第186話 まさかそんなことないよ?
「使い魔? え? ロザリーが?」
「はい。私がです」
ロザリーがいつもの笑顔で頷く。
「え? なんで使い魔に?」
「別にいいじゃないですか。あなただって可愛らしい悪魔を使い魔にしてますし……」
いや、ミリアムは猫だし……
「意味がわからないんだけど?」
「まあ、使い魔になる悪魔なんて珍しいですからね。気持ちはわかります。ですが、事実です」
「なんで加賀美さん?」
「本当はあなたの使い魔になって、ハーレムを作ってあげようと思ったんですが、相手の性格を見て、強引に走った嫉妬深いバカ人斬りとちゃっかりいい感じの枠に収まり、その他を排除するポンコツ魔法使いがねー……」
キョウカをバカ人斬りって言うな。
モニカをポンコツ魔法使いって言うな。
「ウチの使い魔はミリアムで十分です」
「あなたはねー……つまらない男です。私の手にかかれば男子高校生でも高貴な夫人とのいけない不倫でも叶えることができるというのに……脳汁ドバドバですよ?」
やめーや。
マジでいらん。
「勘弁してください」
ユウセイ君とマリエル様だろ。
男色のケはないし、マリエル様にちょっかいを出したら首が飛ぶわ。
あそこの夫婦は愚痴ばっかりだけど、実はめちゃくちゃ仲が良いんだから。
「ほら、つまらない。それを乗り越えるのが寝取りの醍醐味なのに……山田さんには失望しました。だからなんかいい感じの人がいたのでそっちにしたんです」
ロザリーが加賀美さんを見る。
「加賀美さん……なんでこんなのを使い魔に?」
「んー? なんか港区のオシャレなバーで飲んでたら声をかけられた。『ラブはいりませんかー?』って」
ひでー勧誘……
「それで使い魔に?」
「なんか面白そうだったから。それに飲んでたら話が合っちゃって」
何を言っているんだろう?
「いや、ロザリーは悪魔教団ですよ? しかも、ネームドの上級悪魔です」
「寝返って協会についたって聞いてるけど?」
「いや、教団を抜けたのは事実っぽいですけど、協会の味方じゃないですよ」
桐ヶ谷さんに外国に行くように促せって言われてる。
「ロザリー、そうなの?」
加賀美さんがロザリーに聞く。
「まさか! 私は愛を司る悪魔にて、ラブの伝道師です。キューピッドは私が元ネタと言っても過言ではありません」
キューピッドに謝れ。
天使は脳汁ドバドバとか言わんわ。
「こう言ってるけど?」
え? 信じたの?
「悪魔は嘘をつきます」
「つきませんよー。悪魔ほど正直な存在はありません」
えー……
ウチの猫さんはしょっちゅうつまみ食いをしたくせに食べてないにゃって嘘つくぞ。
「大丈夫だってー。ロザリーの愛のアドバイスに従うと何もかも上手くいくの。この前も警察……あ、いや、なんでもない」
わかった……この人も悪なんだ……
「ミリアム、どうしよう?」
頭が痛くなってきた。
最悪なコンビが誕生してしまったようだ。
「関わらない方がいいにゃ。桐ヶ谷に投げるにゃ」
桐ヶ谷さん、すみません……
俺の力不足です。
それに俺には守らないといけない子達がいるんです。
「ふふふ、山田さん、愛を司る悪魔ロザリーが愛のアドバイスをしますと、遠慮してるくせに自分の武器をわかってるポンコツ巨乳は来月が誕生日ですよ」
クソッ!
たまに良いアドバイスを送りやがる。
モニカの誕生日を知らなかったわ。
「どうも……」
「愛ですよ、愛。世の中は愛でできています」
クソッ!
「ネックレスとかでいいですかね?」
「おー、山田さん、成長しましたね! むしろ、ネックレスじゃないとダメです。【胸では勝てないけど、お尻なら勝てるぞ】と思っている本物のバカの分より、良くても悪くてもダメです」
どうでもいいけど、この感じで俺を評されたらどうなるんだろ?
「どうも……」
「わかりましたか? 優柔不断のくせにちゃっかりすべてを手に入れた男爵芋。あ、いや、辺境伯でしたかね?」
えー……
「辺境伯?」
「ふふふ、まあ、そこはいいじゃないですか。さて、私はこの辺で姿を消しましょう。山田さんが私の胸元しか見てませんからね」
ざっくりだもん。
目が離せないし、ドキドキする。
しかし、今思うと、本当に最悪なコンビだ。
ロザリーに対抗するにはキョウカかモニカがいる。
でも、その2人を絶対に連れてきたくないと思ってしまう加賀美さんがいる。
まさに地獄コンビ。
「すみませんけど、消えてもらえます? 私も仕事がありまして……」
「はいはい……でも、ウチに帰って私のことを思い出して、××××してはいけませんよ? あなたには部屋を掃除をしてくれる【お姉ちゃんに部屋を譲って自分はタツヤさんの部屋で寝ればいいや】と考えている可愛いホムンクルスちゃんがいるんですからね」
「いや、本当に帰って」
暴露大会になってる。
「ふふふ、人とはこうも愚かで美しい……愛こそが人の存在意義……では、皆様方の愛が永遠でありますよう……ごきげんよう」
ロザリーはいつもの決めゼリフを言うと、消えてしまった。
「帰ったか……」
「多分、私の家に帰って、エロゲーしてると思うわ」
エロゲーって……
ひっどい悪魔……
「加賀美さん、海外に行きません?」
「私、英語しゃべれないのよ」
いや、魔力をこめれば通じるだろ。
「ハァ……加賀美さん、調査の方は?」
「いや、全然。ここに来たらロザリーが実は山田さんって馬乗りの時に……何だったかしら?」
忘れろ。
ずっと忘れてろ。
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