第53話 そのころ、当人は
スマホデトックスなう。
はい。セリフィアの指令により、俺。
今日は完全に電子機器オフ。
というか、スマホもタブレットも全部、彼女に没収されてるなう。
当のセリフィアはというと、洞窟ダンジョンの一角をSOHO――スモールオフィス風に整えて、バリキャリ顔で黙々と仕事中。
普段なら、彼女ひとりに労働を任せるなんて絶対しない。断じてしない。
俺も働く。いや、俺が働く。
だが、「私を信頼して、全てを任せていただけませんか?」なんて美少女に言われてしまえば――100%任せる男。それが俺だ!
なので今、俺は
「は~い。革命ね。」
「そんなぁーっ! ……むぅ、大富豪を舐めるニャ! 革命返しニャ!」
「ジョーカー2枚も使ったら……勝ち目が薄くなるのでは?」
「返さない方が勝てそうな気がしますね……」
俺は、美女と美少女、そして美女と美少女の5人で、大貧民をして遊んでいるというわけだ。
「うーん。眼福。」
最初の美女は、フェロモンムンムン系美女。
キャラエピでイケないことしてた、あのエチチ美女ことカリーナ・エルフェリス。
元気な美少女は、ネコミミが可愛いミリィ・ルルフィア。
格好はパジャマバージョン。寝る為の恰好してるのに一番元気な娘。
続く美女は、アイテムを増やしてくれた、しっとり豊満美女のミレイユ・ピースメンド。
今回はリゾートドレスバージョンで優雅に参戦。
そして、癒し系美少女のカグヤ・ミカヅキ。
彼女も、いつもの巫女衣装ではなく、ハロウィーン衣装。
普段見えるはずのない、隠されていた胸の谷間が見える衣装で、もうセクスィー。フゥー!
最後にオッサン。
俺である。
普通なら、こんな集団からは弾き飛ばされて然るべきオッサン。
百合の間に挟まれて消滅しろ枠だが――いやぁ、全員からの好感しか感じないから、居心地最高なんですよねぇ。うへへへへへへ。
こんな幸せあっていいんだろうか? いいんです!
「あぁ、楽しいなぁ……」
俺の漏れた本音を拾ったカリーナが、魔性の笑みを浮かべる。
「あらぁ、それではもっと楽しめるように……罰ゲームも入れていきましょうか。」
「えっ? 罰ゲーム?」
空気にピリっとした何かが走った。
「……残り、5枚。むむ……」
ミリィがカードを見つめながら、耳をぴくぴくさせる。
パジャマの萌え袖から覗く指先が、微妙にせわしなく動いている。
「私は9枚。全然ですね」
ミレイユが静かに告げる。
リゾートドレスの裾が揺れ、どこか大人の余裕を感じてしまう。
「わたくしも……9枚。いきなり罰ゲームは不公平です。ねぇご主人様?」
カグヤが呟き、俺に振る。
ハロウィーン衣装のスリットから覗く太ももが、眩しい。
「俺、だいひんみん! 1枚も切れてないけどオッケーだよ!」
俺は正直、どう転んでも面白い状況なので、どっちでも良いのだ。
「5枚ね……もう革命も返されて勝ち目はないけどね。ふふふ……まぁ、ただのゲームですから。ねぇ。」
カリーナがカードで口元を隠し、俺を見た。
その目は、何かを企んでいるようにも見える。一体何を企んでいるというのか。このエチチ美女め。
「いったいどんな罰ゲームなんだ……もう期待しかできない。」
「あらあら、うふふ。ナニを期待をしているのかしらね?」
クスクスと笑うカリーナ。
「まぁ、とりあえず試しですから、大した罰ゲームじゃありませんよ……そうね。勝者は、敗者の中から選んだ人に、耳元で甘ぁい言葉を囁いてもらうとか、どうかしら?」
……それは、状況的に俺が囁く役に選ばれる確率が高いのでは?
俺は……どちらかと言えば囁かれたい方なのだが?
うん? ……なんか罰ゲームな気がしてきた。
「なにか他に思いつく罰ゲームがあれば、それでも良いわよ? してほしい事……なぁんでも。」
「……なぁんでも?」
カリーナの妙に甘い言葉が、俺の脳を溶かしてる気がする。
「ミリィはご主人に膝枕してもらうニャ!」
ミリィが元気よく宣言すると、カリーナはふふふと笑った。
「それじゃあ罰ゲームは、勝者が内容を決めるということで……続きをしましょうか。面白くなってきたわ。」
微妙に真剣さが増した大貧民に、熱が灯り始めるのだった――
★ ☆ ★ ☆彡
「想定よりも動きが早いわね。良い流れ。」
ミリィを膝枕しながら、頭を撫でて満面の笑みを浮かべる男の姿を横目に見ながら、セリフィアは静かに頷いた。
期待通りの反応。
想定通りの流れ。
彼女の胸の内には、淡い満足感が広がっていた。
タブレットやPCにはメッセージが断続的に届き続けている。
だが、彼女の指が止まったのは――これまで反応がなかったスマホの着信履歴。
発信元番号を検索し、照合結果が表示され、セリフィアの目が細くなる。
『超常資源庁 第七特定資源群分析室』
一番、連絡を取りたかった相手。
「とても良い……さぁ、次の段階に進みましょうか。」
スマホを手に取り、着信のあった番号へ掛けなおす。
彼女の少し離れたところで――ミリィの笑い声と、男の困ったような声が響いた。
「ご主人、そこはくすぐったいニャー!」
「いや、ミリィ、もう膝が痺れ……って、ああっ!」
セリフィアは、そっと微笑む。
その笑みは、どこまでも穏やかだった




