第238話 キラー
車を走らせ、近くにあったコンビニに寄る。
そして、飲み物を買って車に戻った。
「いやー、怖かったねー」
もちろん、八神さんのことだ。
てけてけとは違った怖さがあった。
「見た目はそっち系の人でしたね」
「まあ、人相は良くなかったな」
2人はそこまで怖がっていないように見える。
九条さんと天海さんは引いてたのに。
「そこまで怖くなかった?」
「ユウセイ君のお父さんの方が……」
「否定はしないな」
前にユウセイ君のお父さんの写真を見せてもらったことがあるが、確かに怖かった。
顔に縦線が入ってたし。
「八神さんのことは知ってる?」
「知らないです」
「俺も」
2人も知らないのか。
かっこいい名前だったし、もしかしたら名家の人かもって思ったんだけどな。
しかし、苗字格差だわー。
「あの2人の子は? 名家の子だよね」
「ミユとリコですね」
「あいつらも同学年なんだよ。だから交流もあるし、そこそこ知ってる」
高2か。
「キョウカ、仲が悪いの?」
「別にそんなことないですよ。ミユは腹黒くて、リコは口が悪いだけです」
「へー……なんか可哀想だったけどね」
協会は見た目を気にしないのかな?
あの組み合わせはマズいでしょうに。
「そうですねー。私達はタツヤさんで良かったです」
「そりゃな」
なんて良い子達なんだろうね。
「2人はあの子達が出向することを親御さんに聞いたりしてないの?」
「してませんね」
「俺も聞いてない」
まあ、そんな感じはしたが……
ちょっと桐ヶ谷さんに聞いてみようかな?
「もしかしたら他にもいるかもね」
「ありえますね」
「2人の反応を見る限り、キョウカが山田さんをゲットしたって噂になってるっぽいしなー」
やめてー。
「そこは忘れよう。今日はもう終わりにするけど、明日はどうする?」
「私はどちらでも構いません。どうせ暇ですし、タツヤさんのお家に行きますから」
「俺も用事はないな。あの2人がいるとはいえ、人手不足なのは変わらないだろうし、やった方が良くないか?」
まあ、アプリでの悪魔情報の量を見る限り、仕事が多いのは確かだ。
「じゃあ、明日も放課後に迎えにいくよ」
「わかりました」
「了解」
俺達は帰ることにし、2人を自宅まで送っていくと、家に帰った。
翌日、この日もゆっくりと布団を堪能し、朝食を食べる。
そして、ルリが淹れてくれたコーヒーを優雅に飲み終えると、電話をかけることにした。
相手はもちろん、桐ヶ谷さんだ。
『もしもし、山田さん? どうしました?』
「あ、おはようございます。今、大丈夫ですかね?」
これが大人のマナー。
『ええ、構いませんよ』
「橘さんと一ノ瀬君の期末試験も終わり、昨日から仕事を再開したんですよ」
『おー、それはありがとうございます。こちらも厳しくてね……私も出ていますし、大変ですよ。何しろ、私は退魔師の仕事だけじゃなくて、内業もあるんで残業続きです』
ブラック……
まあ、その分、たんまりもらっているんだろうからブラックとは呼べないかもだけども。
「いやー、すみませんねー。それで昨日、小学校に悪魔が出るって言うんで行ってみたんですよ」
『あー、そんな依頼もありましたね。どうでした?』
「てけてけがいました。本当にいるんですねー」
『てけてけですか……学校によく出るんですよね』
なんで学校なんだろ?
変態さんか?
下半身がないくせに……
「めっちゃビビりましたけど、橘さんが一刀両断してくれました。直前までビビってたのに悪魔だと大丈夫なんですよねー」
『まあ、橘君らしいですね。じゃあ、討伐は成功したんですね?』
「ええ……その後が本題になるんですけど、帰ろうとしたら同僚の退魔士さんに会いましてね。しかも、女子高生を2人連れた」
ウチのチームの救いはユウセイ君かもしれない。
2人共女子だったら俺の対女性レベルでは厳しかったと思う。
『あー……出会っちゃいましたかー』
「ええ、出会っちゃいました。今時の子って感じでしたね」
天海さんはまんまギャルだったし。
九条さんは古風な感じもしたが、扇子に犬のストラップがついていたし、天海さんと同様にスカートが短かった。
『あの子達はねー。ギャルでしたでしょ?』
「でしたねー。名家の子ですって?」
『九条家と天海家ですね。まあ、察しているかもしれませんが、山田さんの提案を採用し、応援に来てもらいました』
やっぱりか。
「まあ、そうじゃないかなーと思いましたね。あの子達は大丈夫なんです?」
『実力はありますのでそこは大丈夫です』
魔力も高かったしな。
キョウカやユウセイ君と同様に俺よりも経験はあるのだろう。
「そうですか……あの、担当の方は八神さんで大丈夫なんです?」
『それねー……だって、山田さんが断るんですもん』
俺のせいみたいに言うな。
「そりゃ3人チームで上手くやってますし、バランスが取れてますからね」
『山田さんの実績を買っていたんですけどねー。女子高生キラーにでもなってくださいよ』
すげー人聞きが悪い。
キラーは人斬りキョウカちゃんでしょ。
「親父臭いですね」
『親父ですよ。まあ、冗談はさておき、2人を指導する退魔士さんの人選には苦労しましてね。もう同性の加賀美さんで良いじゃんという声を潰すのに苦労しました』
あれはない。
絶対にない。
「ご苦労様です。その結果があの人ですか………ものすごく失礼を承知で言いますけど、怖いですよ」
堅気には見えないって……
『まあねー……しかも、経歴的に闇の人間であることは間違いないです』
おーい!
「え? 本当にインテリヤクザですか?」
『いえいえ、退魔師なんて闇の職種ってだけですよ。まあ、経歴を調べるとそっち系との繋がりもありましたけど……』
こわー……
「そんな人に女子高生を預けていいんですか? 正直に言いますが、家出少女を囲うやーさんそのものでしたよ」
『まあね……いや、八神さん自体は仕事をちゃんとやりますし、真面目な方ですよ。まあ、長い間休んでいましたけど、それ以前は精力的に働いてくださってました』
あ、そうなんだ。
でもまあ、俺に対しては確かに物腰が柔らかだったな。
「わかりました。他の家からはそんな出向みたいなのはないんです?」
『どうですかねー? 色んなところに声をかけましたし、来るかもしれません。一ノ瀬君と橘君の活躍も耳に入っているでしょうしね』
あの2人は俺の目から見ても強くなったと思う。
「あ、あの、ちなみになんでけど、俺のことは噂になってます?」
なってそうな雰囲気だったけど。
『橘家は上手くやったな……ですね。いえ、他意はありません』
あるねー……
「いやー、そのー」
『まあ、良い子ですし、可愛らしい子じゃないですか。それよりもこれから九条君や天海君と会うこともあるかもしれません。その時は気にかけてやってください。力はありますけど、まだ若いですからね』
なんか不安だなー……
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