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現代ダンジョン・オーバーキル!  作者: フェフオウフコポォ


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138/140

第138話 変わる世界

本日2回目の投稿です。




永田町の地下にある、普段は使われない会議室。

壁は厚く、電波は遮断され、記録装置はすべてオフ。


それでも、そこに集まった政治家たちの顔には、隠しきれない恐怖が浮かんでいた。


「……本当に、資産が消えたのか?」

「消えたんじゃない。凍結されている。しかも、どの銀行も理由を説明できない。」

「そんな馬鹿な……国家権力だぞ? それより強い凍結なんて……」


ざわつく声。

誰もが椅子に深く座ることができず、背筋を伸ばし、周囲を警戒し、まるで見えない何かに怯えているようだった。


「例の……アークオラクルとやらの仕業か?」

「名前を出すな! 監視されているかもしれん!」

「恐らくそうだろう、『政治家』であれば知ってしまっていることだろう。」

「ほぼ全員に通知が届いているようだからな……」


会議室の空気が重く沈む。


「問題は、どう対処するかだ。」

「対処? どうやって? あれは……国でも、法律でも、自衛隊でも、なんなら国外勢力でも無理だ。止められん。」

「逆らえば……消される可能性すらある。」


その声に諦めたような、自嘲気味な笑いが漏れた。


「社会的には確実に消されるな。

梅戸を見たか? 家族や親族名義の資産まで凍結され、もう家から出てこない。」

「出てきたところで、もうアイツを迎える人間などおらんだろう?」

「会期中だろうが逮捕許諾請求される。

あれだけ証拠がバラまかれて否決されるはずもない。20年ぶりの珍事だな。」

「さらに後援会の不正まで暴露されているから再選の目もない。もう終わりだ。」


誰も反論しない。

全員がその言葉を真実として受け入れていた。


「……我々は、どう動くべきだ?」

「簡単だ。逆らわないことだ。」

「忖度どころではなく……服従……か。」


その瞬間、会議室の照明が一瞬だけ揺らいだ。

誰かが息を呑む。


「……見られているのか?」

「分からん……だが、もう我々は……支配者ではないのだろうな。」


沈黙。

その沈黙こそが、アークオラクルの存在を最も雄弁に語っていた。



★ ☆ ★ ☆彡



大手テレビ局の報道局。

普段なら騒がしい編集フロアが、今日は異様な静けさに包まれていた。


「スポンサー三社の資金が一部を除き凍結。理由は不明。」

「政治部が追っていた汚職議員、突然の辞職。裏付け資料がネットに流出。」

「裏社会の大物が一斉に失踪。警察も『コメントできない』の一点張り。」


報道局長が資料を机に叩きつける。


「……これは偶然じゃない。」


会議室の空気が凍りつく。

会議室の中で、一番若い記者が恐る恐る口を開く。


「例の……アークオラクル、ですか?」

「名前を出すな!」


局長が怒鳴る。

だが、その声には怒りよりも恐怖が混じっていた。


「だが、事実として……」


別の記者が震える声で続ける。


「我々が追っていた不正は、すべて先回りされている。

いや、先回りどころか、本人が出したとしか思えない証拠まである……立証しないことが難しいほど完璧すぎる。」


「報道の自由……報道の自由は、俺たちはどうなるんだ。」

「アレが監視しているとしたら……我々ができることはない。

もう流れを作ることも出来ん。ただの観測者に成り下がるしかないだろう。」


沈黙。

誰もコーヒーに手を伸ばさない。

紙のめくれる音すら、やけに大きく響く。


「……報道方針を変える。」


局長が低く告げる。


「アークオラクルに逆らう報道は一切しない。

いや……違うな。事実だけを淡々と伝える。誇張も切り抜きも忖度もなく、公平、公正な事実を。実際世界は良くなっているしな。」


世界は良くなっていると言いながら、その表情は苦虫を噛み潰したような顔。

いや、普通の不満や怒りではなく、もっと深く、もっと醜い――自分の存在が否定され、反抗したいのに反抗できない。プライドをすり潰されているような顔。


「忖度……ですか?」

「違う。生存戦略だ。」


誰も反論しなかった。

それもそうだろう。

この場にいる全員が、既に自身の不正を白日の下にさらされる恐怖に怯えているのだから。


メディアは真実を作る場所ではなく、真実を伝える場所。

そして『アークオラクルの邪魔をしない場所』へと変わり始めていた。



★ ☆ ★ ☆彡



数日後。


日本の街は、いつも通りの朝を迎えていた。

通勤電車は混んでいる。


コンビニのコーヒーは美味しい。

ニュース番組は淡々と事件を伝える。


だが――

世界は確実に変わっていた。


「最近、詐欺のニュース減ったよな。」

「ブラック企業の社長とかが、次々辞めてるらしいぞ。」

「なんか治安、良くなってない?」

「政治家の汚職発覚、やたら多いよな。」


人々は気づいている。

だが、それが『何によるものか』は知らない。


「でも、なんか……生きやすくなった気がする。」

「うん。なんか、空気が軽いみたいな?」


SNSでは、


「最近の日本、なんかクリーンじゃね?」

「なんか税金も軽くなるって噂あるぞ?」

「裏社会のニュース消えたんだけど。」


「平和すぎて……逆に怖い。」


そんな投稿が増えていた。

だが、誰も原因を知らない。

そして、知る必要もない。


ただ、真っ当なことが真っ当になり

『生きやすくなった』

その実感だけが、静かに広がっていくのだった。



――アークオラクルは、国民に恐怖を与えず悪人だけを静かに排除し、世界を『より良く』していく。


影の執行者の中村たちも、今日もどこかで仕事をしている。


どの国の国民も知らない。

世界が変わっていることも、

その変化が誰によるものかも。


ただ、『生きやすくなってゆく』

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 実際腐った権力者や悪党が一掃されて行くのは素晴らしいことなんですよね。ただ…やり過ぎて昔の『元の濁りの田沼恋しき』みたいなことにならないかだけは、ちょびっとだけ心配ですね。 まぁ…
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