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35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~  作者: 出雲大吉
第5章

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第187話 王道にゃ


「加賀美さん、とりあえず、ロザリーのことは桐ヶ谷さんに報告しますからね。協会もロザリーが悪魔教団を抜けたことは把握していますが、危険視していますんで」

「まあ、いいんじゃない?」


 適当だな……


「それで調査ですけど……」

「そうね。ロザリーのことよりも仕事よ」


 ロザリーは桐ヶ谷さんに投げよう。

 それよりもお金……じゃない、仕事をしないといけない。


「加賀美さんはこの前の悪魔教団の取り締まりに参加したんです?」

「ええ。と言っても私は追跡班ね。逃げた幹部共を追ってたわけ」


 この人は気配を消すのも上手いし、そっちの方が得意だろうな。


「あまりその辺のことを聞いてないんですけど、大規模だったんです?」

「それはもう……協会の威信をかけた大捕物だったわね。ここもそうやって発見された教団幹部の隠れ家よ。家の所有者の名義は別みたいだけど、ここに逃げ込んだのを私が追跡で摘発したわけ」


 なるほど。

 それで加賀美さんが調査の担当をしているわけだ。


「わかりました。では、調査を始めましょう」

「そうね。私は2階を見てくるから1階をお願い」


 加賀美さんはそう言って、部屋から出ていく。


「仕事は真面目な人だな……」

「その分、プライベートが終わってるんだろ」


 ロザリーを使い魔にする時点でそうだろう。


「まあ、キョウカに対するあれを見るとねー……」


 ひどいもんだ。


「ろくでもない悪魔とろくでもない人間だにゃ。お似合いだが、協会が頭を抱えることは必至にゃ」


 ホントにねー。


「俺達コンビはこんなに善なのにね」

「お前、善か?」


 微妙。


「あの2人より理性はあるよ」

「まあ、そうだにゃ。ちょっと理性が強すぎる気もしていたが、あの2人を見ると、そうでもないと思えるにゃ」


 ああはなるまい。


「まあいいや。仕事をしよう」


 俺達は調査を開始することにし、まずはこの部屋から見ていく。

 この部屋は家主の趣味部屋のようで大きなスピーカーの他に大量のレコードが収められた棚が壁一面に置かれていた。


「魔力は感じる?」


 棚を調べながらミリアムに聞く。


「全然にゃ。ロザリーの残滓はあるんだが……」


 それは俺も感じる。

 というか、魔力の残滓までなんかエロい気がするのがちょっとムカつく。


「他を見てみようか」

「そうするにゃ」


 俺達は部屋を出ると、1階のその他の部屋も見ていく。

 1階は他にも書斎や寝室、リビング、ビリヤード台やダーツができるバーみたいな部屋まであったが、特に怪しい点はなかった。


「うーん、トイレや風呂にも何もないね」


 無駄に広い風呂場を見ながら首を傾げる。


「というか、何もないんじゃないか?」

「多分だけど、あれだけ高額の調査の依頼が出たってことは怪しいんじゃないの? ここ、どう考えても幹部の中でも上の方の人の家でしょ」


 ザ・金持ちの家って感じだし。


「そうかもなー……だが、魔力は本当に感じないな。この家の持ち主は魔法使いじゃないんだろう」


 魔法使いじゃなくても悪魔教団の幹部か……


「どうしようかねー? 協会の調査員でも見つけられなかったんでしょ? それを俺達が見つけられるかね?」


 しかも、相手が魔法使いじゃないならお手上げ。


「うーん、やっぱりキョウカか? 夜に転移で来るのはどうだ? さすがの加賀美も帰るだろ」

「それもちょっと思ったけど、避けたい。もし、遭遇したらキョウカが可哀想だし、俺もなんか嫌」

「まあ、そう思うか……」

「一応、ほら、あれだし……」


 あれだよ、あれ。


「この場には猫しかいないのに口に出せないとはチキンな奴……」

「それが俺なんだから仕方がないでしょ」

「まあ、キョウカもモニカもそういうところが良いんだろうな。がつがつしてない大人の男」


 ミリアムは良い使い魔だなー。

 ものすごく良いように言ってくれる。


「まあ、そこはいいとしてもどうしようか……うーん、よし、ここはキョウカに倣ってみようか」

「と言うと?」

「ほら、名古屋支部の時に相手の気持ちになってみるって言ってたじゃん」


 自分も殺す側にどうちゃらこうちゃら……


「あー、あのサイコパスギリギリの物騒なセリフね」

「それ。つまりここの家主の気持ちになるわけだ。もし、隠すならどこかってこと」

「なるほど。考えてみ。私はわかんないけど、お前は今、理想の家を作ろうとしているし、その延長でちょっと考えてみるにゃ」


 ミリアムに勧められたので考えてみる。


 金持ち……教団の幹部……もし、協会や警察が踏み込んで来たらどうするか……

 踏み込む……


「寝室かな?」

「んー? なんでそう思うんだ?」

「人間が一番油断するのは寝ている時だと思うんだ。だから古来より夜襲が有効なわけ」


 暗殺でも強盗でも夜だろう。


「まあ、暗いしにゃ」

「だからそこを警戒すると思うわけ。実際、寝室には鍵がついてなかった?」


 もちろん、開いていたけど。


「確かあったにゃ」

「もし、寝ている時に取り締まりがあった場合、すぐに逃げたいと思うわけ」

「まあにゃ」

「だからこそ、隠し部屋か秘密の逃げ道を作るならそこに作る」


 俺ならそうする。


「よし、もう一回、寝室に行ってみるにゃ」


 俺達は風呂場を出ると、一番奥にある寝室に入る。

 寝室は大きなベッドが置いてあり、あとは本棚やテーブルが置いてある程度だ。


「うーん、俺もいつかこういう大きなベッドで寝てみたいな」


 キングサイズはあるだろう。

 ビジネスホテルでダブルで寝たのが最大だ。


「エロいにゃ」

「やっぱり今のベッドでいいや」

「はいはい……山田、この部屋に違和感はあるか?」

「うーん、やっぱり魔力は感じないし、普通の寝室って感じがする」


 広さや豪華さは普通じゃないけど。


「お前に言われて、この部屋に入って、気付いたことがある」

「え? 何?」

「この部屋にだけ窓がないにゃ」


 そう言われて、部屋を見渡すが、確かに窓がない。


「ホントだ」

「何かありそうだ。山田、ちょっとベッドに寝てみ?」

「えー……人様のベッドだよ? しかも、悪魔教団幹部」

「いいから寝てみろって。それでちょっとシミュレーションしてみろ。この家主はお前と同じように小心者だ」


 俺と同じは余計だが、小心者なのは確かだろう。

 窓がないというのはそういうことだ。


「わかった」


 俺はベッドの方に行き、寝転ぶ。


「山田、警報が鳴ったにゃ。何者かが家に入ってきたにゃ」


 という設定だ。

 実際は警報なんて鳴ってない。


「うわー、敵だー。早く逃げないとー」

「棒読み……」

「迫真の演技をするところじゃないでしょ」

「まあにゃ。お前ならその後、どう考える?」


 そう言われたので上半身を起こし、扉の方を見た。


「あっちには行きたくないね」


 侵入者に近づきたくない。


「他には?」

「逃げるルートを考えていた。もし、協会か警察ならすでに囲んでいると思った。それに2階もない」


 逃げ道がないし。


「となると?」

「地下に秘密の抜け道があったら良いなって思った」

「じゃあ、それだ。床を探そう」


 ミリアムが扉とは反対方向の床を見ていく。

 床はフローリングであり、変なところはない。


「どう?」

「まあ、待つにゃ」


 ミリアムは床を見ながらウロウロし、ついにはベッドのすぐそばまで来た。


「あったー?」

「あったにゃ。この辺からわずかにだが、風を感じる」

「え? 本当にあったの?」


 ベッドから降り、ミリアムの横に腰を下ろすと、床に手をかざしてみる。


「何も感じないけど?」

「人間は鈍いからにゃ。私は猫だからわかるにゃ」


 へー……鼻も良いし、猫ってすごいな。

 まあ、上級の悪魔なんだけど。


「風ってことは下に何かあるってことだよね? どうやるんだろう?」

「ぶち壊してもいいが……」


 ミリアムは物騒なことを言いつつも爪で床をカリカリとかぐ。

 正直、爪とぎにしか見えないなーと思っていると、床が持ち上がった。


「あ」

「山田、取るにゃ」


 ミリアムに言われたのでぱかっと取れた50センチ四方の床を取る。

 そして、床の下を見てみた。


「梯子……」


 床の下は真っ暗で奥までは見えなかったが、鉄製の梯子があり、下に降りられそうだった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ロザリーのせいか、今回ミリアムの猫さんが剥がれがちだにゃ 落ち着いていつもの猫さんに戻ってほしいにゃ~
窓がない部屋は居室にはできません
前回といい、山田が一番何もしてない……?
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