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急な訪問


翌朝。

アンジェは少しの息苦しさを感じながら目を覚ました。

重たい瞼を開ければ、霞んだ視界に入ったのは規則正しく寝息を立てるリアの姿。



アンジェは驚きのあまりにもベッドから飛び上がりそうになるも、リアを起こしてはならないと慎重に体を起こす。



(え、お姉ちゃんがどうして此処にっ!? あ、もしかして……!?)



ルーンが言っていた良いこと。

それは間違いなくリアの事を指していたのだろう。



(疲れてるのかな? かなりぐっすり眠ってる…)



アンジェがじーっとリアの顔を見つめる。

けれどリアが起きる気配は無い。


コンコン


扉がノックされる。

そして、イリスの声がした。



「奥様。おはようございます。朝のご支度の準備に参りました」



そう言ってイリスが部屋に入ってくるなり、視界に入った光景を見て微笑ましそうに笑った。



「おはようございます、イリス。あの、お姉ちゃんはいつ頃此処に?」



「五時頃に御到着されて。久しぶりに奥様と一緒に寝たい、と仰っていたのでお部屋にお通し致しました」



「そうだったんですね。あ」



ピクリとリアの手が動く。

かと思えば次の瞬間、リアがアンジェの身体に抱き着いた。

しかし、起きた様子は無く寝ぼけているだけの様だ。



「しっかり者の姉ですが、寝起きは悪いしこうして寝ぼけてよく抱き着いて来るんですよね…」



「仲良しで大変微笑ましいですね。しかし、奥様は今日もお仕事があります。そしてリア様も。ですので起きて頂かないと」



イリスはそう言うと、リア様起きて下さい。と声を掛け始める。



「あの。イリスはお姉ちゃんの就職先を知ってるんですか?」



「そこまで詳しくは。ただ今日から出勤なのだと話されていましたよ」



イリスはそう言うとニコリと微笑む。

アンジェを不安にさせない様に。



それから何とかリアを起こし、身支度を整えて朝食の時間を迎えた。

既にルーンは仕事に出ており、リアは宮廷専属魔導師のブラックさに顔を歪めていた。



「そうだ、アンジェ。暫くは公爵邸に泊まらせて頂くことになったから、よろしくね」



「え、本当!?」



「嘘をついてどうするのよ」



そう言って笑うリアに、アンジェが花を咲かせたかのような笑み浮かべた。


まさか再びリアと暮らせる日が来るとは思ってもいなかった。



「最初は寮で生活しようかと思ってたんだけど、グレジス公爵が良かったら我が屋敷で住まないか、って提案して下さったの。空き部屋は沢山あるし賑やかになるのは良いことだって。それに……アンジェが喜ぶだろうから…って仰ってた。グレジス公爵に大切にされているみたいで安心したわ」



「……旦那様は凄く優しい方だよ。大切にされてるって凄く伝わってくる。あ、そうだ。お姉ち……お姉様! 寮と言っていたけど、何処の寮? そもそも就職先って…」



「それは後でのお楽しみよ」



そう言ってリアは紅茶を口に運んだ。

ニコニコと楽しそうに微笑むリア。

口が堅い彼女の事なので、いくらせがんでも教えてはくれないだろう。



朝食を済ませたあと、アンジェは馬車に乗り込む。

その馬車にはリディスとリアの姿もある。

そしてリアが見に包む服装に、アンジェは驚きを隠せずにいた。



「お姉様。その制服って…」



「そう! 実は私、宮廷専属魔導師団に入団する事が決まってたの!」



「流石リアさんですね。異国の魔法学院卒業での入団ってかなり難しいって聞きますよ」



「お姉様凄い!! じゃあこれから一緒に通勤出来るんだね」



「そういう事になるわね」



二人は顔を見合わせると、満面の笑みで喜びあった。

こうして二人が再び仲良さげに話す所を見れた事にリディスは大きな喜びを抱きながら馬車に揺られた。



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