第59話 試験お疲れ様でした
「良かった~……」
ダンジョンの外に魔石を持ち出せてたー!
ダンジョン出口まで案内を終わって、無事に試験終了。
解散ってことでダンジョンの外に出る流れになるんだけれど、俺は出れても、セリフィアたちは外に出たとたんに消えてしまうので、出られない
『道具』から召喚した『槍の柄材』も、ダンジョン外に持ち出すと消えちゃうから、神代さんが『槍の柄材』をそのまま持って出ないように、一旦、持ち帰れた魔石の数だけ記録したいってことで、魔石をひとまとめにさせてもらった。
数の確認自体は並べてスマホで写真を撮っておけば、それでOK。すぐに終わる。
神代さんには諸々手伝ってくれたお礼として、拳大の黄色魔石を一つ渡しておいた。
並べた魔石を見ながら、俺が極魔石を中心に自分用のお土産を決め、その他を九重さんに渡す旨を伝えると、九重さんは写真を撮って運搬の為の人員手配をするってことで、2人は外に出た。
――2人が戻ってきたときに神代さんが魔石を持っていれば、魔石封印クエの報酬魔石は外に持ち出せることが確定する。
もし消えていれば誤魔化す所存……セリフィアがな!
セリフィアなら、きっと何とかしてくれる!
でも、ちゃんと持ち出しできてた。
良かった。
あとは、九重さんが手配した人たちが来て、運搬し終わるまで見守って終了。
一応、今回の試験のお礼など、九重さんと神代さんには丁寧に伝えておいた。
社会人経験が長すぎたせいで、なんとも既視感があり過ぎる、ありきたりな応酬にしかならなかったけれども。
だけど、流石のセリフィアさんよ。
混じって挨拶していたけど、どうやら九重さんの撮影していた動画データは元々共有させてもらう話をしていた模様。
封印クエで魔石大量獲得動画も『戦うスーツおじチャンネル』で発信しようか検討中と、九重さんに伝えていた。
そんな雑談をしていると時間もあっという間に過ぎ、運搬の人が到着。
九重さんたちが戻ってきてから40分ほどで到着だったので、結構早かったと思う。
魔石一つ一つを厳重にケースに入れて持ち出していったので、風呂敷の俺は少し格差を感じないでもなかった。
魔石の運び出しも終わったので、完全終了。
お疲れ様でした。
後日、試験結果は連絡をするとのことで、お二人とも帰っていった。
★ ☆ ★ ☆彡
で。
ダンジョンに俺たちだけになり、手元に残った魔石を確認する。
極魔石の頭サイズ2個と拳サイズ2個、黄色の拳サイズ2個。
俺の風呂敷梱包で、ベストがこれだった。
「そういえば、セリフィア、なんか検証したいとか言ってなかったっけ?」
「はい。マスター、この魔石って収納できたりはしませんか?」
……それは。
もっと早く言ってくれても良かったのでは?
いや、セリフィアが言わなかったのは、言わない方が良い理由があったのだろう。
それくらいセリフィアのことは信用も信頼もしている。
「なるほど……」
とりあえずスマホを起動し、ステータスオープンよろしくゲーム画面を開く。
道具なんかを召喚する場合は、道具の詳細に召喚ボタンがあり、召喚後は収納ボタンが有効化される。
極魔石の大、中、小サイズをそれぞれ見てみるが、収納ボタンが有効化されている気配はない。
「ちょっと試しに……」
ゲーム画面から極魔石(中)を召喚してみると、拳サイズの極魔石が現れた。
形、色味などはダンジョン産の物と、ほぼ変わらないような姿。
収納ボタンも有効化されていて、収納できる。
ダンジョン産の極魔石は反応しない。
「ダンジョン産はマスターの持っているアイテムとは違うようですね……」
「だね。」
ダンジョン産の極魔石は、どうにも俺のゲーム画面のアイテムと違い、収納はできないようだ。
「こうしてみれば良いのでは?」
「「え?」」
拳サイズ極魔石を手に持っていたルミナが、ゲーム画面に手を突っ込んだ。
そして引き抜いた手に極魔石は無かった。
「「え?」」
「えっ?」
俺とセリフィアの理解が、まったく追いつかない。
ルミナさん。なにしてんの?
ルミナは首をかしげながら、手のひらをじっと見つめている。
何も持っていない。
「「えぇっ!?」」
ルミナは何も持っていないその手を、もう一度ゲーム画面に突っ込んでみる。
引き出した手には何もない。
「……ご主人様……これって怒られるやつですか?」
「……いや、怒らないけど…………いや、怒ったほうが? ……いや、怒れない……」
「じゃあセーフですねっ!」
満面の笑みを浮かべるルミナ。
その笑顔が眩しすぎて、俺とセリフィアは何も言えなかった。
消えとるやんけ。極魔石。
アイテム欄を確認してみると、極魔石(中)の隣に――
『異極魔石(中)×1』が追加されていた。
追加されとるやんけ。極魔石。
『異』てなんやねん。
「これは……お手柄ですね。マスター……」
「だね……流石ルミナ。」
「きゃ、褒められちゃった。」
どうやらダンジョン産アイテムは収納が出来るようだ――異なる名前で。




