新たな加速領域へ:限界突破のワープスピード 90
とある家族の女子高生 と AI
宇宙ステーションの日常を描いた物語
実験の説明と、帰還の準備
「帰り道、実験してみてもいいですか?」
「もちろんどうぞ!」
帰りの準備を整える中、えれなが補足する。
「ワープエンジンそのものは、もう現状で限界なんです。でも、保護フィールドなら改善の余地があります」
「へぇ」
「今は1艦で4×4、つまり16層。でも、同型艦3隻を連携すれば、4×4×4の64層シールドが可能になります」
「……それって速度も上がるってこと?」
「はい! エンジン自体のサイズ制限は変えられませんが、全体の負荷分散とシールド密度で補う予定です」
「ふふ、いいじゃない。やってみて」
「はいっ!」
「では──ゲートを通過します」
重厚な振動が艦全体を包み、閃光とともに、次元の狭間が開いた。
船体が一瞬で滑るように空間を抜け、目の前には静寂な宇宙の広がり。
「通過完了。天の川銀河外縁へ移動します。」
「到着しました。」
「では、連結スタート」
指示と同時に、艦体の外部から黒く硬質なカーボン色の構造体が現れ、まるで生きているかのように各艦を包み込んでいく。
「1番艦、2番艦、3番艦──配置完了」
「連結、開始します」
重なるようにシールドと構造が結合していき、やがて──
「3台の連結、完了しました。システム直接リンク、構築済み」
モニターに映るのは、まるで1隻の巨大な艦船。
「保護フィールド開始。2台同期で16層、さらに3台同期で──」
「64層構造、完成しました」
「全融合炉出力、55%」
「エンジン最大稼働率、**96%**に到達」
「では──ワープ開始!」
一瞬、艦内の空間が歪み、重力波のような感覚が身体を包む。
「……えれな、このゲージ、振り切れてるわよ?」
「わ、ほんとだ! いったん停止します!」
モニターがちらつき、観測情報が走る。
「ワープ速度13.8を観測──」
「今までの約1.6倍のスピードね……」
「はい。これまで8時間ほどかかっていた距離が、4〜5時間で到着できる見込みです」
「……ゲージは壊れたんじゃないの?」
「はい、ステーションで新たに作成します!」
ゆきなが笑いながら呟いた。
「まあ、早いことはいいことよね」
「本当に!」
⸻
ワープ航行を終えた艦は、静かに地球圏へと戻り、秘密基地司令所に着艦した。
そのままシステムをゆっくりとダウンさせ、全自動での帰還が完了する。
「じゃあ……あとは任せたわ、えれな」
「はい、お姉様」
2番艦 3番艦は月面裏側に待機するのだった。
基地の管制室に戻った直後──通信機が振動する。
「……JAX⭕️、そしてNAS⭕️からの通信依頼です」
「繋いでちょうだい」
スクリーンが開き、懐かしい顔が現れた。
「艦長。惑星での素晴らしい体験を、ありがとうございました」
その声には、確かな敬意と、心からの感謝が滲んでいた。
ゆきなは微笑んで答える。
「こちらこそ。──いい連携でした。」
「2週間旅行、それから1泊2日の短期訪問——提携国への打診はすでに完了しています」
会議室に静かな声が響く。担当官の報告に、ゆきな艦長はモニター越しにうなずいた。
「希望者、多かったのね?」
「はい。特に教育関係者や学生からの希望が殺到しておりまして……」
「そう。わかったわ。じゃあリストを送っておいて。でも——」
そこで少し声の調子が変わる。
「前回みたいには甘くいかないわよ。今回は75点以上が合格基準。前回の子たちはよくやったから、試験は免除でいつでも通行許可をあげて」
「了解しました」
「それと、いつまでも無料というわけにはいかないわ。現地で換金できるよう準備して。けど、平等性を守るために、一回に換金できる額は制限をつけておいて」
ゆきなはまっすぐ前を見たまま、言葉を続ける。
「それから……招待者の費用は、各国の支援で賄えないかしら? 財源として——この前のナノプローブ注射、一部認可しない?」
「生命治療用のあれですね?」
「基本は子ども優先よ。特に難病の子には手の届く価格で。大人で“どうしても”という方には、一本高額でも生命保険でカバーできる可能性があるでしょう? それで招待制度が続けられるなら、悪くない選択だと思うわ」
一瞬、会議室が静まり返る。
「……たしかに、今そのプローブをめぐってターゲットになる事件も起きています。取り扱いにはこちらからも警告を発する予定です」
「ええ。国として責任を持って対応してちょうだい。安全が第一よ」
会議が終わると同時に、副艦長のえれなからリストが送られてくる。
「今回の希望者は……1,348名です」
「自動合格者は、システムで自動振り分けておいて」
「了解しました」
「……では、何事もありませんように」
そう願って、ゆきなは会議を閉じた。
⸻
静かな幸せと、汗をかく休日
会議の緊張が抜けたその日の夕方。
秘密基地の女性用浴場ののれんをくぐると、ほのかな湯気と、あたたかな声が迎えてくれた。
「……あら、早かったじゃない」
お風呂にはお母さんとおばあちゃん。
そこへ、えれなも笑顔で入ってくる。4人でのんびりと湯につかり、笑い合う。
「お父さん、昨日一人で入ってたって言ってたわよ?」
「ふふ、もう少ししたらみんな落ち着いてくるんじゃないかしら」
何気ない、だけど確かな安らぎの時間——
「このほのぼのが、いちばん幸せだなあ」
と、ゆきなは心から思うのだった。
翌朝は一日空いたので、恒例の「朝テニス」へ。
パン屋のおじちゃんとラリーを楽しんだ後、そのまま部活にも顔を出す。
「新人戦、楽しみだねー!」
見守る視線は、どこか母のよう。
それに気づいた篠崎部長がくすりと笑ってひとこと。
「なんか、母親の目線ですよ、先輩」
「ちょ、ちがうって!」
けれど言葉とは裏腹に、ゆきなの顔には自然と笑みが浮かぶ。
「よし、誰か試合しよっか! ゴールデンウィークも締めくくりよ!」
—
夜私の秘密基地で焼肉パーティーにみんなをご招待
「なにこの肉……おいしい!」
部員たち、家族、が一堂に会して、焼肉パーティー。
鉄板の上でジュウジュウと音を立てる肉と、仲間たちの笑い声。
未来のこと、大事な責任、守るべきもの——たくさんあるけれど。
この時間だけは、何よりも「おいしい」「たのしい」が一番の幸せ。
そんなふうに、ゆきなの長い一日が終わっていった。
3隻合体! なのぷろーぶカーボン 今開発している副産物ですが・・
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