表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/93

二人


突然だが、ルーン主催でパーティーが行われる事となった。

改めて妻として迎え入れたアンジェを紹介しよう、と言う題材でのパーティー。

つまり、今回の主役はアンジェである。

その為、イリスとリアを筆頭に多くのメイド達からパーティーの支度が施された。



アンジェが身に包むのは、淡い桃色のドレスである。

無駄な装飾は一切無い、至ってシンプルなデザイン。所々にあしらわれた小さくはあるが煌びやかな宝石と、透明なベールが着いたもの。

実はこのドレス、リアが隣国でアンジェへと買ってきたお土産である。



長い亜麻色の髪も綺麗にセットし、頭にドレスと同じ桃色のリボンの着いた肩までの長さのベールを被る。

靴もドレスと髪飾りと合わせた桃色の物だ。



「アンジェ凄く似合ってる!! 流石私の可愛い妹っ!! イリスもそう思わない!?」



「はい! 流石奥様です! ほんとお似合いです! リアさん、今日は素敵な日になりそうですねっ!」



二人は手を取り合い、嬉しさのあまりにか部屋でスキップを始める。


そんな二人を見て、アンジェは思わず頬が緩む。


いつの間にか仲良しになっていた二人は、アンジェに対してかなりの親バカを発揮する。

恥ずかしくもあったが、大切にして貰えているのだと伝わり嬉しくもある。



(イリスに余命のことを黙っているのはかなり辛い。けど……)



いずれはここを去るのだ。

イリスはとても優しい人で、アンジェが去った後もきっとアンジェの余命を心配し、ずっと気遣うだろう。



(ごめんね、イリス)



アンジェはそう心の中で謝罪を述べた。


そして数分後、控え室でルーンの到着を待っていると、ある人物が先に控え室へ現れた。



「アンジェ~! 君とまたこうして会えて私は感激しているよ!! はい、これ再会の記念に私のサイン入りの新刊。是非感想を聞かせてくれたまえよ?」



金色のおかっぱの髪を靡かせながら登場したのは、ノーニアスだった。

そんな彼の手には新刊が握られており、アンジェは目を輝かせた。



「お久しぶりです、レベッカ先生! し、新刊なんて頂いても宜しいんですかっ!?」



「勿論。今回の作品はかなりの自信作だからね。是非感想をお願いするよ」



ノーニアスはそう言うと本を差し出した。

アンジェはそれを受け取り、満面の笑みを浮かべる。


本のタイトルは『赤い糸のすれ違い』だ。



「題名から切なさそうなお話ですね…」



「それは上・中・下を今のところ考えているんだ。だからアンジェ、続編は君次第だよ」



ポンポンと肩を優しく叩かれ、アンジェは首を傾げた。


ノーニアスの今回の作品は、ルーンとアンジェを元ネタとしている。

そのため、上での二人はすれ違ったままである。

だからこれから先の展開は二人の今後によって変わってくるのだ。



「まぁ、アンジェ以外にも頑張ってもらわないとこのお話は進まないんだけどね」



そう言ってノーニアスが扉の方へと視線を投げる。

するとそこには、ルーンの姿があった。



「お、遅れてすいません。アンジェ。その…ドレス、良く似合っていますね。素敵です」



「ありがとうございます。旦那様にそう言って貰えて嬉しいです」



アンジェが微笑めば、ルーンがあからさまに硬直した。

そんなルーンの反応にいち早く気づいたのはノーニアスだった。

すぐ様胸ポケットにしっていたメモ帳とペンを取り出し、部屋の隅へと移動。二人を観察し始めた。



「あの、旦那様…もしかして体調が悪いんですか? その顔が真っ赤ですよ?」



そう言ってアンジェがルーンへと距離を縮める。

そうすればルーンの体が更に硬直した。



これまで恋愛とは無縁の関係だったルーン。

想いを伝えられことはこれまで何度もあった。

けれど、恋愛所ではなくていつもその想いに対して答えることは無かった。



しかし、リアから告げられたあの言葉でルーンはアンジェの事を意識せずには居られなかった。


これまで風の噂で心がなびいた事なんて無かった。

けれど、相手はアンジェだ。

大きな壁に当たって、一度諦めそうになった夢をもう一度追いかける力を与えてくれた存在。



ルーンの中で確かにアンジェは大切な存在だった。

自分を救ってくれた恩人を救い出す為に、そして自分のためにとアンジェを妻として迎え入れたつもりだむた。

けれど本当は、他の感情が芽生えていた事にルーンは気づいていなかっただけなのだ。



「……ヘタレてばっかじゃ駄目だよな」



そうポツリとルーンが小さく呟いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ