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頑張りたい!


「と、取り乱して悪かったわね。その……実は、親しくなりたいって言うのはカインなの」



フローラは改まった様子で話し出す。

徐々に声が小さくなっていくフローラの様子は、恥ずかしさに押しつぶされそうになっている乙女そのもの。


だからアンジェは直ぐにフローラのカインへの想いを悟った。

それと同時に身分違いの恋、と言う言葉がアンジェの頭の中に駆け巡った。



「私からしたらもうお二人はとても親しい間柄のように感じましたが…」



「そ、そう? ま、まぁ? 私とカインだもの、当たり前よね…。けど、それは昔の話よ。もう長くカインとは会ってないわ。だから…会いたいの。そして昔みたいに戻りたいのよ! けど…」



「けど?」



フローラの言葉にアンジェが首を傾げた。


そしてベッドに蹲る人影が突如ベッドへと潜り込み、今にも消えてしまいそうな小さな声で呟いた。



「今の私じゃ会えないのよ……!!」



「えっと…何故でしょう?」



アンジェの言葉にフローラは黙り込む。

それから暫く沈黙が続いた後、フローラが意を決してた様に語り始める。



「私はもうずっと部屋に篭り続けてた。だから勿論、お話する相手はベルだけ。お父様もお母様も兄様も…皆、こんな私を嫌ってるわ。でもね、貴方はこんな私に嫌な顔せず接してくれた。ほんとはね、…嬉しかったの。そんな貴方だから真実を話すわ…!」



「は、はい…!」



改まった様子で言うフローラに、思わずアンジェは背筋をピンと伸ばして、姿勢を正す。


ゆっくりと閉まっていたカーテンが開く。

そしてそこに居た人物にアンジェは一瞬目を見開いた。



「驚いたでしょ? お姫様がこんな白豚なんて」



フローラはそう言うと、大きく息を吐いた。


部屋に篭り続ける生活を送っているせいか、彼女の肌はとても白い。

そして何よりふっくらとした体型。

どうやらこの二つの要素を合わせてフローラは、自身を白豚と称したのだろう。



「が、がっかりしたでしょ? 正直に言っていいのよ?」



「確かに驚きはしましたけど…。こうして姿を見せてくれたこと、とても光栄に思っていますよ? だって、それだけ私はフローラ様に信頼して貰えている…と言う事だと思いますので。それと…そう自分を卑下しないでください。フローラ様はフローラ様です。お姫様のイメージに囚われなくていいと思います」



アンジェがニコリと微笑んでそう告げれば、フローラは一瞬瞳を潤ませた。


フローラがこうして部屋に篭もり始めたのはある出来事が切っ掛けだった。

まだアンジェに話す勇気は無いけれど、フローラは真っ暗だった暗闇世界に、一つの光を見つけた気がした。



「何でかしら。まだ出会って間もないのに貴方のこと、凄く信頼してるみたい」



「そう言って頂けて大変嬉しいです。私、フローラ様のお力になれるように精一杯頑張りますね。と言うことで……早速なのですが、フローラ様がカインさんに会えない理由。それは今の体型が気になっているから…で合っていますか?」



「そうね…。それと、噂のせいも、ある、わね…」



「噂ですか?」



「えぇ。私、色々噂がたってるのよ。中には本当に酷いものがあるわ。だから……カインに失望されてないか不安なのよ」



フローラはそう言うと、ベッドから降り締め切ったカーテンを開けて窓の外を見つめた。

その視線の先は宮廷図書館。

切なさと悲しみに溢れたその瞳に、アンジェの胸が苦しくなった。



まるで……昔の自分みたいだ。




「そうだ、アンジェ。もしこの件、成功したら貴方には膨大な報酬をあげるわ! 私に出来ることなんて僅かだろうけど……」



「報酬は要らない。そう言いたい所ですが、一つお願いがあります」



「えぇ。何かしら?」



「容姿、技能、性格、人脈。全てにおいて完璧なご令嬢を探して欲しいんです」



「それは構わないけど……まぁ、深くは追求しないわ。聞くな、って貴方の顔に書いてあるし。けど……話したくなったら話して頂戴ね」



フローラはそう言うと、もう一度カーテンを閉めた。




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