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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第五章  リンデグルー自治国記念祭
38/54

祭りには出店!

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記)

 後回るとしたら魔術師ギルドかな? 教会の方でも子供達が催しをしているだろうけれど、そっちは大人のような見所があるものとは違い、まあぶっちゃけ寄付金集めって感じだからな~

 まあ時間があれば教会に行ってもいいかもしれないな。

 魔術師ギルド前では、なにやらお堅い話をしているようだった。自主的な研究成果の発表と、魔法薬の販売などをしているみたいであまり興味をそそられるようなものは無さそうだな。魔法薬はちょっと興味あるものの、自分で調合して作ることはできると思う。

 まったく新しい薬とかならぜひ見てみたいところだけれど、そういう話は聞いた事がないからいつも売っているような薬の販売だと思う。

 ミーリスも特に見たいって感じじゃないから、別のところを見に行った方がいいかな?

 他に見るところというと、パフォーマンスをしている広場くらいだろうか・・・・・・日本で言うところの遊べる出店みたいなものもあったので、時間を潰すのにはいいかもしれないな。射的や金魚すくいといったものはないけれど、ジャグリングとか言っていた見世物みたいなものとか、吟遊詩人達が歌を披露していたりとかスリングを使った的当てなどいろいろな催しがその広場では展開している。

 この広場は基本フリーで好きなように芸を見せたり物を売ったりもできる為、兵士などが頻繁に巡回して不審者や、いかがわしい物品を売ったりしていないか取り締まっているけれど、フリーだからこそ普段はお金がかかってできない事をしようと人が集まって来る。

 ここはここでめぼしいものを探している人にとっては、結構穴場的なものが見付かるかもしれない場所だったりする。純粋に見て回るだけでもいろいろなものがあって楽しいしね。


 ロプ 「あれってひょっとしてクレープか?」


 みんなで見て回っていると、なんとなく見覚えがありそうなものを売っている店を発見した。一瞬日本のクレープ屋かとも思ったんだけれど、どうやら生地になる部分はクレープに近いだけで包んでいるものは、まったくの別物みたいだった。それでも興味を惹かれて一つ買ってみることにした。


 ロプ 「中は普通に野菜と肉か。でも結構ソースになっているのが美味いかもしれんな」

 幸  「ワタシモカッテミヨウカナ」


 結局僕に釣られてみんな一つずつ買って食べてみたのだけれど、みんなに好評だった。


 ジャド「これなら普段に店を出しても十分売れるんじゃないか?」

 ニナ 「美味い! これお祭りじゃなくても食べたくなるね。おやつに丁度いいよ」


 僕らがそうやってそれぞれに評価していると、周囲の人達も気になったのか、露店で早速注文したりしていた。そんな客達も結構気に入ったのか、次第に客の列ができ始める。これはもしかしたらスカウトされるかもしれないな。そんな事を考えていると、商業ギルドで見た事がある人が機会を窺っているのが見えた。

 お仲間さんが増えるかもしれないな。

 ある程度の時間潰しもできた事だし、僕らは冒険者ギルドに戻ってトーナメントの観戦をすることになった。とはいっても対人戦を見て参考になるのは接近戦職じゃないかと思う。まあ僕も見ていれば魔法使いの立ち回りみたいなもので、参考にできる部分はあるものの、実際に動いてみない事にはよくわからないかなって思う。まあ僕が未熟だからなのかもしれないけれどね。

 みんなは熱心に見ている中、幸はそこまで興味がある訳じゃないのが見て取れた。確かに知り合いが戦っているのでもなく、幸と同じ職業の人がいる訳でもなければ、特に見ていても楽しいって思えないかもしれないな~


 ロプ 「ジャド、ちょっとここから別行動でいいか?」

 ジャド「うん? いいけど、どうし・・・・・・いや、構わんぞ。じゃあ夜にでも家に寄るよ」

 ロプ 「すまんな。じゃあ楽しんでくれ」

 ジャド「そっちもな」

 ロプ 「幸、外を回ろうか」

 幸  「いいの?」

 ロプ 「ああ、構わないよ」


 どことなく嬉しそうに冒険者ギルドから出て、あてどなく祭りの中へと歩き出した幸を、慌てて追いかける。

 リンデグルー自治国では最先端の料理が並ぶ露店でも、さすがに日本から来ている幸には納得できるような露店は見付けられそうにないので、参加して遊べるタイプの露店を主に回る事にした。

 とは言っても魔力を使ったゲームや体力自慢の挑戦ができるものなども幸は遊べそうにない。何がいいかなって探していると日本ではポピュラーなオセロ対戦を見付けた。名前もそのままオセロとなっていたので、おそらく日本から伝わって来た遊びだと思われる。


 ロプ 「こっちにオセロがあるなんてな。せっかくだし遊ぶか?」

 幸  「そうだね。こっちでできるなんて思っていなかったからちょっとやってみようかな」


 そう言って、僕が屋台のおっちゃんにお金を渡して幸が対戦席に付いた。挑戦者が現れた為、周りに野次馬がやって来て早速対戦を観戦し出す。


 親父 「お穣ちゃん、ルールの説明はいるかい?」

 幸  「アイダニハサンダコマヲウラガエシテイク、ゲームヨネ? ソレダケナラモンダイナイワ」

 親父 「それで合っているよ。こちらは白で先に打たせてもらうよ」

 幸  「ワカッタ」


 確かオセロって先に打つ方が有利なゲームじゃなかったか? まあでも、幸なら大丈夫かな?

 見ていると幸はそれ程考えていないように、ポンポン打って行くのに対し、おっちゃんは結構慎重に駒を置いていっている。それでも見ていると幸の持っている黒の駒がドンドン増えていっているのがよくわかる。あ、角を取ったな。


 親父 「むむむ・・・・・・お穣ちゃん結構やるね~」


 そう言いつつもぱっと見で圧倒的に幸が有利な事が見て取れる。そう言っている間にも二つ目の角を幸に取られている。

 その後も何とか粘ろうとしているものの、幸がドンドン端っこを押さえていく為に、無駄な足掻きだなって感じでゲームは進み、最後には盤面の全てが黒一色に染まった。うーん、これはやり込み具合の差なのか、知力の差が出たのかどっちなのかな? 幸より周りの野次馬が嬉しそうに騒いで拍手していた。


 ロプ 「幸おめでとう」

 親父 「くっ、完敗だ・・・・・・持ってけ泥棒め!」


 そう言って親父が渡して来たものは、黒駒が何枚で商品を渡すと書かれた中の一番上、全て黒だった時にとある景品でクムラルトの苗木だった。日本で言えば桃の果実に近い実がなる木だな。とは言っても日本の甘い桃とは雲泥の差で、こっちのは酸っぱいけれど早めに収穫して天日干しにする事でそこそこの甘さになるという食べ物だ。

 まあおやつに食べるというよりは薬として使うのがこちらでは一般的だけれどね。そしてそこそこ貴重な果物でもあるので、価値としては中々いい商品だと思う。

 まあ必要ない人には、無用なものだろうけれど・・・・・・


 ロプ 「と言う木だ。虫が付きやすい木でもあるから、庭に植えるのは少し問題あるかもしれないな。植えるなら虫除けの魔法薬を買って来ないといけないかも」


 魔法薬といえば、今なら魔術師ギルドの薬が安く手に入るかもしれないが・・・・・・僕も錬金術を教えてもらったから自分で挑戦してみてもいいかもしれないなって考えていると・・・・・・


 幸  「ねえ、これレイシアさんにプレゼントしてもいいかな?」

 ロプ 「育てて収穫したやつじゃなくて?」

 幸  「うん。このままの苗木で・・・・・・あそこならしっかり育ってくれそうだなって思ってね」

 ロプ 「まあ、手に入れたのは幸だから構わないよ」

 幸  「じゃあちょっとレイシアさんの所に行きたいから、一度家に戻ってもいいかな?」

 ロプ 「ああ、わかった」


 家に着くと、行って来ると言って出かけてしまった。そういえばレイシアさんのところって、どうやって移動しているんだ? 連絡すると、迎えに来てくれているのかな?

 そういえば、以前に夜中なのにレイシアさんの所へ行った事もあったし、やっぱり迎えに来て欲しいって連絡を入れるんだろうな~

 幸がどれくらいで戻って来るのかわからなかったので、ニイナの日本刀を削っていると三十分程で戻って来たようだ。


 ロプ 「お帰り、少し待ってくれ」

 幸  「ただいま。お茶入れてるね」


 きりがいいところまでやってから、作業服を着替えて手を洗って幸のところへと向った。


 ロプ 「苗木を渡すって、考えてみたら相手も困惑するんじゃないのか? 育てる土地とかもいるだろう?」

 幸  「レイシアさんは最初戸惑ったけれど、バグ君が喜んでいたからレイシアさんも、ありがとうって言ってくれたよ」

 ロプ 「例のドラゴンか。ドラゴンが農業でもするのかな?」

 幸  「実際に育てるのはパペットって言う人形だよ。虫がつきやすいって説明したんだけれど、虫が出て来ない所だから心配ないって言ってた」

 ロプ 「へー、そんな場所があるのか」


 お茶を飲みながらそんな会話をする。でもって、祭りの続きを楽しむ為に、再び町へと繰り出す事にした。

 そろそろお腹もすいて来る時間帯だったので、適当な店で食事をする事にしたのだけれど・・・・・・


 旅行者「ここはどこに行っても飯がまずいな。さすが勇者を暗殺する卑劣な国だけはあるぜ」


 そんな感じで騒いでいる一団が店にいた。

 ここにも隣国の奴らがいるのか・・・・・・最近こんなやつらばかり増えている気がするな。

 騒ぎが起きている場所でのんきに食事なんかしていられないと思い、別の店に行こうとしていると客の一人が騒ぎを起している連中に向って語りかけた。


 客  「まったく迷惑な連中だよな。どうせお前らの国もろくな料理がないくせに、他所の国で料理にけちを付けるなんて、見苦しくてかなわん」

 旅行者「何だと!」

 客  「違うというのなら僕を唸らせるような料理を出してみろよ。どうせできないだろうがな」

 旅行者「そこまで言うのならお前こそ、唸らせる様な料理が出せるって言うんだな!」

 客  「お前らみたいな能無しと違ってこっちは、大抵の人間ならうまいと言わせられる料理を提供できるぞ。それでそっちはどうなんだ? まずい料理しか作れんくせに、文句だけの能無しなのか?」

 旅行者「くっ、いいだろう、そこまでいうのなら受けて立ってやる。今ここで勝負すればいいのか!」

 客  「残念ながら今直ぐではないな。お前みたいな能無しがこの祭りには大勢来ている。そいつら全員まとめて唸らせてやるから、馬鹿どもをまとめて引き連れて来るといい」

 旅行者「そう言って逃げる気じゃないだろうな!」

 客  「そうだな、どこで証明するか場所は決めておかないとだな。丁度そこに商業ギルドの人間がいるようだし、会場を作ってもらおう。会場の設営や準備など、お願いできるかな?」


 そう言って成り行きを見ていた僕に、その客が話しかけて来た。僕の事を知っているのか? とりあえず今の話を聞いてできそうかどうかを考えてみる。

 いろいろ問題を起していることから考えて、ここいらで何かしらの対策を考えてもいいだろうし、そういう意味では手配してもらえるとは思う。だけど勝算があるのならって感じだろうか?


 ロプ 「僕の一存では決められない。商業ギルドにかけあってみるから、時間をもらえるか?」

 客  「だそうだ。せっかくだ、ギルドまで確認しに行ってみるか?」

 旅行者「ああ、望むところだ」


 何か妙な事に巻き込まれた気がするな。幸にごめんって言って商業ギルドまで移動して、この提案を受け付けに説明する。


 ギルド「ちょっと待っていてください。上に確認を取ってみます」


 しばらくすると受付の人が戻って来て、詳しい説明を聞くとかでお客を奥に連れて行ったみたい。そこそこの時間待たされて受付の人とお客が戻って来た。


 ギルド「許可が下りました。日時は祭りの最終日の昼一時間前で場所はここのギルド前の広場、作る物はメインとなる食事とデザートをそれぞれ一品以上ということで、食材などは日時までにそれぞれで集めるという感じで勝負してもらいたい。いいですか?」

 客  「こちらはそれで問題ない」

 旅行者「わかった。逃げるなよ!」


 そう言って隣国からの旅行者と思われる一団はどこかへ行ってしまった。ほんと、厄介そうな事に巻き込まれたもんだな・・・・・・それを見届けた客の方も、こちらに名のってギルドを出て行く。客自体もこの国の人ではないらしいけれど、ある意味この問題には思うところがあったのだそうだ。ちなみに名前はラグマイズと言うんだそうだ。

 祭りは三日間続くので、この急遽決まった料理対決は二日後って事になる。ごちゃごちゃ揉めるよりは勝負で決めて終わらせてしまうのも、一つの手ではあるよね。

 さてそれよりも昼食を食べ損なってしまったし、商業ギルドに来ているので、ついでにここで食事して行くことにしよう。


 ロプ 「人も少ないだろうし、ここで食べて行こうか」

 幸  「うん」


 多少厄介事に巻き込まれたりもしたけれど、午後からもそれなりに楽しんだ後家に帰った。祭りの余韻に浸りつつも日本刀の削り出しを始めて、幸は夕食の準備をしてくれている。


 ジャド「来たぞー」

 ロプ  「おう、いらっしゃい」


 きりがいいところまで作業してジャドを迎え入れた。ジャドの盾と日本刀ができているので、早速それを渡して感触を見てもらう。


 ジャド「祭りは楽しめていたか?」

 ロプ 「ああ、ちょっとごたごたに巻き込まれたりもしたけれど、そこそこ楽しんでいたみたいだよ」

 ジャド「まあ人がこれだけ集まれば、そういう事もあるよな」

 ロプ 「ああ、夕食食べて行くか?」

 ジャド「お、じゃあ悪いがお邪魔させてもらうかな」

 ロプ 「じゃあちょっと幸に言って来る。直して欲しいところとかあったら言ってくれ」

 ジャド「あいよ」


 その後ジャドを交えて夕食をしながら、装備は問題ないと返事をもらい、その後はお互いの祭りの出来事などを話し合って別れた。幸は祭りで疲れたのか今日は早めに寝たけれど、僕はニイナの日本刀を仕上げ手前まで加工してから寝ることにした。

 翌日もみんなで集まって祭りに出かける。しかし今日は目的となる場所は決まっていて、僕らは冒険者ギルドへとやって来ていた。昨日が対人メインのイベントだとするのなら、今日はとレジャーハンターがメインとなるイベントが行われるのである。

 町中に隠されたギルド指定のアイテムをいかに早く集めるかというイベントで、これには多くの冒険者達が参加する予定になっていた。何を集める事になるのかは事前情報がまるでない為、開始直後の発表があるまではわからない。

 ジャドが代表して参加登録に向ったので、とりあえずの作戦を伝えておく事にした。


 ロプ 「これはチーム戦だ、だから僕達はまとまって移動するのではなく、バラバラに散って探そうと思う。ただこの町の地理に詳しくない幸だけは僕と一緒がいいだろうな。ミーリスは今回の捜索では魔法は使わないように気を付けてくれ。おそらくは魔法対策がされていると思う」

 ミリ 「了解した」

 ロプ 「とりあえず一時間捜索したら、アイテムを見付けても見付けていなくても僕の家に一度集合しよう。何か質問とかあるか?」

 幸  「スキルモタイサクサレテイマスカ?」

 ロプ 「おそらくスキルは使えると思う。探査系の魔法が何かしらの対策がなされていると予測しているが、ひょっとしたら他の魔法でも反応するかもしれないって感じかな。あくまでも予想だけどな」

 ニナ 「一時間より早く一杯集まった時は?」

 ロプ 「一チームで集める数は確か十個だったかな? 一人でそれだけ集められたのなら、その時点でギルドに報告してくれ。家で集まったメンバーで十個揃った時も代表してギルドに向って欲しい。

 ただ、最悪横取りして来る奴らもいると思うから、それだけはしっかり油断なく対応してくれよ。きつそうなら騒ぎを大きくして注目を集めたら何とか逃げられると思う。それも覚えておいてくれ」

 ミア 「わかりました」


 戻って来たジャドにも作戦を伝えていると、集めるアイテムの見本を渡される。一パーティーに見本は一つ、僕はバックパックに入れてある荷物の中から粘土を取り出し、それでコインの型を取ってそれぞれに配る。

 おそらくコインには良く似た偽物が混ざっているだろうから、これでそれぞれに見比べて見分けてもらいたい。


 ロプ 「一応注意としては、模様とか逆になっているからそこを注意してくれ」

 ニナ 「わかった!」

 レイ 「ふむ」

 ミア 「これを渡したという事は、偽物が混じっているかもしれないのですね?」

 ロプ 「ああ、だから良く見比べてくれ」

 ジャド「それじゃあそれぞれ移動開始してくれ!」


 集める見本のコインを渡された瞬間からイベントは開始されている為、僕らは早速別れて行動を開始した。

 他のパーティーなどは、見本が一つしかない為に別れて行動するかどうか迷っているところもあるみたいで、冒険者になったばかりのパーティーなどは、特に考えていないのかばらけたり、まとまって移動して行っているところもありそうだ。


 ロプ 「僕らの担当は商業ギルド前だ、急ごう」

 幸  「はい」


 おそらくこのコインっていうのがヒントも含んでいると思われる。それなら普通の露店とかに置いてある可能性は高い。御釣りの変わりに渡されたりとかね。

 辿り着いた適当な露店へと飛び込むと、早速聞いてみる。


 ロプ 「おじさん、冒険者ギルドのイベントで使うコインは置いていないか?」

 店主 「おいおいそれば冒険者の態度かね~」

 ロプ 「おっとすまない。串焼き二人前お願いする」

 店主 「あいよ! 三つ隣だ」


 よし予想が当たった! 串焼きを受け取って一つを幸に渡すとどっちの隣だ? とりあえず右へ行って見ることにして同じように、饅頭を注文すると六つ隣と言われる。逆だったか・・・・・・でもこれで一枚はコインが手に入いると思えばいい調子だと言えるだろう。


 うまい事コインを一枚手に入れた僕は、道の反対にも露店があるのでそちらでも露店の食べ物を頼んでコインを手に入れる。これで合計二枚、開始早々五分くらいで二枚も手に入るとは幸先がいいって思った。

 とりあえず手に入れた露店の食べ物を食べる為に、適当な座れる場所を探して腰を落ち着けると、念の為にコインが偽物かどうかをチェックしながら饅頭をかじった。二つともおそらくは本物っぽい。


 幸  「もう二枚なんて、いい感じですね」

 ロプ 「だな。この調子でドンドン行ってみよう」

 幸  「うん」


 露店で買ったものを食べ終わり、僕らは再び露店を覗いてみるものの、食べ物の露店にあったコインは二枚だけだったみたいで、それ以上は手に入らなかった。

 さて次はどこに行けばいいだろうか? 他にコインを使うものとかあるかな? そう思って周りを見ていると、体験型の露店で商品が不明のものを見付けた。


 ロプ 「商品が何か伏せてある。しかもそれが真ん中辺りっていうのはいかにも怪しいな」

 幸  「一番上のがわからないっていうのなら、サプライズって気はするものね」

 ロプ 「だな。これに参加してみよう」

 幸  「うん」


 ゲームはごく少量の魔力を使って駒を操り、得点を競い合うボードゲームみたいな対戦勝負だった。常にこちらと相手の陣地に三つの球があり、陣地の半分を山の頂点とした緩やかな傾斜がある地形の中、どれだけ相手の陣地奥に球を落とし込めるかで勝敗がきまる。

 このゲームの厄介なところは一度球を動かしたら、自陣に落ちるか相手の陣地に落ちるかのどちらかしかないところと、魔力を使って動かす事ができる物は一つだけということだった。つまり、球を動かしていたら防御の為の障害物を動かせないし、他の球を動かす事もできない。傾斜が付いているので、下手に二つ動かそうとすると、自滅する。それと相手が球を動かしている時はこちらがその球に干渉する事ができないので、必然的に障害物を操らなければ球が自陣の奥に落とされてしまうという事になる。

 駆け引きやタイミングなど、いろいろと複雑な計算が求められるゲームだった。でも今回に限っていえば、圧勝する必要が無いというか、圧勝してしまうとコインを通り過ぎてしまう為、適度に負ける必要もある。なんかややこしい対戦だな・・・・・・

 まあ、一度で駄目なら何度か試してみたらいいかな? ということで、早速参加する事にした。


 さてさてこのゲームの必勝法とは、いかに相手にこちらの意図を悟られずに複数の球の相手を向こうにやらせるかってところだ。こちらから運んでいる球だけじゃなく、相手の球すら利用して相手を混乱に陥れる。どれか一つに集中すると、こちらの球が二個も三個も落ちて来る。そんな状況を作り出せれば余程の熟練者で無ければ焦ってミスや、見逃す部分などもドンドン出て来る。

 ただ今回はいくら相手に勝てそうでも、完勝してしまうと目標の景品がもらえなくなる。なので相手が落としてくる球の殆どを無視して、こちらの球を三つとも相手の陣地へと運び一斉に落としていく。

 相手は慌てて自分の操っていた球も満足に動かせなくなって自滅していくのだけれど、ここからは球を落とし込む数の調整をしていく事で見事目的の景品に辿り着く事ができた。

 やっぱり最初にドカンって点数を稼いで、後で微調整する方法は最適だったな。


 店主 「あんたの勝ちだ、景品はどうやら予想していたみたいだな。どうせコイン目当てだろう? やられたよほんとに・・・・・・」

 ロプ 「どうも」

 幸  「やったね!」


 その後もコインを探して露店を覗いていく事にする。ちなみにこのコインも本物っぽかった。


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