ナスと合流
「酷いぞ!冗談は美女だけにしてくれ!」
「はい?」
いきなりのナス登場に少し固まる。こいつも攫われたんじゃ無いの?
そこで少し記憶を巻き戻して気付いた。ナスが寝たシーンも、矢に刺されたシーンも、連れ去られたシーンも見ていない。
「お前あの時何してたん?」
少しの驚きが混じって語尾が変になる。
「何してたも何もあるか!いきなり空飛んで、ドラノさんだけ連れていきやがって!」
「いや...お前どこに行ってたんだよ...」
真面目に気が付きませんでした。
「木の裏の方で隠れてたんだ!あの後僕がどうしたと思う!?弓の間を縫って、普通の道まで戻って、決死の覚悟で馬車に載せてもらったんだぞ!」
「いや、自業自得だろ...」
つーか決死の覚悟で戦えよ。何ヒッチハイクにビビってんだ。
「な!なんてこと言うんだ!」
「でもさ。要はビビって隠れてたんだろ?全然ダメじゃん」
「う...」
ナスが申し訳なさそうな顔をする。いやさ。普通に申し訳ない事してるんだよお前。
「とにかく宿に来い。んじゃ爺さん。地図有難う」
「頑張ってくるのじゃ」
酒場で喧嘩するのもほかの人に迷惑なので、一先ず地図をくれたお爺さんにお礼を言って、酒場を出る。
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「何故あんな少年に奴らのアジトの場所を教えたんですか!?ギルドマスター!」
ベテラン冒険者リュイスは、隣の老人に強い口調で聞いた。
「あんな少年だからじゃよ」
「どういう意味です?」
「彼はお前より強い。彼は魔力だけでも特級はゆうに超えているじゃろう。あと、ギルド以外でその呼び名を使うな」
「すいません。レヴィアタン様」
あの小さな子供のどこにそんな魔力が...?
俺は、魔力の流れが見えない。
が、レヴィアタンは魔力の流れが見える。レヴィアタンが嘘をつく理由もない。そうするとあの坊主は本当に強いのか....俺よりも....
リュイスはそんな事を考えながら、酒場から出ていくガリューの背中を見つめた。
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宿屋に帰ってきた。新たな情報と、新たな荷物を土産に。
「ドラノさんは寝たままなのか?」
「そうだ。俺は睡眠薬の知識なんてないけど、そんな簡単には目覚めないはずだ」
そんな話をしながら、自室のドアを開ける。ドラノは、先程この部屋を出た時と全く変わらない場所に、全く変わらない格好で寝ていた。
「ガリュー君。この先どうするんだ?」
「皆を助けに行く。全員無事でこの国から出る」
「そうか」
ナスはちょっと落ち込んだような顔をして頷いた。
「どうした?今日の戦いで怖気づいたか?」
「そ、そそそんな訳...ある...」
出来れば否定して欲しかった。
「まあでも...仕方ないよな。いいよ。明日俺一人で行ってくるよ」
「うう...悪い...気を付けてくれ」
一瞬情けないな。と思ったが、すぐに考えを改める。ナスは仲間であっても、自分自身ではない。俺は転生した身であるので、精神年齢は十分大人だが、こいつはいくらませてようがませてなかろうが、せいぜい10歳弱だ。
魔力だって、俺でもまだチートレベルでは無いにせよ、常人の数倍はある。
俺は仲間を過剰評価していたかもしれない。ソニックの力は強いけれど、やはり穴はある。カルエルでも、サポート役ばかりで、ひとりで戦闘すれば確実にジリ貧だ。アッシュは万能型だが、やはり俺の劣化版のようなところがある。
そう考えると、今回の襲撃だって、俺が多少の犠牲を払ってでも、森を焼き尽くすだけだったら、すぐに出来たし、せいぜい皆が火傷するぐらいで済んだかもしれない。
俺は、被害を最小限に抑えようとするあまり、仲間に無理をさせすぎてしまっていたんだ。
こんな考えが頭の中を駆け回り、俺はとてつもなく申し訳ない気持ちになった。
だが、今更何を言っても遅い。まずは皆を助ける。絶対だ。明日は絶対にミスれない。
そう思い、まだ早いが夕飯を済ませて、明日の朝早くから出るためにも、早く寝た。
ナス臆病(笑)
果たしてあの時、森を焼くべきだったかどうかは、非常に道徳的な問題ですね。皆さんならどうしたでしょうか?
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