの故郷は日本か中国か? あ、それはないか・・・・・・それなら黒目黒髪になるはずだけれど、ミーリスは白銀の髪に青い瞳だからな~
相手の方は、今の現状を見て呆然とした感じだな。何を作っているのかはわからないけれど、まだまだ時間がかかるのだろ。組織票を入れに来た隣国の旅行者達も、食べたそうにしているけれど敵側の料理においそれと食べにいけないって感じだった。
そんな中、餃子を焼き終えたお手伝いの男が相手の方へと皿を持って向って行った。
手伝い「組織票なんてつまらない事しないなら、こっちの料理を食べに来てもいいぞ。とりあえずこれでも食べて自分の舌で判断してみろよ」
差し出されたのは肉だな。小さく切られたそれらは、チャーハンに使っていたチャーシューだろうか? さっき食べたけれど、こちらの肉と違ってそれだけで料理が美味いことがわかるやつだろう。
しばらく悩んでいた旅行者の一人が、その肉を口に入れると思わずって感じでラグマイズさんの料理がある方へと走り出した。
それはもう止める暇もない程だった。
そんなに急がなくてもって思ったけれどなるほど、のんびりしていると全部食べられて料理が無くなってしまうのがわかる。そりゃあ迷っている暇なんてないだろうな~
見ていた仲間達も半信半疑って感じで肉を摘んでいくと、みんなビックリしたような顔をして残り少なくなっていくチャーハンを見て、慌てて走り出した。こんな料理は早々食べられるものではないから、そりゃあ必死にもなるだろう。彼らからしたらどこぞの宮廷料理みたいなものだから、お店で出されていると考えたとしても、一般人が食べに行けるお店ではないと考えたとしてもおかしくはないだろう。
実際はリンデグルー自治国でもお店など出ていなくて、この機会を逃せば僕らも食べることはできない料理だと思うけれど、僕はおそらく幸に頼めば食べられる可能性が残っているけれどね。
そんな事を考えていると杏仁豆腐が完成したのか、何か白い箱の中にドンドン入れて行っている。あれ? まだ出さないのか? そう思っていると、野菜を凄い速さで切っていき、細切りにした肉と一緒に炒めて、それをテーブルへと並べ始めた。
ちなみに対戦している旅行者の方は、今だ何かをひたすら煮込んでいるけれど、完成した料理は無いようだね。それに一般客に配るにはそれでは足りないだろうって気がするな。
あ、そんなこと考えていないで、さっさと野菜炒めを運ばないといけなかった・・・・・・
その後さらに一口サイズの大きさの肉まんが出て来て、やっと杏仁豆腐が出されると、やっと旅行者の方の料理が完成したのか、盛り付けられた料理が前に出された。数が少ない為、審査委員のところへと早速運ばせてもらう。
デザートも出て来たので運んでみるものの、旅行者達の作った料理を食べる一般客も仲間であるはずの旅行者も、本当に一口味見にって感じで食べた後、次を食べようと思う者はいなかった。
さすがに審査している食品課のメンバーは、味わうように食べてはいたけれど、その顔にはできれば食べたく無かったってありありと書いてあるのがわかる。
最後に対戦していた旅行者本人達が料理を食べて絶句して、結果発表すらしないで料理対決は終わることになった。
後で聞いたところによると、いちゃもんを付けていた旅行者達は、逃げるように帰って行ったそうだ。
午後からは料理の話しばかりしながらあちこち見て回って、また明日から冒険がんばろうと言い合って解散する。それにしてもあのドラゴンの部下達は、何で料理対決なんかしていたんだろうか?
何気にこちらの世界の料理がまずくてきれたとかなのかな? 普段から美味しいものばかり食べていると、もうこっちの料理はまずくて味わえないんだろうな~
僕もあまり食べないようにした方がいいのかもしれないって思った・・・・・・できれは美味しいものは味わいたいけれどね。




