表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢はざまぁをきっちりすることにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/76

皇宮へ(3-1)

 アトラス王太子と別れ、真ん中の通路へと向かう。


 これまで大勢だったのに、急に一人になり、なんだかとても心細くなる。


(こんなふうに暗い道を一人で進むなんて……)


 この世界に転生してから、一人で行動することは、ほぼ一度もなかった。第二皇子であるベネディクトに婚約破棄され、家族は離散、たった一人になるかと思ったけれど……。そこには侍女のレニーがいてくれた。


(あ、でも……。ヴィレミナ絨毯に包まれ、アトラス王太子の前に転がり出るまでは一人だったわ。薄暗い中で一人で……)


 だがあの時はヴィレミナ絨毯に包まれていたのだ。何かに包まれることで、守られている気持ちになっていた。


 でも今は違う。本当に一人だった。天井が低く、横幅もそこまでない、両サイドが岩壁の道を、一人で黙々と進んでいる。


 人間、生まれる時も死ぬ時も一人と言うけれど、まさにそれを実感していた。


 この秘密の通路のギミックについて、前世記憶を思い出しても、その詳細は描かれていない。ゲームの進行に絡むことはほぼなかった。よってその存在から正しい経路など、全て皇族教育で知ったことばかり。ゆえに本当に、この後の自分の運命が分からない。


 ただ、いろいろ考えると、アトラス王太子たちが進む道を塞ぐ岩がなくなったとしても。それは一時のこと。私が後を追っても、きっと道はまた岩で塞がれている。


(ううん。そもそもその道に行けるかどうかも分からない。詠唱を終えた瞬間、私は……死ぬかもしれないのだから)


 死を自覚したのは、この秘密の通路を皇宮への侵入のために使うと決めた時からだ。


 本来、リオンヌ侯爵の所へ嫁がされ、身も心もボロボロになるのが乙女ゲーム『恋が花咲く時』で定められた悪役令嬢の末路。そこに反し、策を巡らせ、セントリア王国へ逃げ延びたのだ。そんなイレギュラーな行動をしていれば、どの道、ゲームの世界の抑止の力で私は……遅かれ早かれバッドエンドを迎えると思っていた。


 そんな意味ではこの秘密の通路で悪役令嬢が命を落とすのは……相応しい末路だろう。


 ただ、悪役令嬢の死は犬死にはならない。アトラス王太子は必ず、両親と兄を助けてくれる。帝国は滅びても、多くの帝国民がセントリア王国の一員となり、幸せな人生を送れるはずだ。


 私の犠牲で多くが幸せになるなら、それで本望。それに家族や私を貶めた帝国と皇家と第二皇子、ヒロインであるマチルダン男爵令嬢とその父親には、盛大なざまぁができるんだから。


 そう、ついさっきまでは思っていた。きっぱりこの乙女ゲームでの人生を清算し、来世はどこに転生できるか……なんて思っていたのに。


 今となっては未練たっぷりになっている。それはアトラス王太子があんなことを言うからだ。


 ――『わたしはアシュトン嬢、君にプロポーズするつもりだった』


 レイラ姫との婚約を解消するなんて……。

 あんなに仲睦まじい二人だったのに。


 本来相思相愛だった二人を引き裂くなんて。

 それはマチルダン男爵令嬢(ヒロイン)がすることと同じでは!?


 プロポーズされる。それは気持ちとしては嬉しい。

 だって私も……アトラス王太子に心惹かれていたから。


 でも彼には婚約者がいる。

 レイラ姫という美しく優しい婚約者が。

 彼女を悲しませることはしたくない。


 だから……。


 そこで彼がつけてくれたペンダントをぎゅっと握りしめる。ペンダントトップは剣に絡みつくドラゴンだ。


 ――『必ず、もう一度。再会を……』


(そうよ。再会できたら、目を覚まして!と言わなきゃ。レイラ姫との婚約解消なんて、愚かな選択をしてはいけないと、伝えないといけないわね)


 そこで私の歩みは止まる。なぜなら岩壁に人工的に彫られた十字架が見えたからだ。


(ここね。ここで立ち止まり、歌えということ)


 私は右手の岩壁と向き合うようにして立ち、岩肌が剥き出しの地面に持っていたランタンを置く。


 少しだけ発生練習をして、何度か深呼吸を繰り返す。


(やるわよ。みんなに進んでもらうために。両親や兄を助けてもらうためにも。そして圧政から救うべき帝国民のために、歌うわ!)


 頭の中でメロディを浮かべ、歌い出す。


 いきなり高音からのスタート。そこからは音階の素早い昇降、トリル、ファルセット、ミックスボイスの怒涛のラッシュとなる。


 息継ぎのコントロールも本当に難しい。舌の動きや唇の動きにも気を配りながら歌い続ける。時間としては三分足らずだが、全力の三分だ。


 それは……まるで命を燃焼させる三分かのよう。

 曲の終わりが近づくと、鼓動も早くなる。


 歌い終わる先に待つのは、死の静寂か。

 それとも――。


「!」


 遠くから拍手が聞こえた。

 私は後ろを振り返り、左の岩壁に手を伸ばす。

 この壁の向こうに、アトラス王太子やみんながいる。


 そう思うと、涙がホロリとこぼれ落ちた。

 すると。


 ゴトリという音がする。


「……?」


 触れた岩壁の岩が、目の前でスーッと後退していく。


「!?」


 腕一本が入るぐらいの横穴が目の前に現れた。急いでランタンで中を照らすと、そこには牛の鼻についている鼻輪のような、ドアノッカーが見えている。


 手を入れるとその輪を掴むことができた。鉄製のその輪を掴むとジャラリと音がする。どうやら鎖とつながっているようだ。


(多分、これは引くのだと思うわ)


 そこで思いっきり引っ張ると、鎖がどんどん伸び、そしてガクンと急に動かなくなる。だが遠くで何かが軋んだり、ギギギギという音がかすかに聞こえていたが。


 ズンという音ともに振動が起きた。


 そこで一瞬、歓声のような声も聞こえた気がする。


(道を塞ぐ岩がなくなり、みんな先に勧めたに違いないわ!)


 思わず嬉しくなった時。地響きにも似た音が聞こえてきた。


 ゴゴゴゴゴ……という音がすると思った次の瞬間。

お読みいただきありがとうございます!

オンタイムで読了の読者様

ゆっくりお休みくださいね~

次話は明日の12時半〜14時頃に公開予定です!

ブックマーク登録して、ぜひお待ちくださいませ☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【一番星キラリの作品を紹介】
作品数が多いため、最新作を中心にバナーを並べています(2025年12月の大掃除で・笑)。 バナーがない作品は、作者マイページタイトルで検索でご覧くださいませ☆彡

●紙書籍&電子のコミカライズ化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件~辺境伯のお父様は娘が心配です~ 』

●これぞ究極のざまぁ!?●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢は死ぬことにした
250万PV突破『悪役令嬢は死ぬことにした』

●出版社特設サイトはコチラ●
バナークリックORタップで出版社特設ページへ
婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!
80ページが試し読みできる特設サイトへ
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生! でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』


●溺愛は求めていませんよ?●
バナークリックORタップで目次ページ
平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!
『平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!』

●章ごとに読み切り!●
バナークリックORタップで目次ページ
ドアマット悪役令嬢~ドン底まで落ちたらハピエンでした!~
『ドアマット悪役令嬢はざまぁと断罪回避を逆境の中、成功させる~私はいませんでした~』

●宿敵の皇太子をベッドに押し倒し――●
バナークリックORタップで目次ページ
宿敵の純潔を奪いました
『宿敵の純潔を奪いました』

●商業化決定●
バナークリックORタップで目次ページ
悪役令嬢はやられる前にやることにした
『悪役令嬢はやられる前にやることにした』

●じれじれの両片想い●
バナークリックORタップで目次ページ
陛下は悪役令嬢をご所望です
『陛下は悪役令嬢をご所望です』

●コミカライズ化も決定●
バナークリックORタップで書報ページへ
断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない
ノベライズは発売中!電子書籍限定書き下ろし付き
『断罪後の悪役令嬢は、冷徹な騎士団長様の溺愛に気づけない』


●妹の代わりに嫁いだ私は……●
バナークリックORタップで目次ページ
私の白い結婚
『私の白い結婚』

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ