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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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帝国祭(9)

「お兄様、第二皇子とマチルダン男爵親子は見つかるでしょうか?」

「きっと見つかるさ。アトラス王太子殿下は専属皇宮騎士の報告を聞いても、実に落ち着いていた。彼が指揮を執り、そして四人の辺境伯も協力するんだ。大丈夫だよ」


 兄に励まされ、私は馬車から降りることにした。


 そう、今はアトラス王太子とクウとは別行動。私は兄と共に鉄の監獄にやって来ていたのだ。


「お待ちしていました、アシュトン嬢。お初にお目にかかります、アシュトン殿。アトラス王太子殿下直属の近衛騎士隊長ローグと申します」


 左眼に眼帯(アイパッチ)のローグ卿が、快活な笑顔で挨拶してくれる。兄は元騎士団の副団長。ローグ卿とは何か通じるものがあるのだろう。二人はがっちり握手している。


「既に皇帝陛下の退位の件、彼の罪について、ここまで伝わっています。よって鉄の監獄も、私の部下と東の辺境伯の兵により、獄長から看守まで指揮下に置くことが出来ました。アシュトン氏も既に牢屋を出て、身支度が終わったところ。このまま応接室へ案内しましょう」


 ローグ卿の言葉に一気に気持ちが高まる。兄と目を合わせ、そこはもう気持ちは一つ。お父様に会えることの喜びしかない。


「ありがとうございます、ローグ卿。ぜひ、父上の所へ、ご案内頂けないでしょうか?」


 兄が答え、そのまま応接室へ案内されると──。


「「お父様……!」」


 兄と共に声が揃ったが、その姿を見ると涙が込み上げる。


 父親は最後に見た時から別人になっていた。頰がこけ、髪の艶はなくなり、肌の血色も悪い。目の下にはクマができ、笑顔だけど、力強さはなかった。


 爵位を剥奪されただけでも、心に深いダメージを負っている。先祖代々、親族一同に顔向けできないと、その心労は計り知れない。


 そんな時、支えてくれるはずの家族とは離れ離れ。妻や子供たちのことだって、心配だ。その上での牢屋での日々。もし貴族として収監されたら食事も部屋もそれなりのものだったはず。しかし父親は元公爵として牢屋に入ることになった。


 食事は活力を与えてくれるような肉なんて出してもらえない。堅いパンと薄味の具がほぼないようなスープ、腐りかけの果物のような食事では、気力は削がれるだけだろう。


 その上で、私が侯爵のところへ嫁ぐ途中で賊に襲われ死亡したとの話を聞かされたはず。自分の子供が亡くなった。親より先に逝くなんてと、どれだけ悲しんだことか。もはや生きることを苦痛に感じ始め、無気力になっていた可能性もある。


 ところが私は生きていて、帝国の不正が暴かれ、皇帝は退位。デセダリア帝国は終焉の時を迎え、釈放されると分かった時。父親としては混乱しかなかっただろう。それでも言われるまま、牢屋を出て、身支度を整え、半信半疑で応接室で待っていた。そしてようやく、対面となったのだ。


「……二人とも、本当にお前たちなのか」

「父上、そうです。ジョセフですよ。北の辺境伯の助けを経て、帝都へ戻って来たのです!」

「お父様、賊の襲撃はフェイクです。セントリア王国へ向かうため、偽装したものでした!」


 父親は「そうか、そうだったのか」と涙を流す。

 それを見た兄と私も涙がこぼれる。


「ジョセフ、マリナ。よかった、二人とも、無事で……!」

「父上!」「お父様」


 三人で抱き合い、そこに生きてお互いが存在していることを確認しあう。


 兄の力強い腕に対し、父親の腕の力は弱々しい。騎士団の副団長を兄をはしていたのだ。腕の力が強いのは当然だと思う。


(お兄様が騎士であることを加味しても、お父様のこの弱々しさは……)


 皇帝陛下、第二皇子、マチルダン親子への怒りが沸々と湧き上がる。


「父上。母上を迎えに行きましょう」


 兄の言葉に父親はハッとした表情になる。


「マリーは……マリーは無事なのか!」

「はい。修道院で健康かつ清貧に過ごしていると聞いています。そちらにもアトラス王太子殿下の部下がいらっしゃるので、ちゃんと保護されているはずです」


 兄の言葉に父親は「アトラス王太子殿下……。彼のことを詳しく聞きたい」と言い、その濃紺の瞳に少しずつ強さがよみがえる。そして――。


「マリーを助けに行こう」


(自分が守るべき存在、妻のことを認識することで、父親の目に気力が戻って来てくれたわ!)


「ええ、そうしましょう、父上。馬車の中でアトラス王太子殿下のことも詳しく話します。それに今回、殿下も大活躍でしたが、マリナもとても頑張ったのです。その件も本人から聞かせてもらいましょう」

「まあ、お兄様! 私はそんな大したことはしていないのに」


 すると父親が笑顔になる。


「マリナ。お前はセントリア王国に向かったようだが、それは簡単なことではないはずだ。何か策を案じたのだろう? 父さんに聞かせて欲しい」

「! 分かりました。では出発しましょう、お父様、お兄様!」


 こうして父親との再会を果たした兄と私は、積もる話は移動する馬車の中で行うことにして、母親のいる修道院を目指した。

お読みいただきありがとうございます!

弱っているお父様を描写する時は筆者もうるうるでした。

オンタイムで読了いただいた読者様

ゆっくりお休みくださいませ~

次話は明日の12時半〜14時頃に公開予定です!

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