第163話 世界の違いがすごい……
桐ヶ谷さんが帰ると、ダンボールからミリアムが飛び出してきて、膝の上に乗った。
すると、自分の部屋で待機していたルリもリビングに戻ってくる。
「山田ー。お前、いつも即決だよな?」
ミリアムが呆れた感じで見上げてくる。
「1000万だしねー。それにやっぱり悪魔は倒しておきたいよ。東京にいるならなおさら」
「まあにゃー。でも、気を付けるにゃ。上級悪魔は強いのもいるから」
「わかってるよ。それはバルトルトで身に染みた」
ああいうのは怖いね。
「私も行きましょうか?」
テレビを見るのを再開していたルリが聞いてくる。
「いやー、さすがにルリはマズいでしょ。警察も来るし」
「魔法でいくらでも誤魔化せますよ」
まあ、そうかもしれないけど……
うーん……
「やっぱり家で待機しててよ。作戦は夜の9時開始らしいから遅くなると思うし」
「わかりました。じゃあ、モニカさんと待ってます」
「お願い」
俺達はその後もリビングでまったりと過ごし、キョウカとユウセイ君が来るのを待つ。
すると、夕方の4時半くらいになると、2人がやってきた。
「こんにちはー」
「うーっす。何か良い匂いがするなー」
キョウカとユウセイ君はリビングに入ると、いつもの場所に座る。
「ルリがおでんを作っているんだよ」
「おー、良いなー」
まあ、食べていくんだろうな。
これの何が恐ろしいってユウセイ君は帰っても普通に家で晩御飯を食べるらしいこと。
大食いでもやれば結構いけるんじゃないかな?
「まあ、食べていきなよ」
「あざーす」
この子が将来、太りませんように。
「あ、お手伝いしてきますよ」
キョウカが少し腰を浮かせる。
「いや、いいよ。その前に大事な話がある」
そう言うと、キョウカが腰を下ろした。
「あ、桐ヶ谷さんの話ですね」
「どうだったんだ?」
ユウセイ君が聞いてくる。
「まずだけど、今回の調査の仕事で600万もらって、7級になったよ」
「すげー。山田さん、一気に金持ちになったなー」
「良かったですね」
2人も喜んでくれている。
自分達はもらえないというのに本当に良い子達だと思う。
「ありがとう。特にキョウカは協力してくれて助かったよ」
というか、ほぼキョウカのおかげの気がする。
「いいんですよー。当然のことです。内助の功ってやつですよ」
否定しにくい……
「ありがとうね……それでさ、次の仕事をもらったんだけど、その前に報告がある。やっぱり名古屋支部に内通者がいたらしいんだよ。しかも、本部や各支部にも内通者がいたんだって」
「まあ、そうだろうな」
「驚きはありませんね」
だろうね。
俺もそうだもん。
「その辺の詳しい話は聞いてないから省くけど、その内通者を捕まえて情報を得たらしい。具体的には悪魔教団の根城」
「確かに具体的だ」
まあね。
「タツヤさん、新しい仕事っていうのはそれですか?」
キョウカが聞いてくる。
「そうだね。協会は警察と連携してそこを摘発するらしい。その際に例の残虐の悪魔ディオンを討伐してほしいっていう指名依頼が入ったんだよ」
「なるほど」
「協会はあくまでも私達のところみたいな退魔師の家を頼らずに自分達でやる気ですね」
2人は納得したように頷く。
「その辺はわからないけど、君らも参加はしてもいいそうだよ。ただ、ちゃんと親御さんの許可を得られたらだけどね」
「別に大丈夫じゃないか?」
「ウチも大丈夫だと思いますよ。チーム山田ですし」
チーム山田……
「まあ、その辺は後で俺が電話するよ。それでさ、君らはどうしたい? 例によって報酬は出ないだろうけど」
ここが問題なんだよなー。
早く2人も高校を卒業して正式に働いてほしいわ。
「やるやる」
「もちろん行きますよー」
2人のモチベが気になるな。
「本当に行くの?」
「いや、行くよ。悪魔を祓うのが仕事だし、使命だ。それにそいつらをどうにかしないとバイトに戻れん。このままだとお年玉が消える」
あー、そのことがあったか。
「私もやりますよ。何のための刀だと思っているんですか」
人斬り……
「じゃあ、2人共参加ね。一緒に行こうか」
「了解」
「任せておいてください」
まあ、2人はそう言うだろうとは思っていた。
「じゃあ、悪いけど、今回ばかりは親御さんに電話するよ。上級悪魔だし、何より、人もいる可能性があるからね」
「電話すんの? 親父でいいか?」
ユウセイ君が聞いてくる。
「まあ、お父さんでいいよ」
「じゃあ、ちょっと電話してみるわ」
ユウセイ君はそう言うと、スマホを取り出し、操作しだした。
そして、スマホを耳に当てる。
「…………あ、親父? 何してんの? …………あ、そうなんだ。いやさ、協会で山田さんにお世話になっているって言ったじゃん? それでさー、なんかちょっと危ない仕事があるみたいでそれの手伝いをするんだけど、親に許可取れって…………そうそう、悪魔教団の件…………いや、そう言ったけど、電話するってさ…………そうそう、上級悪魔。ん、代わるわ。はい」
ユウセイ君がスマホを渡してきたので耳に当てる。
「もしもし、私、協会に所属している山田という退魔師なんですけど、ユウセイ君のお父さんでしょうか?」
『いつもお世話になっております。ユウセイの父です』
何か声が低くて怖いな……
堅気だよね?
「いきなり電話して申し訳ありません。先程、ユウセイ君の方から説明があったかもしれませんが、タイマー協会の方からネームドの上級悪魔討伐の依頼を受けましてね。それでユウセイ君にお手伝いをお願いしたいんです。もちろん、危険を伴いますし、反対なら参加はさせません」
『本人が行くと言っているのなら問題ありません』
即答……
「大丈夫ですか? ご存じだとは思いますが、悪魔教団ですよ?」
『もちろん知っていますし、それを承知で言っています。ユウセイは弱くはありませんし、協会の手助けになれば良いと思います。それにユウセイと山田さんは仲間なのでしょう? 仲間は助け合うべきです』
「そ、そうですか……では、手伝ってもらうことにします。もちろん、危険な目には遭わせません」
ミリアムがいるから大丈夫だろう。
『ふむ……なるほど。上級悪魔相手にそう断言できるのは素晴らしいですな』
「ど、どうも」
なんか怖いなー……
『山田さん、今回の件だけでなく、これからもユウセイをよろしくお願いいたします』
「それはもちろんです」
『それといつもごちそうになっているようで申し訳ありません』
「いえいえ、それ以上に助けてもらっていますし、ありがたい限りです」
これは本当。
この前の焼肉では数万も飛んだが、安いもんだ。
『そうですか。生意気な子ですが、よろしくお願いします。では、私はこれで……』
ユウセイ君のお父さんはそう言うと、電話を切ってしまった。
「切れた……なんか怖い声だったなー」
そうつぶやきながらユウセイ君にスマホを返す。
「普通だろ」
「ちなみにだけど、写真とかない?」
「写真? あったかなー……」
ユウセイ君がスマホを弄りだす。
「あ、又従妹の写真に写ってるわ。はい」
ユウセイ君がそう言ってスマホを見せてくれる。
そこに写っていたのはルリよりも幼いかわいい女の子を抱いた目つきが鋭く、顔に縦線が入っている男性だった。
「……かっこいいお父さんだね」
「やくざですよ、これ」
キョウカがはっきり言った。
「あー、言われるとやくざだな。姉ちゃんもよく『パパ、顔がこわーい』って笑ってるし」
「そっかー……」
マジで怖いな、おい。
こんな可愛い女の子を抱いているのにまったく笑ってない。
「まあ、ウチの親父はどうでもいいわ。次はキョウカか?」
「ウチこそどうでもいいと思うけどね。じゃあ、ちょっと電話してみます」
今度はキョウカがスマホを取り出し、電話をかけた。
「……もしもし、お母さーん? あのさー、例の悪魔教団の件で進捗があってさ、今度攻め入るんだけど、私も行っていいかな? …………あ、いや、タツヤさんが確認しろってさ…………うん……うん…………そうだね……わかったー」
キョウカは電話を代わらずに切ってしまった。
「あれ? お母さんは何て?」
「好きにしろって」
すんごい適当。
「いや、電話を代わってほしかったんだけど……」
「役所に行くか、孕ましたら電話しろって伝えてくれって言ってましたー」
マジで住む世界が違う……
もはや毒親みたいに聞こえる。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
今週末の11/9(土)に本作が発売となります。
ぜひとも、手に取ってもらえると幸いです。
また、発売を記念して、来週の火曜まで毎日更新いたします。
よろしくお願いします!




