第7話 オッサンは負けず嫌いだったりする
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「……ふぅ。」
砂モグラ、ダメージチャレンジは6匹目で、ようやくある程度納得できる数字を叩き出すことができた。
最初に話したオッサンは、きっと鉈を使っていたからこそ75のダメージが出たに違いない。後、慣れの差ね。
最初こそ55ダメージしか出せなかったけれど、わずか6匹目にして69ダメージ。
ピッケルじゃなく切れ味のある鉈であれば、きっと79ダメージくらい出たに違いない。
ピッケルの攻撃は点でダメージが高い可能性などない。きっと。
「勝ったな。うん。」
一人、勝利の余韻を噛みしめる。
砂モグラ狩りも一区切りついたことで、休憩がてら改めて現状を整理しよう。
ぼーっと海を眺め思考する。
それにしてもダメージエフェクトか~……
正直面白い。
男だったらパンチングマシーンの一つや二つ、やったことくらいはあると思うし、数字の勝ち負けにこだわったこともあるはずだ。
あのゲーム性が日常に転がり込んできた。それが俺の得た能力。
これまでの日常生活の中でダメージエフェクトを見ることはなかったから、ダンジョンの中に限定される能力かもしれないが、仲間内の点数遊びの審判くらいの遊びが出来そうだ。
うん……エンタメ性があって面白いじゃないか。
「ん? そういえば……」
初見の印象は『ソシャゲのダメージエフェクト』。
なんだかんだ9年もの長きにわたってプレイし続けているソシャゲ。見すぎていて、勝手にそう思っただけかもしれないが似ている気がする。
スマホを取り出し、ソシャゲを開く。
「……んんっ!?」
家や会社でこのゲームをプレイすると、目がチカチカしてゲーム画面自体が光り見えにくように感じていた。
だが今日、ダンジョン内で初めてゲームをプレイして、はっきりと違いがあったことが分かった。
スマホの画面の上に立体的に画面が出てきているように見えるのだ。
「いや、ステータスオープンかよ!」
思わず声が出る。
ファンタジー小説で定番。目の前に謎の立体視が出現する魔法の呪文。『ステータスオープン』
俺に見えているのがソシャゲのプレイ画面だからHPなどは出てないからステータスオープンではない。
だが、言わずにはいられなかった。
ツッコミを入れたことで、少し冷静になる。
うん。ダンジョンの中と外で色々と違うことがある。コレは確定だ。
そして俺の能力は『ダメージエフェクトが見える』だけではないのかもしれない。
もしかすると、このソシャゲが俺の能力に絡んでいる可能性が高い。
目の前に浮かぶ、俺だけが見る事ができるホーム画面。
プレイ情報は変わりない。
プレイヤーレベルは367。
中央にはお気に入りのキャラクターが表示されている……といっても、無料チケットガチャや詫び石ガチャで手に入れた最新のキャラクターを置いているだけだったりもする。
もちろん自分の中での最新キャラクターでしかなく、廃課金勢から見れば周回遅れの型落ちキャラだったりする。
「ん~……デイリークエスト消化の前に色々確認してみるか。」
プレイし慣れたソシャゲとはいえ、初めて見る状態ということもあり、違う箇所があるかもしれない。
他人には見えないだろう俺の目の前にしか表示されていないホーム画面。
その中で『キャラクター』ボタンをタップのように触れてみると、画面は見慣れたキャラ選択画面に切り替わる。
「……うん。キャラクター数はこんなもんだった気がする。」
レア度順に並ぶ顔アイコン。スクロールバーを下げていく。
正直800以上のキャラクターがいると正確な数字など覚えているワケがない。『こんな感じ!』としか覚えとらんわ。
ただし全員、最大レベルまで引き上げてあることだけは覚えている。
無駄に貯まりすぎている強化アイテムは全員のレベルを最大にしても、まだまだ使いきれないだけの数がある。
ただ最大レベル以上の強化、特殊アイテムを使用した第2強化、第3強化まで最大化してあるのは、新キャラだけ。
なにせインフレ激しいこのゲームは、新しいキャラクターになればなる程、アホみたいに強い。
そしてそのアホみたいな強さの新キャラを『限界突破』の上『更なる限界突破』させることで『兆越えダメージ』は出すことができるのだ。
ただ、流石にその強化の為に必要なアイテムの入手は無課金勢には渋く、そんなに数が手に入らない為、新しいキャラクターだけに絞って強化している。
……なお、このゲームは100%美少女しかいないゲームで、キャラクターには愛情度なる数値設定が存在する。
当然ながら好みのキャラクターの愛情度はMAXにまで上げてあることは言うまでもなかろう。
「キャラクターは全部いるっぽいし、デイリー回してみるか」
使い慣れた流れでデイリークエスト消化の為のクエスト選択画面へ移ってゆく。
「……んんん?」
クエストの内容がオカシイ。
いつもなら、固定のクエストしか表示されないはずなのに、なぜか『砂浜のモンスター退治』が表示されているのだ。
「砂浜って……えぇ? もしかしなくてもココのコト?」
とりあえずクエストを進めてみようとして気が付く。
これまで組んであった固定パーティの編成が解除されているのだ。
「編成の組み直しすんのか? めんどうな……」
面倒とは言ったけれど、最大強化済みの新キャラ順に編成していけば大体オッケーだったりもする。
キャラクターを入手順にソート。トップ表示のキャラクター『ルミナ・ノワール 水着バージョン』を選択し、編成をタップする。
「確か……ルミナと相性の良い組み合わせがあったよな……」
「私と相性が良いのは、リリス・ルミエールですわ。ご主人様。」
「あ。そうそう編成してたのリリスだったわ……確かリリスも水着バージョンだった気がするのですが一体どちらさまのお声が聞こえたのでございますかぁっ!?」
余りに自然にかけられた声の方を振り向くと――そこには今しがた見たばかりのような漆黒のロングヘアーの美少女が立っていた。
しかも水着姿で。




