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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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冒険(2)

「小僧、お前がパンを盗んだのだろう? 現にその手にパンを持っているじゃないか!?」


 朝から面倒なことになってしまった。


 ローグ卿に頼みこみ、やってきたデセダリア帝国。

 だがそこは期待していたような場所ではなく、インフラ整備が遅れ、人も少ない寂れた国だった。そこで国境近くの宿場町で一泊し、翌朝にはセントリア王国へ戻るつもりでいた。


 本来なら旅の最中でも早朝、剣術や乗馬の訓練をしていたが。さすがに帝国で剣を振り回したら目をつけられる。早朝の訓練はなしだった。だが身に付いた習慣で、朝はバッチリ目が覚めてしまう。ローグ卿たちはまだ寝ているので、こっそり着替え、早朝の町へと出て行くと――。


 パンを焼くいい香りがしている。


 宿屋で朝食を取る手筈になっていたが、パンの香りは食欲をそそる。その香りを追うように歩いていると、いきなり出合い頭で誰かとぶつかった。


「くそっ、邪魔な奴だ!」


 わたしより三歳ぐらい年上の少年に怒鳴られ、何が起きたのかと思った。その少年は両手にパンを抱え、そのまま謝罪もなく、走り去って行く。残されたわたしのそばには、パンがいくつか転がっている。しかもぶつかった拍子にわたしが掴んだ何かはパンだった。


 すると今度はそこへ「まちやがれ! このパン泥棒め!」とパン屋の店員が現れた。そしてわたしを見ると、「小僧、お前がパンを盗んだのだろう? 現にその手にパンを持っているじゃないか!?」となったわけだ。


 あの少年は黄ばんだシャツにグレーのズボンで、髪の色もブロンドで顔にはそばかす、わたしとは外見は全然違う。だが店員は、少年であること、パンがそこにあるという理由だけで、わたしを犯人だと決めつけたのだ。


「金を払え。そうすれば見逃してやる。払わなければ警備隊の屯所に連れて行くぞ」


 お金を持っていないわけではない。持っているが、それはセントリア王国のコイン。ここでセントリア王国のコインなど出せば、何を言われるか分からない。ここはローグ卿と合流し、帝国のお金を用意してもらおう。


「わたしは旅の芸人の一人だ。パンを盗んだわけではなく、盗んだ少年と出会い頭でぶつかったに過ぎない。でも君はわたしの言葉を信じてくれないのだろう? ならば問答に時間を掛けるのは無駄だ。お金で解決するなら、そうしよう。ただ、お金は宿にある。取りに戻っていいだろうか」


 冷静にわたしが答えると、店員は顔を赤くして怒り出す。


「なんだ、貴様! ガキのくせにベラベラと……妙に弁の立つ奴だ。生意気なんだよ! それに宿に金があるなんて嘘をついて、そのまま逃げるつもりだろう!」


 店員の言い分には呆れるしかない。こちらが譲歩しているし、盗んでもいないパンの代金を払ってもいいと言っているのに。言葉が通じないというか……。


 辟易したまさにその時。


「パン屋のおじさん、犯人はこの少年よ」


 声に振り返ると、そこにはシルバーブロンドに紫紺色の瞳、艶のあるミルク色の肌にローズ色の唇と頬、小顔で細い手足の、まるでドールのような美しい少女がいる。そして彼女の後ろに控える従者が、わたしにぶつかった少年の首根っこを押さえていた。少年の腕にはパンもあった。


「私はマリナ・サラ・アシュトン。帝都からお祖父様に会いに来たの。私のお祖父様は東の辺境伯ミトラスと言われているわ」

「へ、辺境伯のお孫様!? それは大変失礼しました。お騒がせして申し訳ありません! 盗まれたパンはもう売り物になりませんので、これで失礼します!」


 店員は勢いよくお辞儀をすると、走り去って行く。


 どうやらあの店員は権力にはすこぶる弱いようだ。しかもこの地では、辺境伯が皇帝ともイコールになる。問題を起こしたと辺境伯に知られ、お咎めがあれば、パンを盗まれたどころではなくなるはず。ならば触らぬ神に祟りなしとばかりに立ち去ったのだろう。


「せっかく泥棒を捕まえたのに。いいわ。その少年は警備隊へ連れて行って」

「かしこまりました、お嬢様」


 従者が少年を抱え、警備隊へと向かう。そしてマリナという少女は、紫紺色の瞳でわたしを見て、ニコリと笑顔になる。まさに天使のような笑顔に胸がドキドキしてしまう。すると今度はすっと手を伸ばし、わたしの髪や服についた汚れを払ってくれたのだ。


(なんて優しいんだ……! こんなにも美しい上に親切だなんて。しかも辺境伯が祖父ということで、このマリナは貴族令嬢。着ているドレスも立派だから、高位貴族のはず。それなのにどう見ても平民姿のわたしに、こんなふうに接してくれるなんて……)


「災難でしたね。怪我はない?」

「……大丈夫です。その……ありがとうございます」


 もじもじしてしまい、うまく言葉が出ない。


「そのパンには土がついているわ。それを食べたらお腹を壊しちゃう。鳥にでもあげるといいわね。このパンは私に譲ってください」

「えっ……」


 マリナはわたしの手の平に銅貨を載せ、土のついたパンを受け取った。


「旅の芸人の方なのでしょう? これから帝都に向かうのよね? みんな帝国祭に向け、帝都に向かっているわ。私も帝都に戻るから、また会えたらいいわね。それでは失礼するわ。ご機嫌よう」


 優雅な笑顔とお辞儀をすると、マリナはわたしの前から去って行った。

お読みいただき、ありがとうございます~

もじもじする少年時代のアトラス王太子殿下!

い案件(笑)

遅い時間までお付き合いいただいた読者様

ゆっくりお休みくださいませ~

次話は明日の12時~14時頃に公開予定です!

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