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現代ダンジョン・オーバーキル!  作者: フェフオウフコポォ


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32/87

第32話 唸れ! 武器スキル!


セリフィアとのキャッキャウフフに一息ついて、カグヤを召喚する。


「また、お呼びいただけて嬉しいです……けど、セリフィアさん。距離が近くありませんか?」


俺の右腕にぴったりくっついているセリフィアを見て、カグヤが片眉を上げる。


「別にいいじゃないですか。マスターの、もう片方の腕は空いてますよ?」

「そ、そんな……はしたない……でも失礼します。」


少し顔を逸らしながら左腕の裾を、キュっと握ってくるカグヤ。

うん。やっぱり大和撫子は、この控えめな雰囲気がかわいい!


「カグヤさん。今日、マスターがしたいことは3つです。『封印モンスターの検証』『武器スキルの発動』そして『マスター自身のダメージ耐性の確認』です。」

「えっ?」


カグヤの視線が俺に向き直る。


「ご主人様が……ダメージを、受けてみるのですか?」

「うん。アクセサリで盛られたステータスが、実際どれくらい頼れるのか試しておきたくてね。もちろん攻撃は、このダンジョンの雑魚モンスターで考えてる。」


カグヤは何度か口を開きかけては閉じ、最後にぐっと堪えた。


「……わかりました。ただ、その攻撃は、まず私が受けます!」

「あ。それは私の役目で、カグヤはマスターの回復役をお願いします。」


「な!? ……ずるいですよ。セリフィアさん。」

「ステータスを把握できる能力を持つ私が、最適です。」

「むー……ご主人様ぁ! わたくしも盾になります!」


「あっはっは、ありがとうカグヤ。でも、俺の為にわざわざ痛い思いしてほしくないから、ダメです。」

「ご主人様のいけず……」


「さぁ行きますよ! 攻撃してくるモンスターのところへ。」


3人で、ぴったりくっつきながら移動開始。

案外歩きにくくないのは、2人が気を使ってくれているおかげだろう。


5分も歩くと、セリフィアの案内が止まった。


「あの瓦礫に、モンスターがいます。」


セリフィアの案内に従ってきた場所は、コンクリの瓦礫が積み重なったような場所だった。

『少し休憩するか』という時に、座ってしまいそうな場所に思える雰囲気。


「では、まず私が攻撃を受けてきますので、ここで見ていてください。」


セリフィアは散歩に行くような足取りで瓦礫に近づいていく。

その瞬間、瓦礫の隙間から鞭のような何かが伸びた。


_人人人人人人_

>   8  <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄


伸びてきたのは、カマキリの鎌だった。

セリフィアは防御するでもなく、微動だにせず、それを受けている。


そして、くるりとこちらを向いて、何事もなかったかのように戻ってきた。


「掠り傷でした。マスターのアクセサリが機能していなくても、耐えられるダメージです。念のため、カグヤはスキルの準備を、マスターは、次の攻撃を武器で防御してください。」

「あ、うん……ありがと。」


色々、肝が据わり過ぎでないか? セリフィアさん。


「うん……いけそうです。ご主人様に『祓印結界』を貼ります!」


カグヤも召喚した専用武器『払魔の祓串』を装備している。

武器スキルは『祓印結界』で、1度限りの50%ダメージ軽減バリアを張る。


カグヤが棒の先に白い紙の付いた祓串を振るう度に、光が俺の身体にまとわりついてくる。

アクセサリの効果が無かった場合でも、これなら安心だ。


「マスターの受けるダメージが想定内であれば、武器スキルの発動を試してみてはいかがでしょうか?」


セリフィアの口調は、もう『問題ない』と確信しているようだった。

俺は、注射を受けに行く前のような不安を抱えつつも、腹を決める。


「わかった。少し考えてみるよ。じゃ、行ってみる。」


コンクリーパーが隠れるのは無駄と思ったのか、こちらに向かって動き出している。

俺も短剣を抜いて、歩み寄る。


不思議と怖さは感じない。

身体の固さも無い。

適度な緊張感だけが、心地よく残っている。


鎌のような両手を見せ威嚇を始めたコンクリーパーをじっと見る。


うん……これは怖くない。


俺はセリフィアの真似をして、散歩のように近づいていくと、コンクリーパーが鎌を振るった。


「おっそ」


左からの一撃が、スローモーションのように見える。

回避も防御も余裕だ。


この速度なら、受けてから判断しても間に合うが――左腕を上げて、受けてみる。


_人人人人人人_

>   2  <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄


バリアの光が弾け、軽いデコピンのような衝撃だけが残った。


……これは大丈夫だわ。


「全然大丈夫だから、このまま武器スキルの検証に入るわー!」


視線は外さず、声だけで伝える。


武器スキル。三太の短剣の武器スキル。

三太ドライブ。


どうやったら放てるんだろう……そんなことを考えていると、コンクリーパーがまた鎌を振るってきたので、今度は右腕で受けてみる。


_人人人人人人_

>   4  <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄


うん。しっぺくらいの痛み。

でも、攻撃を受けるのは気分が良くないので、バックステップで距離を取る。


「うぉ!?」


思った以上の速さ。

自分が想定していた以上の動きのせいで、脳がバグってしまい転ぶ。

すぐに立ち上がるが、セリフィアとカグヤの心配する声が飛んできて、ちょっと恥ずかしい。


これはすばやさ4000の下駄の効果か――


「大丈夫だよー! 自分が思った以上に速く動けて、頭がついていけなかっただけ! 武器スキルの検証つづける!」


色々もたついていると、ふと『ピン』とくる感覚があった。

使える。

感覚的に、そんな印象があった。


自分の動きの軌跡、攻撃の流れ、すべてが明確にイメージできる。

後は何か切っ掛けがあればスキルを出せそうな気がする。


……って、ことはアレかなぁ。

やっぱりスキルだから、必殺技っぽい感じなのかなぁ?


カグヤも発動の時に言ってたんだよな。

『技名』をさぁ。


「えっと……『三太ドライブ』」


俺の身体が、全自動で動き出すような感覚。

さっき思い描いたイメージを正確になぞっていく。


コンクリーパーの前を何の手ごたえも無く短剣が通り過ぎるたびに


_人人人人人人_

>  5万  <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄


ダメージエフェクトが見える。

3度、斬撃がコンクリーパーを切り裂いて、俺の全自動が止まった。


改めてコンクリーパーに目を向けると


_人人人人人人_

>  15万  <

 ̄Y^Y^Y^Y^Y ̄


ダメージ合計のエフェクトが浮かび上がると同時に、コンクリーパーの身体が4つに切断され、バラバラに崩れ落ちた。


「スゴイです! マスター!」

「ご主人様かっこいい!」


セリフィアとカグヤの黄色い声援が飛び、

俺はなんの汚れもついていない短剣を一度振るって、静かに鞘に納める。


「……つまらぬ物を切ってしまった。」


――言わなきゃいけないでしょうよ。これは。


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― 新着の感想 ―
3回切ったら4つ以上に別れると思う
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