第177話 ミリアム「(愛人の家にゃ……)」
「私もそう思います。それでダリルさん、村の人達からの陳情とか意見はあります?」
ダリルさんはそういう役割をしている。
「大きな意見もありませんし、緊急性のあるものはありません。しいて言うならやはり娯楽が少ないとかですかね? 後は魔道具を充実してほしいとかですね」
娯楽はなー……
「適当にトランプとかボードゲームでも提供しようか?」
モニカに確認する。
「よろしいと思います。シンプルですし、室内で誰でも遊べますから重宝すると思います」
もしかしたら王都でも売れるかもしれないが、そこまでする気はない。
俺達は大衆向けに何かをするわけではなく、あえてターゲットを上級の婦人層に絞っているのだ。
「ダリルさん、娯楽については提供できると思います」
100均で売っているだろ。
ウチにもある。
以前、モニカとキョウカがリバーシをやって、全部真っ黒にされていた。
どっちが真っ黒にされたかは言わないが、ユウセイ君が大笑いしていた。
なお、そんなユウセイ君も数十分後に笑みが消えた。
さらに数十分後、俺の笑みも消えた。
ルリはお姉ちゃんを誘っていた。
「それはありがたい」
「魔道具についても予算がありそうなので陳情を元に揃えようと思います」
モニカ、任せた!
「皆も喜ぶと思います」
ダリルさんが満足そうに頷いた。
「ダリルさんは何かあります?」
「そうですなー……もう少し、のこぎりややすりなんかの木材を加工する道具があってもいいかもしれません。皆、長年この村で木を相手にしてきただけあって、木の扱いが上手いのです。だから加工品がハリアーの町で好評なんですよ」
そういやあっという間にログハウスを作っていたな。
リンゴとは別にそういう産業を発展させてもいいかもしれない。
「わかりました。すぐに用意しましょう。ちなみにですが、人員を何人か借りることはできます?」
「もちろんですし、タツヤ様はただ我々に命令してくださればいいです。我々はそれに従うだけです。皆、タツヤ様が男爵になられたことを喜んでいましたし、タツヤ様についてきて正解だったと思っております」
皆、俺が貴族になったことが嬉しいのか。
やはりラヴェル侯爵が言うように自信を持った方が良いんだろうな。
「わかりました。またお願いをすると思います。では、これで。すぐに物を準備します」
「よろしくお願いいたします」
ダリルさんが頭を下げたところで話が終わったので家を出た。
「モニカ、俺が男爵になったことが嬉しいと思う?」
右腕の秘書さんに聞いてみる。
「もちろんです。タツヤ様の目的が出世ではなく、スローライフなことは把握しておりますが、それでもタツヤ様が認められるということは自分のこと以上に嬉しいです。村の方達もそう思っていると思います」
うん、適度に頑張ろう。
俺達は村を歩いていき、研究室の前まで戻った。
そして、大量に生えている木の内の1本に触れる。
「どうされましたか?」
モニカが聞いてくる。
「露天風呂計画を考えていた。さすがに村の中に作るわけにはいかないし、できたら家から近い方が良いと思うんだ」
村の中は目線が気になる。
俺だけならまだしも女性陣も使うと思うし。
「確かにそう思います。距離があると湯冷めをしてしまいますし、近い方が良いでしょう」
「そうなんだよ。温泉計画を考えている時にそれが浮かんだ。それと同時にモニカの家が遠すぎるっていうのも気になった」
ここから村まで100メートルはある。
さらにそこからモニカの家までの距離を考えるとそこそこの距離がある。
寒いし、この村にそんな人がいるとは思えないが、女性が夜に一人で歩くのは危険だ。
モニカはただでさえ、戦うすべもないうえに逃げる足も遅いのだから。
「あまり気にしませんが……」
「いやー、雨とか降ったらマズいでしょ」
「まあ……傘をさしてますね」
ほらー。
さすがに汚れるし、近い方がいい。
「だからさ、この辺りに温泉やセカンドハウスと共にモニカの家を建てたらどうかな?」
「私のですか?」
「うん。モニカって昼間の仕事以外はほぼウチにいてくれるでしょ? だったら近い方が便利でしょ」
正直、もうモニカは家族のようなものだし、ウチに住んでもいいのではと思わないでもない。
だが、単純に余っている部屋がないのだ。
だからといって、研究室に住まわせるのも微妙だし、こんなに土地があるのだから有効活用するべきだと思う。
「私としてはありがたいですが、いいんですか?」
「材料も余っているし、村の人達も協力してくれるでしょ。それに露天風呂だけ作るわけにはいかないでしょ。脱衣所なんかも必要になってくるだろうしね。そのついでにモニカの家も作ってしまおうよ」
「ありがとうございます。では、その辺りのことも詰めましょうか。ですが、まずはこの木ですね……」
皆で大量に生えている木を見る。
当然、高く、幹も太い。
「最初と一緒だね。魔法で何とかしよう」
「そうですね…………すみません」
モニカが目に見えて暗い表情になった。
「モニカ、ちょっと飲み物を買ってきてくれない?」
「わかりました。行ってきます」
モニカは軽く頭を下げると、研究室に入っていった。
「ルリ、ミリアム、手伝って」
「わかりました。モニカさんが帰ってくるまでにやってしまいしょう」
「そうするにゃ。あいつのあのコンプレックスだけはめんどくさいにゃ」
こればっかりは仕方がないよ。
誰にだってそういうのはある。
俺だって、年齢と自分に自信が持てていないしな。
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