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婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


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皇宮へ(3-6)

 もう最悪な状況だった。

 私は手首を拘束され、目隠しされ、口に布をかまされていた。しかも露出の際どいドレスまで着せられている。さらにベネディクトはいろいろと妄想し、やる気満々になっているのだ。


 アトラス王太子たちが無事、皇宮までたどり着けたのか。もう到着しているのか、まだ秘密の通路にいるのか、それさえも不明。


 つまり彼らの助けは期待できないし、私が生きているとは思っていない可能性もある。そもそもベネディクトの部屋に連れ込まれているなんて……想像できないだろう。


「一度目は目隠しありにしよう。二度目は外してあげるよ」


(この盛りの付いた第二皇子、二度は確実にするつもりでいるの!?)


 ヒロインであるマチルダン男爵令嬢とよろしくやっていると思ったのだけど。


(そんなに欲求不満なの!?)


「じゃあマリナ、始めようか」


(始めるわけがない!)


 だがベッドがミシッと軋み、ベネディクトが近づくことを感じた。


「うううううっ!」


 ベネディクトが足首を掴んだ瞬間。

 もう本能だった。

 相手が皇家だろうと関係ない。

 不快なのだ。触れられたくなかった。


(離して! この変態鬼畜野郎!)


 思いっきり足を動かした結果。

 いろいろなところにクリティカルヒットしたようだ。ベネディクトは情けない悲鳴を上げ、私の足から手を離した。


「マリナ、ひどいじゃないか! 鼻血が……鼻血が出た」


 どうやら一撃目は顔を直撃したようだ。


「それに僕の大切な場所を蹴るなんて……!」


 そこは申し訳ないと思うけれど、こちらは目隠しもされているのだ。


(仕方ないと思います!)


「足を……ベッドの四柱に縛りつけるか……」


 さらに状況が悪化すると思ったその時。

 バンッとものすごい音がする。


「貴様、第二皇子である僕の寝室に急に踏み入るとは何事だ!? どこの所属だ!?」

「第二皇子発見。確保」

「な、なんなんだお前ら」


 ドタバタする様子に、「もしかして!」と期待が高まる。アトラス王太子たちが到着し、皇宮の制圧を行っているのではないかと。


「ううんっ!」


 いきなり乱暴に肩を掴まれ、上半身を起こすことになった。


(目隠しをされているから、何が起きているのかさっぱり分からないわ!)


「近づくな。お前たち、僕に手を出せば、この女を殺す! 首謀者は誰だ!? そいつをここへ連れて来い!」


 ◇


 心臓がバクバクしている。


 ベネディクトの頭の中は、あのことしか考えていないのかと思った。咄嗟に寝室に踏み込まれ、慌てふためくと思ったら、そうではない。


(私を人質にとり、交渉を持ち掛けるなんて……)


 寝込みを襲われたわけではないから、冷静に対処出来た……のかもしれない。だが腐ってもヒロインの攻略対象。普段の脳内はあのことばかりなのかもしれない。しかしいざとなったら第二皇子として、最善の行動をとれるのかもしれなかった。


「あいつら…… 専属皇宮騎士の隊服を着ていたが、敵のスパイだったんだ。ここ最近、専属皇宮騎士の入れ替えが多いと思っていたけれど……。まんまと敵のスパイを皇宮に引き入れるなんて……」


 ベネディクトはまだ鼻血が出ているようで、鼻を啜りながら私の肩に腕を回した状態で、分析を始めた。


「というか……マリナも隊服を着ていたな? これは偶然なのか?」


 私は話せないし、ここは無反応を決め込む。


「まさかマリナが敵を手引き……そんなわけはないか。君は賢い。皇宮に敵を引き入れるような愚鈍な人間ではないはず。第一、君の両親も兄も帝国にいるんだ。もし僕たちを裏切るようなことをしたら、すぐに三人の命は消える。聡明な君が、そんなことをするわけがない」


 そう言ってベネディクトが肩から回した腕に力を込めるので、私は嫌悪で鳥肌が立つ。そしてアトラス王太子たちは皇宮を制圧しつつあると思うが、正確な状況が分からない。そのため両親や兄の身に何かあったら……と不安にもなる。


「……しかしマリナ、僕を訪ねたいなら事前に連絡をくれればいいのに。専属皇宮騎士に化けて皇宮に忍び込むなんて……。着ていた専属皇宮騎士の隊服。あれは本物ではない。似せて仕立てものなのだろう? マリナは皇宮で暮らしていたから、専属皇宮騎士を目にすることも多かった。実に上手に出来ていたと思うよ」


 ベネディクトは……アトラス王太子たちに交渉を持ち掛けたと思ったら、偽物の隊服を仕立てたと、的外れなことを言い出す。あれは正真正銘、専属皇宮騎士の隊服だった。なぜ偽物と思うのか。


(もはや鋭いのか抜けているのか、よく分からなくなるわ……)


「しかし……なぜ水路にいたんだ、マリナ?」


 これにギクリとなりそうになり、身を固くする。


「……もしかしてマリナ。君、あれを使ったのか」


 心臓がドクンと大きな音を立てた。


「秘密の通路。あの通路は皇宮から帝都へ脱出するために使うはずだ。普通は外から中へ入ることはできない。だが皇族なら……そうだ。皇族教育を受けていたら、あの通路を使い、帝都から皇宮へ入ることができる。あの通路を使ったのか!?」


 そこで沈黙ができ、心臓が信じられないほど不穏にドクドクといっている。


「皇家の直系には秘密の通路について、より詳細に教えられている。そうだ。帝都から皇宮へ入るのに、秘密の通路を使うと、水路に出ることになるんだ。皇家の人間だけが使える、分岐点での真ん中のルートを使うと」


 そこで言葉を切り、ベネディクトが尋ねる。


「マリナはもしかしてそのルートから来たのか……? 水路で気絶した状態で見つかった……そうだ、間違いない。秘密の通路を使っ……」


 目隠しをされていても、ベネディクトがハッとした様子が伝わってくる。


「秘密の通路から皇宮へやって来て、なぜ専属皇宮騎士の隊服を着ている必要がある? メイドや侍女の装いの方が怪しまれないじゃないか。女なのだし、男装をする必要はない。だがあえて専属皇宮騎士の隊服を着ていたなら……マリナ、貴様、帝国を裏切ったのか!?」


 抜けていると思ったベネディクトだが、やはり腐っても第二皇子であり、ヒロインの攻略対象。バレてしまった。


(このままでは私、ベネディクトに殺されるかもしれない)


 血の気が引いた時、扉が開く音が聞こえる。


「お待たせしました。ベネディクト第二皇子。わたしがアトラス・ロイ・セントリア、セントリア王国の王太子です」


(え、アトラス王太子なの……?)

お読みいただきありがとうございます!

いつも温かい応援に心から感謝です(うるうる)

ささやかですが感謝を込めて

今晩は増量更新(22時頃)をお届けします!

お時間が合わない方は

明日のお昼にまたお会いしましょう☆彡

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