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余命が想定していたよりも縮んでいた事にアンジェは驚愕した。

そんなアンジェに気づいたのか、ノーニアスは焦りを抱きつつも、今はアンジェを不安にさせてはいけないと、決して感情を表には出さないように頬を引き締める。



「アンジェ。話してくれるかい…?」



「っ…」



ノーニアスが真剣な眼差しでアンジェを見つめる。


そんな中ノーニアスはアンジェの中に渦巻く禍々しい気配に気付く。

その気配がアンジェを取り巻き、そしてノーニアスを警戒している。


だからノーニアスは躊躇った。

アンジェに手を差し出すか否かを。



魔法使いと魔導師は似ている様で似ていない。

魔導師は攻撃魔法等を得意とする一方で、魔法使いとは言わば攻撃魔法等全くもってダメダメと称してもよいだろう。


だからこそ、この禍々しい気配を相手に自分は足元にも及ばないとノーニアスは悟った。



一方、アンジェの方は酷く鼓動が高鳴り、戸惑っていた。

平然を装う為にと深呼吸をする。



アンジェ自身、ノーニアスの事は勿論信頼している。

だが、マモンの存在について話すつもりは一切無かった。


何せ、マモンは言っていた。

ルーンに知られたら凶暴な魔物達を食い止めている結界を解くと。

ここ数年。魔物の大きな被害が出なかったのはマモンの張った魔法結界のおかげであり、その魔法結界が無ければ今頃王国も消滅していた可能性があっただろう。


フローラにマモンの存在が知られてしまったのは避けては通れない道だったので仕方ないとアンジェは思っている。

何せマモンの姿を完全にフローラが認知してしまったからだ。


勿論、フローラにはマモンの存在については他者には秘密にするように口止めはしているが……。



ノーニアスは最もルーンと近しい存在である。

だからこそ、余計に正直に話す事なんて出来なかった。



鎮まりかけていた胸の鼓動が、突然どくどくどくと早鐘を打ち始める。



「……ノーニアス卿。占って欲しい事があるんですけど…いいですか?」



突然のアンジェの要望にノーニアスは驚いた。

なにせ眉間にシワを寄せ、頭を悩ませていたアンジェが突然そう言ったのだから。


けれど、断るつもり等彼には一切無かった。



「勿論。構わないよ」



アンジェは親友の妻であり、大切な読者であって…こっそりと友人でもあると思っている。


そんなアンジェの要望とあれば叶えよう、とノーニアスは胸元のポケットからカードを取り出した。



「人探しをして欲しいんです」



「なる程ね。じゃあ私の合図と共に目を閉じてその人物を頭の中で思い描いて欲しいんだけど、いいかな?」



「…………深くは追求なさらないんですね」



アンジェが静かに微笑む。

そんなアンジェにノーニアスは愉快そうに笑った。



「まだその時では無いようだからね。アンジェが話したくなった時に話してくれるかな?」



「……ありがとうございます」



そうアンジェが言うと、ノーニアスから合図が送られる。

アンジェは目を閉じて、自分の専属医師のミルキーについて思い浮かべる。


彼は中々変わった男だった。

浮世離れした…と言う言葉が何よりしっくり来るだろう。


そんなミルキーの事を色々と思い描いて行くと……



「見えた」



ノーニアスの声が聞こえ、アンジェは恐る恐ると目を開けた。

そうすれば一枚のカードが紫色の光に包まれながら宙へと浮いていた。


ノーニアスは静かに椅子から立ち上がると、そのカードを手に取る。

そして



「君の探し人は今……」



そうルーンが言葉を紡ごうとした瞬間



『久しぶりじゃないか、アンジェ』



脳裏に過ぎる聞き覚えのある声。

そんな声に弾かれるかのように後ろを振り向けば、そこには探し人であるミルキーが佇んでいた。





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