表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/76

祭りの後(2)

「アシュトン嬢、寛いでいるところを邪魔してしまい、申し訳ない」


 ホワイトブロンドのサラサラの前髪の下の、ブルートパーズのような瞳で私を見たアトラス王太子は、まずは入浴前の訪問をお詫びしてくれる。


「お気になさらないでください。入浴の準備はまだ途中でしたので。どうぞお座りください」


 濃紺のセットアップを着たアトラス王太子は「ありがとうございます。では失礼する」と部屋に入り、ソファへと腰を下ろす。すぐにメイドがコーヒーを出すと、その香りに彼が目を細める。


「ちょうど、コーヒーを飲みたいと思っていた」

「皆様との談笑中にコーヒーを頼まなかったのですか?」

「……皆、お酒好きだった。わたしもブランデーを飲んでいた」


 これには「ああ」と思う。

 父親もお祖父様もお酒が強かった。牢屋に入れられていた父親は、お酒を飲むのは久々。食事中も嬉しそうにワインを飲んでいた。程よく酔いも回ったところで食事の後に、男性陣で嗜好品でもあるブランデーを楽しむことになったのだろう。


「……殿下も食事中、ワインを召し上がっていましたよね。そしてブランデーを飲んだとなると……ほろ酔いですか?」

「水も一緒に飲むようにしていたからな。酔っている感覚はない。しかもミントキャンディも口にしているから、アルコール臭いこともないかと」


 これを聞いた私は思わず微笑んでしまう。


「……もしや私を訪ねることにしたので、気を遣っていただいたのでしょうか?」

「それは当然だ。酔った勢いで話していると思われたくなかった。それにアルコール臭い姿で君を訪ねるなんて、できるわけがない」


 アトラス王太子の律儀さは大変微笑ましい。


(でもそこまでして私の部屋に、何を話しに来たのかしら?)


 そんな疑問が浮かぶ。ここはもう純粋に尋ねることになる。


「なるほど。そこまでするということは、何か重要なお話があるのですね」

「そこまでのことをしている……そんなふうには思っていない。わたしにとってアシュトン嬢は、とても大切な存在だ。まだ酒を飲む年齢ではない君に、酒臭いと思われたくない。わたしとしては当然のことをしたまでだ」


 そう答えたアトラス王太子の瞳には、真摯さと一緒に何やら情熱の炎が燃えている。


 そこで今さら思い出す。


(アトラス王太子は私にプロポーズしたいと思っていたのだわ!)


 あまりにもいろいろなことがあり、色恋沙汰にときめいている余裕がなかった。


「最優先で話したいことはあるが、まずはお詫びをさせて欲しい」


 そこでアトラス王太子が深々と頭を下げるので、ビックリしてしまう。


「ど、どうしましたか!?」


 アトラス王太子は一分近く頭を下げ、私は何度も顔を上げるようお願いし、ようやく彼の瞳と目が合うことになった。


「皇宮へマチルダン男爵の私兵が押しかけることができるよう、わざと警備を手薄にしていた」

「!? そうなのですか!?」


 アトラス王太子は頷き、話を続ける。


「諜報部から、マチルダン男爵が金に糸目をつけない形で人を集めていると、報告が上がって来ていた」

「そうだったのですね」

「そして皇宮の使用人の中には、マチルダン男爵の息がかかっている者がいた。マチルダン男爵令嬢は、その者を使い、まんまと父親と連絡をとっていたようだ。あれだけ念入りに動いたのに……」


(それは間違いなく、ヒロインのラッキー設定のせいね。ピンチの時にいろいろなことが、ヒロイン有利に働くから……)


「どのみち、我々は演説の方で多くの人員を割く必要があり、皇宮に多くを割り当てることはできなかった。そこでマチルダン男爵が皇宮へ娘と第二皇子を奪いにくることに目をつむり、逃亡の手助けという罪を増やしたところで捕らえる算段を立てた」

「なるほど。その計画があったので、マチルダン男爵の皇宮襲撃を聞いても、落ち着いていたのですね」

「そういうことだ。襲撃をしたマチルダン男爵がどんな逃亡計画を立てているのか、諜報部ではずっと監視を続けた」


 その結果、まずマチルダン男爵が国境へ向かったと報告され、アトラス王太子はそちらへ向かうことになった。ベネディクトとマチルダン男爵令嬢が、逃亡より私への復讐を優先するとは、さすがに想像していない。そんな無謀なこと、普通はしないからだ。


「まさかアシュトン公爵一家を襲撃するとは……逃亡よりも復讐を重視するとは……そこはわたしの想像を超えていた。ゆえにアシュトン公爵令嬢を含め、君の兄君や父君が危険になる状況が起きてしまった。そのことを本当に申し訳なく思う」


 そこで再びアトラス王太子が頭を下げるので、それを宥め、私は伝えることになる。


「ベネディクト第二皇子のあの粘着さは、想定不可能だと思います。通常は逃亡を最優先にすると思うので……。よってそこは気にしないでください。終わり良ければ総て良しと私は考えるので」

「アシュトン公爵令嬢……」

「もうこの件は恨みっこなしでお終いにしましょう」


 アトラス王太子がブルートパーズのような瞳に情熱を込めてこちらを見るので、何だか頬が熱くて仕方ない。


「……アシュトン嬢の父君と話した」

「お父様と?」

「ああ。君にプロポーズを正式にしたいと思っていると、打ち明けた」


 これには「!」と驚き、アトラス王太子は落ち着いた様子で話を続ける。


「本来の予定とは順番がかなり違っている。まさか秘密の通路で想いを伝えることになるなんて。予定外だ。その一方で、わたしとしては君と過ごす時間を持てば持つほど、気持ちが抑えられなくなっている」


 サラリと口にしたアトラス王太子の言葉に、全身が一気に熱くなる。


「既に本人に気持ちは伝えているし、どのみち帰国してレイラ姫との婚約を解消したら、求婚状を送るつもりでいた。そして今回、アシュトン嬢の両親にもせっかく会えたんだ。よって君の父君に、わたしの気持ちと求婚状を送りたいと伝えたんだ」

「……お、お父様は何と言いましたか……?」

「とても驚いていた。だがすぐに冷静になり、自身に爵位がないため『王太子の婚約者に相応しい身分ではありません。それに既にしている婚約を殿下が解消してまで、娘と婚約するのは……。そんな横取りするようなやり方、娘は喜ばないと思います』と言われた」


 アトラス王太子から聞かされた父親の言葉には「お父様、分かっていらっしゃる!」と叫びそうになる。まさに父親の言う通りで、私はレイラ姫とアトラス王太子の婚約を解消させるつもりなどなかった。


 レイラ姫とアトラス王太子、お互いに別の想い人がいる。でも王族という立場では、その相手と結ばれることが難しい。だが王族である限り、結婚から逃げることは出来ないだろう。


 幸いなことに、レイラ姫とアトラス王太子は、白い結婚になることに双方が同意している。そんなことを許してくれる相手、そうはいないはずだ。


 婚約解消になったら、レイラ姫が困る。彼女を困らせるようなことはしたくなかった。


「爵位の件など些末なこと。それに君の父君は無実だった。そして帝国は消え、帝国民はすべてセントリア王国の国民になる。現状の貴族の身分は基本的には維持させるつもりだ。君の父君もアシュトン公爵に戻る」


(お父様は再び公爵になれるのね……!)


 父親の名誉の回復は、大変喜ばしいことだったので、頬が喜びで緩む。


「とはいえ法律や税制が異なるんだ。調整は必要であろうし、この機会に不正をしている貴族がいないかは、調べることになる。皇家派の貴族もいるだろうし、マチルダン男爵と強いつながりを持つ貴族もいるかもしれない。そういった貴族に処分をするいい機会になるだろう」

「それがいいと思います。帝国の諸悪をセントリア王国に持ち込む必要はないと思います」


 そう答えるとアトラス王太子はクスリと笑う。


「アシュトン嬢も、すぐにアシュトン公爵令嬢に戻る。そこに王太子の婚約者という肩書も加えたいのだが」

「アトラス王太子殿下。父親が公爵に戻れるのはとても嬉しいです。ですがそれはそれ。王太子の婚約者の肩書を、ほいほい受けるわけにいきません」


 するとアトラス王太子は、その整った顔に驚きの表情を浮かべ、こんなことを言い出す。


「アシュトン嬢は、レイラ姫に幸せになって欲しくないのか?」と!

お読みいただき、ありがとうございます~

今週の応援への感謝を込めて

続きは増量スペシャル更新

夜更かし23時頃更新でお届けいたしますー!

ご自身のご都合にあわせ、ご無理はなさらず。

また明日のお昼更新でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●じれじれの両片想い●
バナークリックORタップで目次ページ
陛下は悪役令嬢をご所望です
『陛下は悪役令嬢をご所望です』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ