第31話 潜伏ダンジョンで検証しよう
誤字報告ありがとうございます!
見逃しちゃうので、ほんと助かります
今日も朝からダンジョン!
入ダンと同時に、アクセサリ黎明の誓装は装備済み。
これだけはルーティンにしておきたいから、忘れないよう気を付けている。
今回の目的地は、7級『潜伏ダンジョン』。
あまり人気が無いダンジョンだとは聞いていたけれど、ツアーガイド付きのグループがちらほら。
ガイドがいるなら、向かうルートも出発時間も似通うはず。
人目が減ったタイミングで、少し離れてセリフィアを召喚しよう。
一人で潜伏ダンジョンを回るのは、良い装備してても不安だからね。
そんなことを考えながら、景観を見回す。
「いやぁ……ロマンを感じるなぁ……」
7級『潜伏ダンジョン』は一言でいうと『崩壊都市』。
倒壊した巨大ビル、ひび割れた道路、風に舞う紙くず。
ゲームなんかでありそうな、廃墟と化した都市。
昔は栄えていただろうこと、そして何かが起きたことを容易に想像させるダンジョン。
これは、ツアーガイドがいるのも分かる。
男の子はこういうところ大好き。
こんなところでモンスターと戦うんでしょう? もう好きっ!
そんなことを考えつつ、家で確認をしていて気になった武器を召喚する。
――*――*――
聖・三太の短剣
HP:0
攻撃力:1500
防御力:500
魔力:500
神聖力:0
すばやさ:1500
おっちょこちょいの三太さんが
聖夜に落とした三太鉄で作られた短剣
取得経験値40%アップ
取得金貨40%アップ
武器スキル「三太ドライブ」
敵全体にすばやさ依存333%の3回ダメージ
――*――*――
緑の鞘に収まり、鍔が金の星型、柄が赤と白の縞模様の短剣が姿を現した。
うん。完全にクリスマス武器。
クリスマス期間中にドロップするアイテムで作れる限定武器だが、経験値取得と取得金額にバフが付く。
レベル上げと金策を両立したい俺にピッタリの武器だと思い、試してみたくなったのだ。
武器スキルも黎明の誓装のすばやさが3000もあるから、結構強いダメージがでるんじゃないかと期待してる。
……まぁ、武器スキルって使ったことないんだけどね。これも要検証か。
短剣をベルトに刺し、ガイドとは逆方向へ。
モンスターに気をつけつつ、廃墟の街を歩きだす。
少し進んだところで、セリフィアを召喚。
「おはようセリフィア。」
「おはようございますマスター。あれ? 今日は……武器が違うのですね。」
「あはは。見た目はアレだけど、経験値と金貨のバフ付きでさ。」
「それは良い武器ですね。流石マスター。」
朝一からサスマス。ありがとうございます。
「早速で悪いけど、またスキャンをお願いしていい? ここは蜘蛛とリーパーがいるみたいで。」
「お任せください。魔力干渉解析」
ダンジョンをスキャンする光が広がっていく。
人目? 気にしない。
だってこのダンジョン、出てくる魔物が不気味すぎるんだ。
ハイディングモと、コンクリーパー。
どっちも隠れているモンスターで、ハイディングモは隙間から、コンクリーパーはコンクリに偽装して襲い掛かってくるらしい。
「スキャン完了しました……なるほど。7級ダンジョンともなると、掠り傷程度は負うかもしれない敵の気配がありますね。発生ポイントも9級より多く確認できました。」
「そこそこの魔石が落ちてる可能性があるってあったから、ポイントに落ちてるのかな。」
「有り得る反応ですね。封印クエストの確認をしながら採取できそうです。いつでもご案内できます!」
今日もやる気のセリフィアさん。
クールだけど元気な娘なんだよな。
セリフィアのテンションに、こっちも元気になる。
「今日は、封印クエストを試すのがメインだけど、ついでに武器スキルを使えるかの確認もしたいんだ。」
「確認ですか……パンプキンパニッシャーの武器スキルは使えていたようですし、今回も問題ないのでは?」
「あ。この短剣はパッシブじゃなくて攻撃スキルみたいでさ――」
ゲームの武器画面を呼び出し、セリフィアに見てもらう。
「……なるほど。パッシブ以外に攻撃スキルがあるのですね……そういえば攻撃の武器スキルは未使用でしたね。検証のしがいがあります。
マスター。私の装備もお願いして良いですか?」
編成画面からセリフィアの専用装備『裂理の魔導書』の装備をタップ。
すぐに彼女の手元に魔導書が召喚された。
裂理の魔導書の武器スキルは『裂理演算』。
『次回攻撃時、魔力が3倍になる』効果だ。
「ふむ……感覚的に武器スキルを使えることが理解できるのですが、マスターには、そのような感覚はありませんか?」
三太の短刀を抜いて、手に取ってみる。
「う~ん……なんとも。よく分かんないや。」
「そうですか。」
「この短刀自体、持つのも初めてだしね。まだ色々つかめてないのかも。」
ゲーム内では、戦闘中に持っているスキル毎にゲージがあり、それが満ちると発動できた。
もしかすると、戦闘が始まらないと使用できないかもしれない。
次の言葉を出す前に、一度、軽く息を吸って気合を入れる。
「あと…………俺がダメージを受けても大丈夫かの確認もしておきたい。」
「マスター……」
セリフィアの表情が驚きに変わる。
だが、驚きを飲み込んで思考を巡らせ、ひとつ頷いた。
「……確かに、必要なことだと思います。恐怖を乗り越えられたマスターを、私は尊敬いたします。」
「ありがとう。」
ステータス的に問題ない。とはいえ痛いのは怖い。
自分でも結構頑張ってると思う。
「ただ、2つ条件を出させてください。カグヤを呼ぶこと。そして私が先にダメージを受けてみる事です。」
「……え? カグヤを呼ぶのは分かるけど、セリフィアは……無理しなくて良いんだよ?」
俺の代わりにダメージを受けて検証するってことだろ?
それは流石に大人の男として、やらせちゃいかんだろ。
「無理ではないのです! アクセサリが機能していない場合の万が一を考えてのことです! 私のことを心配してくれるのは嬉しいのですが……いえ、とっても嬉しいのですが! そもそも私たちは攻撃を受けるなんて――日常茶飯事ですよ?」
……まあ、確かにゲームキャラだし。
ダメージくらうのも日常茶飯事か。
でも、目の前の美少女が傷つくのは、やっぱり抵抗あるわ。
「条件を飲んでいただけないなら、私は案内をしません。」
「え~……?」
「マスターにお願いされても聞きません。」
セリフィアはぷいっと顔を背け、ツーンと明後日の方向を向いてしまう。
案内拒否までされると、さすがに折れるしかない。
彼女たちは戦いの中で生きているキャラだしな……それを忘れて、俺が守らなきゃって思うのは、ちょっと違うのかもしれない。
……それでも、自分を犠牲にしてまで俺のことを考えてくれるのは、なんか申し訳ないけど嬉しいな。
「分かった。ありがとうセリフィア。
こんなに思ってもらえて嬉しいよ。」
俺はそっと両手を広げてみる。
「マスター……」
セリフィアが、ふわりと腕の中に納まってきた。
しばらくキャッキャウフフした。




