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現代ダンジョン・オーバーキル!  作者: フェフオウフコポォ


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第76話 死を求める塔


『クソみたいな塔に痛い目をみせてやる』と一致団結した俺たち。


ではあるのだが……


「なぁ偽物の俺さんよう」


問いかけると、偽物の俺は『みなまで言うな』とばかりに首を振ったので、俺も汲んで黙る。

セリフィアは、本物も偽物も、ただ黙って俺たちを待っている。


俺も待つ。

――が、黙ったままだ。


「いや出口は? どこよ?」

「いや知らんて。」

「いやいやいや、どう考えても鍵になるのは偽物のお前でしょうが。」


偽物の俺が動かないので、ついツッコミを入れてしまう。

この部屋。出入口が無いのだ。

階段もなにも見当たらない。


困った顔を浮かべる偽物の俺。


「やっぱり、そうだよなぁ……でも困ったことに俺の中にも正解がないんよ……」


俺って困った時そんな顔をするんだなぁ……などと、どうでも良いことを思ってしまう。

だが、どうやら偽物の俺には出口を出す方法は分からないようだ。


――ということは?


俺たちが同時に顔を向ける。


「「セリフィア先生! お願いします!」」


俺たちの行動に、セリフィア達が同時に微笑んだ。

本物のセリフィアと偽物のセリフィアが視線を交わす。


「仮定ですが、塔の出口出現の鍵となるのは『偽物の死』でしょうか。」

「恐らく、そうでしょう。死亡がトリガーとなり出口が現れる。」


「物理的に出口を作って進むというのは不可能ですよね。」

「ええ。試さない方が良いでしょう。」


「『死』の定義が『役割の終了』などであるなら、もう出口は出現しているはずですよね?」

「その通りです。故に『死』の置き換えなどは無意味でしょう。」


2人のセリフィアが、そろって苦い表情に変わる。


「では、心拍や呼吸の停止など物理的な死亡状態を作る必要がありそうですね。」

「あまり好ましくはないですが……ある意味で貴重な実験が出来るともいえます。」

「そうね……マスターの為になる。貴重な機会です。」

「ええ。マスターの為に、マスターを……」


話の流れを見守っていたが、なんとなく考えていることを察してしまう。

偽物の俺が、しっかりと挙手をしているので、俺が『どうぞどうぞ』と促す。


「ひっっじょーに! いやな予感がします! なんか! いやなヨカンが! しますっ!」


せやな。

俺、本物で良かったわ。


デリカシー無いって言われたから、お口チャックや。

俺は俺から学んだ。


冷や汗を滲ませる偽物の俺の肩に手を乗せて慰めておく。

二人のセリフィアが偽物に向かって微笑んだ。


「ご安心くださいマスター。痛くないですよ。」

「ええ。そうです。痛みなど感じる暇も無いはずです。」

「「えぇ……」」」


完全にヤル方向が決まっている気がして、本物の俺も声が漏れる。


「現状、思いついている案をご説明いたしますね。」

「偽物のマスターには大変申し訳ございませんが『御霊の首飾り』など、復活系のアクセサリを装備いただいて、一度攻撃を受けていただくことになります。」

「…………やっぱりや。やっぱりやっ!」


ドンマイ。と言いかけたので、お口チャック継続。

肩をポンポンと叩いて慰めておく。


「ちょっとウザいからやめてもろて!」

「ごめん!」


肩ポンポンも強めの拒否された。悲しい。


でも、気持ちは分かる。

多分、今、俺が何をしても神経を逆なで状態や。もう大人しくしとこ。


偽物の俺が、絶望に打ちひしがれながら、声を絞り出す。


「その攻撃は、もしかしなくても、水着ルミナですか?」

「……わぁ」


黙っておこうと思ったのに、思わず声が漏れた。

俺がアクセサリ外して、あの必殺技受けるの? 考えただけで恐ろしいが過ぎるんやが?


あ~……でも、あれなら、確かに『痛くない』がワンチャンある気がする。

スケルトンキングの骨が残らないレベルだもんな。


んで、さらに復活系アクセサリが、そんな攻撃に対して有効なのかの確認が出来るのは大きい。

実際、即死級の攻撃に対して対応できるようになるってことだもんな。

爆弾が爆発して、その中心地に居たとしても生き延びられるかの確認が出来る。



俺が、こう考えたように

偽物の俺も、同じ結論にたどり着いたようで渋い顔をしている。


だが、多分俺なら、受け入れるな。

だって――


「しょうがないもんな……他に方法無さそうだし……」


嫌だけど仕方ない。


そして最悪の事態を考えれば、どちらにしろ至る結論が同じなんだよな。

復活の可能性があるだけ、まだマシだ。


偽物の俺がジト目で俺を見てきた。


なにも言えない。

なにもできないので、黙っておく。


偽物の俺の大きなため息が聞こえた。


「よし! そうと決まればヤルぞ! さっさとやるぞ! もうやってくれ!」

「マスター流石です!」

「マスター立派です!」


2人のセリフィアが褒めている。

もう、そんなん。俺も褒めるわ。俺、立派だよ! 凄いよ!


腹が決まった偽物の俺が装備を変え、偽物のセリフィアを編成から外して消したので、俺は水着ルミナを編成し、召喚する。


「ご主人さまー! 編成してく……えっ? ぇえっ? ご主人様が……2人?」


ニコニコ笑顔で出てきた水着ルミナが、場を見回して一瞬で混乱に陥る。

こうなることを察していたセリフィアが声をかけた。


「ルミナさん。ソックリですが、あちらのご主人様は偽物です。そういうダンジョンに来ています。」

「えぇ……? 趣味わるぅい……」


「「ほんと性格悪いダンジョンよな」」


俺たちの声が重複し、ルミナの目が俺と偽物の間を行ったり来たりする。


「ルミナさんには、必殺技を偽物に放っていただきます。」

「えぇっ!? そんなのイヤよっ! できないわっ!」


両手を胸の前で振って、必死に拒んでいる。

ルミナが俺を攻撃したくないということにホっとする自分がいた。


ここからは本物の俺の仕事だろう。


ルミナの両肩に手を置き、まっすぐ顔を見つめる。


……やっぱり美少女やなぁ。

肩ちいさいなぁ。


イカンイカン。


「ルミナ……酷なことをお願いしているのは分かっている。

でも、このダンジョンを攻略するために、どうしても必要なんだ。偽物の俺も納得してる。圧倒的な力を持つルミナにしか頼めないことなんだ。」


ルミナは唇を噛み、視線を揺らす。


「……でも……ご主人様にそっくりなんだよ? そんな人を攻撃するなんて……」


俺は深く息を吐き、言葉を重ねる。


「分かってる。俺だって嫌だ。けど、復活アクセサリを装備してるって前提もあるんだ。偽物の俺も覚悟してる。だから……ルミナにしか頼めないんだ。」


ルミナの瞳が揺れる。


「……ほんとに、いいの?」

「いいんだ。俺が保証する。」


沈黙。


「ご主人様の命令なら……でも、凄く嫌なの! だから、ご褒美ちょうだい!」

「ご褒美?」


「うん。こんな酷いことするんだもん! 終わったら、絶対に褒めて、甘やかして、ちゃんとご褒美ちょうだいね!」


俺は思いがけない可愛いおねだりに、微笑みがこぼれてしまう。


「分かった。約束する。

ルミナがやってくれたら、全力で褒めるし、ご褒美も用意する。」


ルミナはようやく安心したように胸を張り、にっこり笑った。


「なら……やるわ。ご主人様のために!」



俺とルミナが偽物の俺に向き直る。

チベットスナギツネの顔になった、偽物の俺に。


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― 新着の感想 ―
まぁ自分を殺るためにいちゃつかれたらチベスナ顔にもなるよね…
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