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「ちょっと…! ねぇってばっ!!」



誰かの声にアンジェは目を覚まし、勢いよく起き上がった。

そうすれば、ゴン! と鈍い音がし、それと同時におでこに激痛が走った。



「……っ!」



「いった!! ちょっと…急に起き上がらないでよ!」



「ご、ごめんなさい…って……か、花瓶!?」



アンジェは謝罪を述べると直ぐ、目の前に立つ…と言うか置かれている花瓶に目を見張った。

恐らく、アンジェのおでこがぶつかり、鈍い痛みと音がしたのはこの花瓶だろう。

しかし、では先程の声は…?


アンジェが不思議そうに首を傾げていると



「単刀直入に言うわ。貴方、どうやってグレジス副団長と親しくなったの?」



「か…花瓶が話してる?」



「今どきパンケーキだって話すし、花瓶だって話すわよ。で、どうやって親しくなったの?」



花瓶がグイッとアンジェとの距離を縮める。

今どきパンケーキも花瓶も話すのが普通だなんて初耳である。


アンジェは部屋を見渡す。

白い家具で統一された清楚でありながら、所々に可愛らしいぬいぐるみ等が置かれた部屋。

その部屋の奥には、天蓋付きベッドから置かれていた。

そしてそのカーテンはしっかりと閉ざされている。



アンジェはゆっくりと立ち上がると、花瓶を持ち上げる。

そうすれば花瓶が慌てて声を上げる。



「ちょ、ちょっと!! 何するのよっ!?」



「ごめんなさい。けど、どうしてそんな質問をするんですか?」



「別に……答えくないなら答えなくていいわよ」



声の主の正体が一体誰なのかアンジェには分からない。


困ったな、と頭を抱えていると。



「すいません。ご迷惑をお掛けしてしまって」



「あ、い、いえ…?」



突然後ろから声が聞こえ、アンジェは目を丸くする。

そんなアンジェの反応に、突然現れた声の主は少し意外そうに言う。



「驚かせるつもりだったのですが、案外驚かれていない…? ベルはかなりショックです」



「その驚かされるのは慣れてるもので…。えっと…貴方は?」



突然現れたメイド服に身を包んだ灰色の髪をお団子にした少々にアンジェは恐る恐ると尋ねる。

すると少々はぺこりと頭を下げて告げる。



「申し遅れました。私はベルと申します。フローラ様によって作り出された魔術人形でございます」



「魔術…人形?」



「ご存知ないのも無理は有りません。私は魔術人形の一作目。つまり試作品。世には出回っていない代物です。貴方はそんな貴重品であると私と会話が出来ています。これは喜ぶべき事なのです」



「成程…?」



なんて自我の強い人形だろうとアンジェは思いつつ、ベルと名乗る魔術人形を見つめる。


人形になんて到底思えない容姿。

人間にしか見えないが、花瓶が喋る辺りから本当に魔術人形なのかもしれないとアンジェは納得する。



「ん? そう言えば今…フローラ様って言いましたか?」



「言いましたね」



そう淡々と言うベルに対して、アンジェは慌てて花瓶を下ろす。

そしてベッドへと視線を向けると淑女の挨拶を行った。

額には汗が伝い、不安げな様子のアンジェ。

しかし、それも無理はない。



「フローラ姫殿下。今までの無礼な行為をどうかお許し下さい」



アンジェの言葉に花瓶が「フン」と鼻を鳴らす。

そしてベルが言う。



「グレジス夫人が謝る必要ありませんよ。姿を見せないフローラ様が悪いのですから」



「アンタは粉々に壊されたいのかしらっ!?」



「言葉遣いが乱れていますよ、フローラ様。それに……早く本題に入らないと駄目ですよ。グレジス夫人はお忙しいんですから」



ベルの言葉にフローラは「そうね…」と呟いた後、咳払いをして意を決した様に話し出す。



「気に入らないのよ! アンタと副団長の関係がねっ!!」





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