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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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作戦開始(2)

 公爵邸の隠し部屋から持ち出した宝石と金貨のほとんどを費やし、遂行することになった作戦。失敗するわけにはいかない。


 成功するよう、時間が限られている中、懸命に準備した。


 私が包まれたヴィレミナ絨毯は、特注の美しい彫刻があしらわれた木箱に入っている。織り目も細かく模様も複雑なため、ずっしり重みもある――ということにしていた。よって私の体重の分だけ、重みが増していても、気づかれることはなかった。それにそもそもヴィレミナ絨毯は、ウール製のものはズシリと重い。ヴィレミナ絨毯=通常の絨毯より重みがあることで知られていた。ゆえに重さの件は問題ない。


 そしてヴィレミナ絨毯から私が登場するタイミング。それは大商人アルベルトに扮したレニーが「ぜひご覧ください」と、絨毯を広げることで実現される。そこから先は私の話術にかかっているが、そこは前世でプレゼンが得意だったことを生かし、乗り切るつもりだった。


 この作戦では、献上したその時に、王族が立ち会ってくれることを前提にしている。もし時間の都合がつかず、王族の立ち合いがなかったら……。それでもその日のうちに、献上品を見に来てくれたら、チャンスはある。そうなった場合、沢山ある献上品の中で、私が包まれたヴィレミナ絨毯を見てもらえるか、ということが重要になる。


 だがこの点については対策を既に行っている。


 私が包まれたヴィレミナ絨毯は“盲目の乙女”に匹敵する逸品という触れ込みにしていた。先に“盲目の乙女”を手に入れ、その素晴らしさに感動していたら、残りの献上品も見たくなるはず。つまり献上品を王族は、絶対に確認したくなるに違いなかった。そして確認する時、一番で見たくなるのが、私が包まれたヴィレミナ絨毯になるよう手を回したわけだ。


 だがもし、すぐに王族が現れなかったら……。


 ここの目論見がうまくいかないと、かなりリスクを冒すことになる。皆が寝静まった時間に木箱から出て、王族の居室を目指すことになるのだ。王宮の構造をきっちり理解できているわけではないし、警備体制は厳重なはずだから、これはかなりハイリスクになる。


 まさにハイリスク&ハイリターンではあるが、この作戦をやるしかなかった。


 なぜなら正規ルートで王族に会おうとしても、まず会えないからだ。


 デセダリア帝国ではリオンヌ侯爵へ嫁ぐはずだった私が消え、大騒ぎになっているはず。一応、物盗りに襲撃されたように思わせる演出はしてある。食肉処理施設で手に入れた血なども散らし、怪我を負ったと思わせる小細工もしていた。それで騙し通せるかというと、難しい気はしている。


 襲撃され、大怪我をして攫われたと思いつつ、逃亡の可能性も考え、指名手配のようなことをされていると思うのだ。


 とはいえさすがにこの件に関する情報を、セントリア王国の首都にいて入手するのは難しい。


 デセダリア帝国では大騒ぎになっていても、セントリア王国からしたら、新聞に載るほどのことではない。つまり私が今入手できる情報源=新聞に、私の件が載っているかというと、載っていないと思うのだ。王族や政治の場にいる貴族は多少なりとも私の失踪OR逃亡の情報を掴んでいたとしても、それ以上でもそれ以下でもない。帝国の元公爵令嬢がどうなろうと気にすることではなかった。ようはどうでもいいことだろう。


 それでも逃亡犯とされ、もし見つけたら送還して欲しいと帝国から連絡が来ていれば……。正規のルートで王族に会うのは難しい。


 もし帝国からセントリア王国に私に関して何の連絡もなく、正規のルートで王族と会おうとした場合。つまりは紹介状を用意し、そこに元公爵令嬢であり、重要な話があるので、王族との謁見を希望すると、献上担当とはまた別の宮廷管理官に申請したとしても。


 審査段階で落とされるだろう。帝国で失踪し、逃亡疑惑があるような、元公爵令嬢と王族が会う理由などない。しかも帝国とセントリア王国は敵対関係なのだ。


 では身分を偽って正規ルートで会うのは……絨毯に包まって会うことなどと比べものにならない程、ハードルが高くなる。なぜなら正規ルートでは審査が非常に厳格化されており、身分の裏どりは献上の時以上にしっかりとされると思うのだ。架空の人物ではダメで、実在の人物ではないとお話にならない。実在の人物なら、帝国に入り込んでいるセントリア王国の密偵が現地確認をするだろうから、まず成りすますのは無理だった。


 要するに正規ルートでは絶対に会えず、身分を偽って正規ルートで会うなど無謀な話。さらに厳重な警備体制の宮殿の敷地に紛れ込むのは、それこそ難易度が高い。


 使用人のふりをして潜り込むなんて、様々な国のスパイがとる手法だ。当然、警戒している。そこをクリアするには、前世のスパイ映画のように、本物にしか見えない顔マスクでもつけ、変声器を仕込みでもしないと、無理だと思う。そしてそんなことはできないので、通常では思いつかない、前世の偉人の成功手段を採用したのだ。それが非正規ルートで献上品の絨毯に紛れ込むという手法だった。


 ここは乙女ゲームの世界。クレオパトラは存在していないし、絨毯に包まれ、敵前に現れるなんて逸話は聞いたことがなかった。まだこの世界で試されていない方法なら、行けるのではないか、と思いついたわけだ。


 ということでハイリスクは重々覚悟の上での決行となる。そしてティータイムまであと一時間というところで、私が包まれたヴィレミナ絨毯を入れた木箱を、荷馬車に運び込むことになった。


 既にレニーは大商人アルベルトとして男装が完了している。私も前世のベリーダンサーのような衣装に着替えを終えていた。


「じゃあ、私は絨毯の中に潜むわ。これから先は一切、会話は無理になる。でも毎日いろいろと想定し、ありとあらゆる可能性での対処法を話したから……大丈夫よね?」

「大丈夫です! お嬢様の熱意に押され、気持ちは大商人アルベルトになっています。やってみせますよ!」


 レニーはそう応じた後、私の手を取り、瞳を潤ませる。


「絨毯からその姿を現わした後こそ、勝負です。そこからはお嬢様の話術にかかっていますよね。しかも王族と対面となれば、周囲には警備兵から近衛騎士までいるはず。刃物を向けられることになりますが、本当に大丈夫ですか、お嬢様!?」


 その点に関しては剣を目と鼻の先に何度も向けてもらい、慣れるようにした。


 最初は全身が硬直し、顔が青ざめ、何もできなかった。しかし繰り返し何度も剣を向けられることで……慣れたのだ。人間の適応能力は偉大だった。


「大丈夫よ。私がこうしている今も、お父様は牢屋の中で絶望し、お兄様は過酷な労働を強いられている。お母様は泣きながら祈りを捧げていると思うの。私だけ自由の身。私がやらなければ、誰が両親と兄を助けられる? それに散り散りバラバラになった使用人のみんなも辛い思いをしていると思う。親戚も肩身が狭い思いをしているはずよ。だから私が何としてもやってみせるわ!」


 決意と共に、私は絨毯に包まれた。

お読みいただきありがとうございます!

次話は20時頃公開予定です~

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