表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/76

帝国祭(11)

 馬車の左右の扉を蹴破ろうとしているバンッ、バンッという音が響く。さらに窓も全て割られてしまう。その割れた窓から手を伸ばし、扉の鍵を開けようとする者がいることに気付いた父親が、慌てて剣を振り下ろす。


「ぎゃあ」という悲鳴が聞こえ、血を跳び散らしながら、手が引っ込む。


「どうやら多勢に無勢のようだね、マリナ」


 そう言って父親が額の汗を拭う。


「ここがまだ帝都の中心部だったら、帝都警備隊もいる。だが我々は今、帝都のはずれを馬車で走っていた。帝都警備隊もいない、墓地や川があるような何もないに等しい場所。襲撃するにはもってこ……」


 まさにその時、窓があった場所から何かが飛んできた。


「マリナ、危ない!」


 父親が咄嗟に庇ってくれたが、それは馬車の床に落ちると、ガシャーンと割れ、炎がぼわっと広がる。


「まさかオイルランプを投げ入れるとは!」


 火を使い、馬車から私と父親を炙り出そうとしていることが伝わってくる。


「こんなひどいやり方をするなんて、まともじゃないぞ。マチルダン男爵が雇った私兵は、寄せ集めの兵というより、ならず者なのかもしれない」

「お父様、煙が……」


 窓はすべて割られている。よって煙が蔓延する馬車に閉じ込められているわけではない。ただ、窓があった場所に向け、煙がどんどん流れていく。

 同時に。

 馬車の床はパチパチと燃えている。このまま馬車の中にいるわけにはいかなかった。


「仕方ない。父さんが先に出るから、マリナは後に続きなさい」

「でも外に出たら敵が待ち構えているかもしれないですわ、お父様」

「だがここで焼死するわけにはいかない。父さんは母さんに、なんとしてでも会いたい」


 父親の言葉にハッとする。


 少し前まで父親は疲れ切った表情をしていた。だが母親に……妻に会いに行くと決意することで、気力を取り戻してくれたのだ。そして今は妻に会うため、生きたいと強く願っている。そんな父親の様子を見たら、私だって思ってしまう。


(私もアトラス王太子に会いたい。まだ彼とは話が終わっていないのだから。こんなところで死ぬわけには行かないわ……!)


「お父様、馬車の外に出ましょう」

「ああ。マリナのことは父さんが必ず守る」


 こうして父親と二人、慎重に馬車から降り、現状を理解することになる。


(予想はしていたけれど、こんなに敵がいるなんて……!)


 ローグ卿も兄も、他の騎士も、まさに一騎当千で戦っているが、私たちは完全に取り囲まれている。もはやいきなり戦場のど真ん中にやってきてしまったかのようだ。


(マチルダン男爵は、娘とベネディクト第二皇子を救い出すため、金に糸目を付けなかったのね。これだけの私兵を集めるなんて……)


 皇宮を脱出できたことにも納得せざるを得ない人数だった。


「いたぞ、お前たちだな、アシュトン元公爵とその娘」


 敵はすぐに父親と私に気付き、こちらへと向かって来た。父親は私を馬車と自身の背に庇うようにして、剣を構える。


 母親に……妻に会いたいと願うことで、気力は回復した父親だった。しかし肉体の疲れはまだ残っている。その状態で剣を構えているのだけど……。


 自身の慣れた剣ではない。さらに体力も落ちている。もし平時であれば、父親が軽々と持てただろう剣。しかしは今は両手でグリップをしっかり握り、少し腕を震わせて構えている状況だった。


 敵はならず者であっても剣の扱いには慣れ、体力はまだ残っている。なんにしろ数が多いのだ。


(これではお父様に勝ち目はないわ……)


「お父様、少しお待ちください!」


 そっと父親の肩に手を触れ、私は一歩前に出る。


「ベネディクト第二皇子。私たちはこれだけの人数しかいないのに。大勢に隠れ、様子見なのかしら? やっぱりあなた、チキンね」


 私はアトラス王太子や兄のように演説慣れしていないし、大声を上げることが得意と言うわけではない。それでも秘密の通路で必要となる、難曲を歌える技巧は持ち合わせている。それをうまく生かし、この状況下で、少しでも通るような声で呼びかけることにしたのだ。


 ベネディクトのプライドを刺激するようなこの言葉で彼が動く。何よりも名誉を重んじる皇家の一人。彼が前に出てきたら……。


 兄かローグ卿がベネディクトに一矢報いることができれば、この状況は打破できると思う。


 ベネディクトは敵の総大将というわけではないが、彼が討たれれば動揺が起きる。こんなところでもたついているわけにはいかないと、寄せ集めの私兵が勝手な行動を始める可能性もあった。


(すぐに叩けると思ったけれど、ローグ卿も兄も強い。なかなか倒せず、敵だって焦り始めているはずよ。その状況で依頼人の一人が命を落とすことがあれば……混乱する)


 心臓がバクバクと鼓動している。


 挑発に乗らない可能性もあるのだ。もしくはこの場にベネディクトがいない懸念もあった。


 だが……。


「裏切り者の悪女のくせに、この期に及んで人のことを蔑むようなことを口にして……。貴様、死にたいのか!?」


 ダークブラウンの髪に翡翠色の瞳、スモークブルーのゆったりした商人のようなチュニックを着たベネディクトが、大勢の兵の間から姿を現わした。しかも殺すつもりで襲撃しているのに、今更なセリフを吐きながら。


(お兄様、ローグ卿、今がチャンスです。ベネディクト第二皇子を討ち取ってください……!)

お読みいただきありがとうございます!

絶対に続きが気になるやつですよね!

分かっています、読者様!

今日は特別にもう1話更新します!

次話は20時頃公開予定です。

お楽しみにお待ちくださいませ〜

応援もぜひよろしくお願いします☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●じれじれの両片想い●
バナークリックORタップで目次ページ
陛下は悪役令嬢をご所望です
『陛下は悪役令嬢をご所望です』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ