第157話 バレバレ
ラヴェル侯爵にネックレスを納品した2日後の水曜日。
この日は家で爺さんの本を読んでいた。
というか、名古屋で待機していることになっている俺は外に出ることができないため、昨日も家にいた。
「暇だなー」
「釣りにでも行けば? 私もついていってやるにゃ」
魚が食べたいだけだろうに……
「元社畜からすると待機時間に釣りに行くのははばかられるなー」
「異世界に行っているのに今さらな気がするにゃ。桐ヶ谷にどうなってるか電話してみれば? お前はルリを家に残している設定になっているのだからその辺を言うにゃ」
なるほど。
ずっと家にいるから忘れてたけど、俺って小さい子を家に残して長期出張しているネグレクトパパじゃん
パパじゃないけど。
「ちょっと電話してみるよ」
コタツ机の上のスマホを手に取ると、桐ヶ谷さんに電話してみる。
すると、すぐに呼び出し音がやんだ。
『もしもし? 山田さん?』
桐ヶ谷さんの声だ。
「どうもー。ちょっとどうなっているのかなって気になって電話してみました」
『それはすみません。こちらもバタバタしていましてね』
それはわかる。
「何か進捗はありました?」
『ええ。色々と……ただ、ちょっと待ってください』
まだかー。
「あのー、私はいつまで名古屋のホテルに缶詰めになればいいんです? 小さい子を家に残しているんですけど……」
『え!? 家に残しているんですか!? てっきり親や親戚に預けているものばかりかと……』
あ、そりゃそうだ。
自分で虐待を申告してしまった。
「いや、そうしてはいるんですけど、やっぱり会いたいなって思うじゃないですか。ほぼ娘なんで」
『あー、そういうことですか……それはすみませんね。うーん……わかりました。とりあえず、今週はそちらで待機してもらえます? 土日にでも帰ってきてください。それで月曜日にそちらに伺いますので直接お会いして話をしませんか?』
言ってみるもんだな。
「月曜ですか? 私1人?」
『ええ。ただ、後で一ノ瀬君と橘君にも話して結構ですよ』
え?
いいの?
「内緒じゃなかったんです?」
『どうもあなたは一ノ瀬君や橘君に隠し事ができないみたいですし……特に橘君は難しいでしょう』
「そんなことないですよー」
嘘だけど。
『いや、一ノ瀬の家や橘の家の動きを見ればわかりますよ……』
バレてるー。
「いやー、ほら、ね?」
『はいはい……山田さん、ハニートラップに引っかからないように忠告したじゃないですか』
「抜き身の刀を持った人間に馬乗りされたことがない人はそう言うでしょうね」
人を斬れない刀かもしれないが、怖いんだぞ。
『何してんですか……』
桐ヶ谷さんが呆れる。
「ほら、前にアパートで魔法陣を見つけたじゃないですか。あの時、2人に黙って行動したのがマズかったんですよ。何しろ、私が先に勝手な行動するなって2人に言ってたもんで」
『そりゃ怒りますよ。2人は子供の頃からこの業界にいて、実力も誇りもあります。ああいう家の子のメンツをつぶしちゃマズいですって』
メンツを重視してたもんね。
「教えてくださいよー」
『いや、ルーキーの単独行動は控えるように言いましたよ』
言ってたね……
だからチームを組んでいるんだ。
「でしたね……まあ、そういうわけでちょっと話しちゃいました」
本当は全部話したし、キョウカに至っては連れていったけど。
『はいはい。まあ、一応はウチの人間ですし、別にいいですよ。とにかく、月曜に話しましょう。昼過ぎで良いですか?』
「ええ。大丈夫です」
『では、その時に詳しい話をしましょう。あ、山田さんの好きなお金の話もします。今回の報酬ですね』
おー!
「期待しても?」
『もちろん』
やったぜ。
「ありがとうございます」
『いえいえ、こちらこそ。では、月曜日に……あ、ご存じだと思いますけど、週末は橘君の誕生日ですよ。それでは』
桐ヶ谷さんはそう言って電話を切ってしまった。
「…………もしかしなくても、キョウカの誕生日だから帰りたい人って思われてないかな?」
スマホを置きながらミリアムに聞く。
「思われているんじゃないかにゃ?」
「うーん……」
誤解だが、説明もできんからな……
俺、協会でどう思われているんだろ?
「山田、そのキョウカの誕生日はどうするんだ?」
キョウカは今度の日曜日が誕生日だ。
ルリがケーキを作るからウチに来る予定。
まあ、いつも来てるんだけど。
「誕生日……どうしようかね?」
「一応、お姉さん猫がアドバイスをしてやると皆で過ごすのと2人で過ごすのは違うにゃ」
うん、知ってる。
というか、俺の脳内にいる愛を司る悪魔さんが『2人! 2人!』ってうるさい。
「実はさ、名古屋から帰る時に温泉でも行こうかって話があるね。キョウカは忘れているかもしれないけど」
「それは忘れないと思うにゃ……」
かなー?
「お姉ちゃん、楽しみにしてましたよ。中学の時の修学旅行以来だって言ってました」
メル友(死語)のルリが教えてくれる。
「あ、そう……じゃあ、そうなるのかな?」
「そうなるにゃ。風呂の何が楽しいのかはわからないけど、癒してくるにゃ」
うーん……ロザリーと遭遇しそう……
そして、絶対にニヤニヤと笑ってくる気がする。
「キョウカに聞いてみるか……」
再び、スマホを手に取ると、キョウカにメッセージを送る。
山 田 :桐ヶ谷さんに電話したら今週で帰っていいって言われたよ
キョウカ:おー、良かったですね!
早いな……
休憩時間かな?
山 田 :それでさ、土曜に帰ることにして、帰りに温泉でも行く?
キョウカ:行きます! ルリちゃんがすごく良かったって自慢してくるし
ルリ……
まあ、ホクホク顔だったもんね。
山 田 :じゃあ、行こうか
キョウカ:やったー
ユウセイ:お前ら、個人間でやり取りしろって…………反応に困るわ!
あ、ごめん……
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