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魔石職人の冒険記  作者: 川島 つとむ
第四章  再開する冒険
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再開する冒険

登場人物 ロップソン=ロプ(台詞表記) ジャド=ジャド(台詞表記) ニイナ=ニナ(台詞表記) ミリアナ=ミア(台詞表記) レイセモルス=レイ(台詞表記) 小林幸=幸(台詞表記) ミーリス=ミリ(台詞表記)

   第四章  再開する冒険


 幸と共に、元の世界へと帰って来て数日が過ぎた。まず真っ先に幸の身の周りの生活用品を買いそろえた僕は、日本と違って文明がかなり劣っているここの生活で、幸が日々の生活を苦痛に感じないように魔道具を開発して、できるだけ日本に近い生活ができるようにとがんばることに決めた。

 その結果、台所には冷蔵庫に近い魔道具が配置され、コンロもどきとレンジもどきも配置されることになった。こちらの世界で冷暖房の設備は難しいので、それは指輪に機能を追加する。まあこちらの世界は日本程温度差が激しくないので、町中だけなら必要ないと思うけれどね。それでも何かの機会に山とかに出向けば必要になるかもしれないので、一応熱気と冷気を遮断してしまえば快適に過ごせるだろうと思って構築してみた。

 後は掃除機や洗濯機も必要になるかもしれないな。日本人の特に女性はこれでもかってくらい綺麗好きな人が多かったように思えたので、まずは掃除機を開発していこう。

 掃除機はわりと発想が簡単なので、調整部分だけ苦労した感じで楽に開発する事ができた。風の魔石を使って空気を吸引し、羊皮紙で作られた袋の中にゴミを集めればいい。ただ日本のように紙を使い捨てとかできるほど豊かではないので、この羊皮紙は何度か中身を捨てた後に洗って使いまわす感じになった。

 次は洗濯機を開発していこう。向こうの全自動の物を参考に乾燥までをやってくれる物を何とか開発することができた。こちらは元々魔法で、光と水の属性魔法にクリーンと言う洗濯魔法があるので、普通にはこの中に入れた物を魔法で洗い水分を火属性魔法で飛ばせば完了になる。

 おそらくはこの洗濯機を商業ギルドに持ち込めば、馬鹿売れ商品になるんじゃないかなって思ったりもするけれど、あまりに便利過ぎると体が鈍りそうなので幸専用にしようと思っている。

 案外便利過ぎる環境のせいで、日本人の肉体能力はあそこまで衰えたのかもしれないなって思えたからな~


 ある程度の環境は整ったと判断して、幸には町の案内をかねて買い物の仕方、取り扱っている商品がどこにあるかなどいろいろと教えて行く。金銭感覚も教えておかないといけないので、当分は一緒に買い物をする必要があるな。

 後は僕も学校にしばらく通う予定でいるので、その間に幸にも読み書きを覚えてもらう為に教会へと通ってもらう事にした。サフィーリア教会へ行けば、読み書きのできない大人でも教えてもらえるのだ。


 ロプ 「じゃあ司祭様にこのお布施を渡して、がんばって勉強して欲しい」

 幸  「うん、大丈夫!」


 今日はお互いに勉強開始の初日であった。その為、まずは教会へと幸を送ってその足で学校まで行く事にする。ちなみにお布施の中には教科書や、書き取りをする羊皮紙の代金も含まれているのでそこそこの額を渡すのが暗黙のルールになっているが、それくらいの額は問題なく持っているので気にする程ではない。幸を養って行くくらいのお金は、冒険と生産でちゃんと稼げているのだ。


 ロプ 「ケイト教頭先生、しばらく厄介になります」

 教頭 「ロップソンさん、事故に巻き込まれたと聞いていましたが大事なさそうで安心しました。勉強の方は大丈夫ですよ。私も最近はあまりやる事がなくて学校の運営で書類仕事ばかりで飽き飽きしていたところです。ロップソンさんはしっかりした生徒さんでしたので、こちらとしても教えがいがあって嬉しいですよ」

 ロプ 「お世話になります。事故で別の世界に飛ばされまして、そこで戦いとは無縁な生活を四年過ごしました。その間、殆ど魔法にも触れる機会がなかったもので、体が鈍っていると思われるのと、支援系は少し使えるようになったのですが、防御系の魔法が全然なので、そちらも覚え直したいと思っています」

 教頭 「不思議な事故ですね。こちらでは一か月程しか経っていないという話でしたが、四年のブランクですか・・・・・・まあいいでしょう、軽く復習をはさみながら、支援と防御系の授業をしていけばいいですね。貴方はもう卒業していますのでサクサクと進めますよ。在校生のようにじっくりとはしませんので、家に帰ってしっかり予習復習をしてください」

 ロプ 「わかりました。よろしくお願いします」


 そんな感じで昔と違い、スパルタな授業が始まった。僕としても理解できずに置いていかれるとか、身にならないなどといった状況になるのは嫌なので、必死に勉強して何とか付いて行くようにがんばる。そんな生活がしばらくの間続く事になる。

 ケイト教頭先生も自分の仕事がある為、授業してもらうのは午前中のみで午後からは予習復習と商業ギルドの方の発明品を考える事に費やす事になる。

 魔法方面だけが問題なのではなく、商業ギルドの方も顔を見せたり納品状況を調べたりしなければいけない。自分の体感では四年のブランクで、四回程ギルドの更新期限を破った感じなのだけれど、こちらではまだ一ヶ月しか経っていないので少しもやもやしたもの覚えたけれど、それも仕方ないかって思う。

 まあまだ戻って来てそこまで時間も経っていない事だから、こういう感覚も徐々になくなっていくだろうね。とりあえず幸を迎えに行って、午後の活動をする事にした。

 一週間程、そんな感じでリハビリのような生活を過ごした。たまにやって来るジャドには現状をその都度報告して、そろそろ実際に冒険に出てみるのもいいかもしれないと考えている。冒険の勘は、冒険でしか取り戻せないからね。

 そんな訳で今日は朝から冒険者ギルドへとやって来ていた。


 ロプ 「おはよう~。久しぶり」

 ミア 「あ、ロップソンさんおはようございます。お久しぶりですね、お元気そうで何よりです」

 ニナ 「おは~。事故に合ったって言ってたから心配したよ?」

 レイ 「おはよう。無事で安心しました」

 ミリ 「始めましてロップソン殿。私はミーリスと言います。よろしくお願いする」

 ロプ 「おや、新しいメンバーが増えていたか、ロップソンだよろしくな!」


 僕は魔法の媒体として指輪を使っているのだけれど、ミーリスという子もどうやら指輪型の発動体を身に着けているようだな。なので魔法使いかと思えば普通に軽装鎧とロングソードを装備しているから、魔法戦士といった感じかな? 素人っぽさがなくて、中々いい人材が入ったものだ。


 ジャド「揃っているな、今日は申し訳ないがあまりきついのは止めて、普通に依頼を二つ程受けるぞ」

 ミリ 「ロップソン殿の復帰後初のクエストと言う話だったな。了解した」

 ロプ 「いきなりだが迷惑をかける」

 ミリ 「いや、事故にあったと聞いていたし問題ない。それにじっくりと実力を見させてもらえるしな」

 ロプ 「冒険者としての腕は、それ程でもないので申し訳ない気がするな。まあお手柔らかにお願いする」

 ジャド「話はまとまったかな? ならサインしてくれ」


 早速みんなでサインをしてクエストへと出かけて行く事になった。それにしても新人の話は聞いていなかったのでちょっとビックリだったな。まあ僕が抜けて魔法戦力がいなかったので補充するっていうのは当たり前だったんだけれどね。

 さてさて、マギーでの移動で毎回のごとく驚く新メンバーイベントも終わり、最初のクエストのコカトリス討伐を始める。

 以前のアサシンバジリスクでは、魔石を使い捨てて石化対策をしたり、囮を使ったりといろいろ工夫する必要があったけれど、今回の相手はくちばしに注意すれば大丈夫である。とはいっても対策はしっかりしないと危険な相手だけれどね。そこで即席で石化無効の効果を、用意しておいた指輪に施してみんなに配る事にした。

 これは向こうに飛ばされた時に切り札を改良して即席で対応したのをヒントに作っておいた指輪で、今回学校に行く事で防御系の魔法も少し使えるようになったので考え付き、作っておいた指輪に現地で必要になった魔法をかけて使い回そうという発想で作られた魔道具だった。

 まあ、当然のごとく指輪一つに付き相当の精神力を消費するので腕輪の魔道具のサポートがあって始めて使える方法なのだが、魔力が溢れているこちらでは簡単に魔力を集められるからできる贅沢な魔道具といえる。まあ僕がいなければ使えない方法ではあるけれどね。だから売り物にはできない魔道具だ。


 ロプ 「これで石化対策はいいはずだ。クエストが終わったらこの指輪は返してくれ。また別に必要な物が出て来たら使い回すからな~」

 ミア 「はーい」

 ニナ 「はーい」

 レイ 「わかった」

 ミリ 「なるほど、生産者と聞いていたが、いてくれれば確かにいろいろと助かる存在だな。正直一般人なら足手まといになるのでは? とか考えていたのだが、いろいろと納得がいったよ」

 ジャド「まだ戦闘が始まってはいないが、一応冒険者としても魔道具の力を借りれば普通に魔法使いとして使えるやつだぞ」

 ロプ 「ブランクがどう影響するかわからないけれどな~」

 ミア 「ロップソンさんなら、直ぐに感覚を思い出していつものように戦えますよ」

 ニナ 「だね。それにロップソンさんがいない間に、私達だって強くなったんだから、今度はこっちがサポートするよ!」

 ミア 「そうですね。以前はいつも助けていただいていましたから、今度は私達で助けますよ!」

 レイ 「フォローは任せてください」

 ロプ 「ああ、よろしくな。まあ、こいつらは石化さえ対処できればそこまでの危険はないだろうけれどな」

 ジャド「だな。まあ油断はできんが」

 ミリ 「お手並み拝見しよう」

 ロプ 「おっけー、やってみる」


 雑談も終わりにして、早速討伐を開始する事にした。コカトリスの討伐数は十匹になっている。初心者でもなければまあ、問題ない数だろうね。


 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」


 コカトリスの石化攻撃は、そのくちばしに接触する事で発動する技である。そしてそれは生物ばかりではなく、例えば斬り付ける剣や攻撃を受ける鎧なども例外ではなく石化されるのであった。しかし今回の僕達は魔道具によって石化無効の魔道具による効果範囲に包まれていて、本来なら石化されるはずの装備も石化される事は免れる事になっていたのだけれど・・・・・・まさか飛んで行く魔法にまで石化が通用するとは考えてもいなかったよ・・・・・・

 まあそれでも最初こそ驚いたものの、それならそれで対処の仕方というものがある。ようはくちばしが一つしかないのであれば、魔法を複数にしたら相手は対処できないのだからな。

 そんな訳で最初こそ唖然としてしまったものの、その後は魔法の数を拡大して魔法を誘導し、正面と後ろから狙う事で苦労する事なくしとめて行く事に成功している。

 昔と違って魔法の威力も上がっているので一応二発で倒す事ができるので、前衛が出る幕もなく僕の独壇場みたいにクエストを終える事ができた。


 ジャド「ブランクなんか、全然ないんじゃないか?」

 ロプ 「いや、魔法は普通に使えるってば。問題はとっさの判断だと思うんだよ」

 ジャド「なるほどな」

 ミリ 「後衛がそういう事態になった時点で、殆どパーティーは壊滅状態では?」

 ミア 「昔はロップソンさんが私の盾になって、前衛をしてくれたりしていましたね」

 ニナ 「私も敵にやられそうなところに飛び込んで来て助けてもらったよ」

 ミリ 「それはどんな状況だったんだ?」

 ジャド「ああ、その頃はレイがいなくてな。ミリアナとニイナだけだったんだが、学校を卒業して直ぐだったから、一時的にロップソンが前に出ていたんだよ。さすがに無茶だと思って前衛を募集してレイがやって来たって感じだな」

 レイ 「そんな経緯があったんですか」

 ミリ 「それは確かに危険な事をしていたんだな」

 ロプ 「まあ、もうそんな事もないだろうな。今ではレイもいるしな」

 ジャド「だな。一応ミーリスも入ったから、ロップソンが前に出る事なんか、もうないだろう」

 ロプ 「そう願いたいものだな~」

 ミリ 「それにしても魔法使いとして未熟だと聞いていたのですが、判断力や魔法の威力など、どこにも未熟なところが無いどころかブランクも感じなかったな」

 ロプ 「あー、悪いが勘違いしないように言っておくと、魔道具で威力の底上げをしているからあの威力なんだ。逆に言えば底上げしても普通の魔術師程度にしかなっていないって言った方がいいかもしれないな」

 ミリ 「なるほど、そういう事でしたか。それは失礼な事を言ったようで申し訳ない」

 ロプ 「いやかまわないよ」

 ジャド「判断力の点からいけば、確かに鈍っていないな。これでも長い事冒険者の活動では魔法使いとして活動していたからな。そっちは問題ないが、威力と攻撃魔法以外が苦手だったよな?」

 ロプ 「ああ、今まではそうだったが、支援系と防御系が少しだけ使えるようになって来たぞ。今学校で教えてもらっているところだから、まだまだ勉強不足って感じだけれどな」

 ミア 「ロップソンさん、ブランクがあって大変なのに、しっかり勉強もしてがんばっているんですね」

 ジャド「頼もしい事だ。これなら直ぐに大物のクエストも行けるようになるな」

 ニナ 「ちぇー、せっかく華麗に助けようって思ってたのに、全然機会がないじゃない」

 ロプ 「それは残念だったな~」

 レイ 「隙がないのはいい事です」

 ジャド「ニイナ、討伐部位の回収は終わったか?」


 こっちで討伐後の感想など言っていた間に、回収していてくれたようだな。せっせと動いていたらしいニイナに確認している。


 ニナ 「ばっちりだよ」

 ジャド「じゃあ次に行くぞー」

 ニナ 「おー」


 次のクエストの討伐目標はアラクネという話だ。古城に住み着いたアラクネの掃討らしいのだけれど、中にどれだけいるのかわからないので結構厄介そうな依頼だな。

 アラクネは個体によっては魔法も使って来るようなので、油断できない相手ともいえる。気が付いたら最後尾の仲間がいなくなっていたとかいう話もよく聞くので、しっかりと警戒しながら行かなければならないな。


 ミリ 「ロップソン殿、支援系が少し使えると言っていたが、探査魔法は使えるのかな?」

 ロプ 「そうだな・・・・・・振動と熱感知が使えるようになった」

 ミリ 「では私は音と生命の感知を使おう」

 ロプ 「わかった」


 この場で魔法を使う事で振動と熱を感知する事もできるのだけれど、ただでさえ未熟な僕が複数の魔法を維持するのはきついので、振動感知の魔石と熱感知の魔石をその場で作成して発動させる事にした。これで通常の攻撃魔法に支障をきたす事無く探索に集中できると思う。


 ロプ 「こちらは準備いいですよ」

 ミリ 「さすがですね。我に調べを伝えよ、サウンドセンサー。命の息吹を知らせよ、ライフセンサー」


 ミーリスさんは複数の魔法を維持しつつ他の魔法とかも使えるのかな? もしそうならかなりの使い手って気がするのだけれど、それか攻撃魔法を使う時には探知を解除するのかもしれないな。その時はこっちで警戒を強めるようにしよう。魔法戦士みたいだから、接近戦をするっていう可能性もあるか。結構ミーリスさん万能だな。


 ミリ 「お待たせしました、こちらの準備はいいですよ」

 ジャド「了解、じゃあどこから襲って来るかわからないから気を抜かないように進むぞ」

 ニナ 「わかってるよ」

 ミア 「気を付けます!」

 レイ 「行きましょう」


 僕達は古城へとゆっくり進入して行った。門や扉はほぼ全て開かれているようで、鍵開けの必要は無さそうだね。

 門を抜けて前庭の部分に差し掛かると、探知の魔法に反応があった。わかっただけでも反応が四つ。


 ロプ 「前に反応が三つ。右の方に反応が一つあるな」

 ミリ 「こっちは左で一つ反応があった」


 さすがに二人かかりでの探査になると、漏れがなくなって便利だな。それか、ミーリスが優秀なのかな?


 ジャド「中は後回しで外の敵を始めに倒そう。その方が練習にもなりそうだ」

 ミア 「わかりました」

 ニナ 「わかった」

 レイ 「どちらから行く?」

 ロプ 「右は段々近付いて来ている。そろそろ視界内かも」

 ミリ 「左は止まったままかな」

 ジャド「左の敵に警戒しつつ、右のやつを倒すぞ。レイ、行ってくれ」

 レイ 「了解した」


 こちらの実力を調べる為なのか、隠れる事無く正面からやって来たアラクネが見えた瞬間、レイが走り出す。その後をニイナが背中に隠れるように追いかけ、ミリアナが警戒しながらもそちらへと向った。


 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」


 レイとの距離が近付いて糸を飛ばして来るのを予測していた僕が、支援の為の魔法攻撃を叩き込む。糸はその魔法で簡単に焼き払われて、そこに走り込んだレイが素早く斬り付けていた。

 怯んだアラクネの横に回り込んだニイナが、追撃の攻撃を叩き込みそれに合わせてレイが斬撃を叩き込む。ミリアナが攻撃に参加する事も無くそれでアラクネは倒れていったようだった。

 左にいたアラクネは、どうやらその間に動く様子も無く右も特にそれ以上他の敵は出て来なかったようだな。


 ミリ 「ブランクがあるとは思えない見事な連携だな」

 ジャド「だな。まだ楽観はできないが、案外直ぐに問題なくクエストをこなせそうで安心したよ」

 ロプ 「そうだな。だがもう少し体を動かしてみない事には自信が持てない気がするよ」

 ニナ 「大丈夫なんじゃない? 体力が衰えていても、直ぐに戻るって」

 ミア 「そうですね。判断力自体は問題無さそうですもの。後は体力作りだけですよ」

 ロプ 「なるほど、体力作りか・・・・・・確かに鈍っているならそっちだな」

 ジャド「じゃあ左の方行くぞ。レイ慎重に行ってくれ」

 レイ 「了解した」


 その後、城の周りをぐるっと回りながら見付けたアラクネを倒して回ったのだけれど、発見できるアラクネがせいぜい同時に三体程だったので特に危険な事も無く倒す事ができた。普通にみんなが強くなっている気がするな。

 さて一週回って正面へと戻って来たが、問題はここからといっていいだろう。アラクネは天井にぶら下がって移動したりもできるので、室内の方が断然厄介さは上になるのだ。

 そして魔法を使う事からもアラクネの頭は結構いい事が判る通り、音もなく後ろから襲われるみたいな奇襲などして来る所も厄介さが窺える。

 おそらく僕の方の魔法で振動の探査は殆ど室内では役に立たないと思われる。気を引き締めていかないとな~


 ジャド「じゃあここからが本番だと思って突入するぞ」


 ニイナとレイが先頭で進み、ミリアナとミーリスがそれに続く。今回のしんがりは僕とジャドだった。


 ミリ 「正面から敵五、右に三、左から四だ」

 ロプ 「上に一、右上にも一。後はこのホールの外かな」


 僕の補足にみんなが上を見上げアラクネを発見する。ミーリスがさらに右上に敵を見付けてふむって感じで頷いていた。

 こちらに発見された事を悟ったアラクネが襲い掛かって来たけれど、お互いに奇襲がなくなっていたので苦労する事無く倒す事ができた。

 昔は攻撃魔法ばかりに気を取られていたけれど、探査系の魔法が有るのと無いのとでは、戦闘の効率がかなり変わって来るのがわかる。過去の僕に教えてやりたいって思ったよ・・・・・・

 日本に行って学んだ事でもあるけれど、こういう情報戦も立派な戦いなんだな~。今回の戦いでそれがよく理解できたよ。

 その後も各部屋を見て回り見付けたアラクネを討伐して進み、食堂と思われる場所へと辿り着く。


 ロプ 「ここがアラクネ達の巣の中心かな? 二十匹はいるな」

 ミリ 「ああ、さすがにここは今までのようには行かないと思う」

 ジャド「俺とレイで前衛に出る。みんなそれぞれ数を減らすように行動してくれ」

 ロプ 「了解」

 レイ 「了解」

 ミア 「わかりました」

 ニア 「わかった!」

 ミリ 「ああ!」


 それぞれに気合を入れて食堂へと突入して行った。


 ロプ 「荒れ狂う風よここに、ウィンドカッター」


 おそらくは最奥にクイーンがいると思われる場所へ、風の嵐を叩き込む。これでクイーンも倒せているとかなり楽になると思うのだが、僕の一撃ではおそらく倒しきれないだろうな~。まあそれでも、周囲を巻き込みかなりの範囲の敵を倒せているだろうと思っておこう。


 ミリ「凍てつく刃よ、アイスソード」


 ジャドとレイが前面に出て、正面から襲い掛かって来るアラクネを相手していると、上からもやって来るアラクネがいたので、そこにミーリスの魔法が炸裂して行く。ミリアナは魔法温存の為か鞭でアラクネにダメージを与えて行き。ニイナは確実に止めをさせそうなアラクネを倒して行っていた。

 僕のいない一か月のうちに、ずいぶん頼もしくなったな~って思ったよ。

 風の魔法が納まった食堂の中は、最奥にやはり倒しきれてはいないまでも、大ダメージを受けたと思えるクイーンアラクネがいて、その周囲にいたと思えるアラクネはほぼ壊滅していた。

 探査に反応している残りのアラクネは後五匹程かな?


 ミリ 「ここにいるアラクネで、終わりのようだ」

 ロプ 「こっちも探知できたのはここの五匹だけだ」

 ジャド「了解。じゃあ一気に行くぞ! 俺とレイでクイーンを抑える、みんなは残りを倒してくれ」

 ロプ 「焼き尽くせ、ファイアアロー」


 みんなが接近するまでの目くらましも兼ねて、数を拡大した火の矢を飛ばす。


 ジャド「ゴー」


 それぞれの目標に向けて走り出したみんなを後ろから見ながら、一応警戒して周囲を見回しておく。そこに丁度隣からやって来たと思えるアラクネを目視する事ができたので、魔法を使って迎撃する事にした。


 ロプ 「燃え盛れ炎よ、ファイアランス」


 通常の火の矢では威力に不安があったから、上位の火の槍で迎撃する事にした。これに耐えられたらジャド達が背後から襲われるからね。そして炎の槍の当たったアラクネは少なくとも瀕死にはなったようで、味方に被害は出なかった。

 警戒を続けていてよかったよ。

 クイーンアラクネも、かなりの深手だったようで、それぞれのアラクネを退治したみんなが集まり、難なく倒す事ができたな。一応念の為に古城内を探索して、撃ち漏らしがないかチェックした後、大丈夫そうだったので討伐部位を回収して町へと帰還する事になった。


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