表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~  作者: 出雲大吉
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/239

第131話 貴族はめんどい


 新年を迎えた翌日の1月2日。

 この日もユウセイ君とキョウカはウチに来て、おせちを食べつつ、コタツでゴロゴロと過ごしていた。

 ユウセイ君は時折り、ルリが見ているテレビを見つつも俺の漫画を読んでいる。

 キョウカは俺とミリアムと一緒に動物の画像や動画を見て、騒いでいた。

 そして、3時くらいになると、テレビを見ていたルリがこちらを振り向く。


「お姉ちゃん、パンケーキ食べます?」


 ルリがそう言うと、キョウカは自分の腹をさすった。


「…………うーん」

「いりません? 私は食べますけど」


 これぞ悪魔の誘惑。


「じゃあ、もらう……」


 カロリーを気にしているだろうキョウカは苦渋の選択をしたようだ。


「ユウセイさんは……食べますよね?」

「バターない?」

「ありますけど」

「じゃあ、それで」


 ホットケーキとバターは合うもんな。


「タツヤさんはどうされます?」

「俺もバターのやつがいい」

「わかりました」


 ルリはコタツから出ると、キッチンに向かう。


「あ、手伝うよ」


 キョウカもコタツから出ると、キッチンに向かった。


「私には聞かないにゃ?」


 膝の上にいるミリアムが見上げながら聞いてくる。


「絶対食べるからでしょ。最初から頭数に入っている」


 食いしん坊だもん。


「にゃー」


 よしよし。


「ユウセイ君、ホットケーキ食べられる? 餅4つくらい食べてたよね?」


 おせちも食べてた。


「大丈夫、大丈夫。あと、パンケーキな。女子に笑われるぞ」


 一緒じゃね?


「なんか違いがあるの?」

「知らね。でも、パンティーとショーツくらい違う」


 おー……めっちゃ違う。

 前者はおっさん感がすごい。


「パンケーキね」

「そうそう。まあ、俺もホットケーキって言うけど……」


 ホットケーキだよねー。


 俺とユウセイ君が男の会話をしていると、扉がガチャッと開き、モニカがリビングにやってきた。


「いいタイミングで来たにゃ」

「確かに……」


 この頭の良い子は狙って来たのか?


「ん? どうしました?」


 モニカが首を傾げる。


「モニカさん、パンケーキ食べます?」


 キョウカがキッチンからひょこっと顔を出して、モニカに聞く。


「あ、なるほど……すみませんが、いただきます。気になっていたんです」

「はーい」


 モニカ、いつも夜に調べ物をしているもんなー。

 最近はそういうのも見ているようだ。


「まあ、座りなよ」

「はい。失礼します」


 モニカは空いているコタツの斜め前のコーナーに座る。


「今日は早いね。どうしたの?」


 まさか本当におやつの時間を狙ったのか?


「ちょっと話がありましてね。まあ、例の叙爵式の件です」

「あー、それね。日取りが決まったの?」

「はい。名古屋での事件の最中で申し訳ないのですが、明後日になりました」


 早っ!


「急だねー」

「国王陛下が来週から同盟国である隣国に行かれるんです。とはいえ、叙爵式を延期するわけにはいかないからこういうことになりました」


 まあ、国王陛下の都合なら仕方がないわな。

 隣国に行くのも大事なことだろうし。


「まあ、わかったよ。明後日に城に行けばいいんでしょ?」

「はい。まずはラヴェル侯爵のお屋敷に行きます。そこから馬車を出してくれるそうなので後はお付きの者の指示に従ってください」

「了解」


 やりたくないが、これもリンゴ村のためだ。


「それと叙爵式が終わった後にラヴェル侯爵がお祝いをしたいとおっしゃっておられます」


 お祝い……


「派閥なんだっけ? 金魚の糞」

「いえ、腰巾着です」


 金魚の糞は汚かったか。


「それは断れないだろうね」

「はい。それをして初めて派閥に入れます。断ったらマズいです」

「まあ、わかった。でも、お祝いって?」

「単純に食事を共にし、お酒を酌み交わす程度ですね」


 ただの食事会か。

 パーティーでもやるのかと思ったが、よく考えたら一番下の男爵だしな。


「仕方がないね」

「お願いします。それともう1つありまして……」

「まだあるの?」


 貴族ってめんどくさいな。

 でもまあ、最初だけか。


「はい。そのお祝いなんですが、マリエル様もご出席されます」

「そうなんだ。まあ、そっちがいいかも。ラヴェル侯爵とは面識がないし」


 どんな人か知らないけど、怖い人だったら2人きりは嫌。

 ん? マリエル様も同席される……


「え? それって……」

「はい。当然、こちらも奥様を連れていかないといけません。キョウカさんですね」


 マジかー……


「呼びましたー?」


 キョウカがキッチンから顔を出す。


「キョウカ、ごめん。ちょっと来てくれる?」

「はーい」


 キョウカはこちらにやってくると、隣に座る。


「キョウカ、悪いけど、奥さん役の仕事を手伝ってくれる?」

「悪い?」


 怖いって……


「いや、せっかくの休みを潰して悪いなって思ってさ。しかも、明後日なんだよ」

「学校を休んでも行きますよ。それが妻の仕事ですから」


 いや、学校は行きなさい。


「それで明後日なんだけど、大丈夫?」

「大丈夫ですよ。どうせここにいますし」


 毎日、来る気だろうか?

 いや、別にいいんだけど。


「キョウカさん、実はタツヤ様が貴族になられたというお祝いでラヴェル侯爵と夕食会があります。しかも、泊まりです」


 泊まり!?

 聞いてない!


「え? マジ?」

「はい。タツヤ様は転移がありますが、普通はこういう場合、地方から来ることになりますので祝う側のラヴェル侯爵が宿を用意します。それでラヴェル侯爵のお屋敷の客室に泊まるということになっちゃいました」


 なっちゃったかー。


「私は別に構いませんよ。マリエル様のお家ですよね? なんかすごそう!」


 この子の良いところはこのポジティブさだな。


「断れない? 宿屋に泊まるとかでさ」


 宿屋なら転移で帰ってくることも可能だ。


「マリエル様はキョウカさんを気に入っていますし、ラヴェル侯爵もタツヤさんに大変興味を持たれているそうです」


 無理だわ、これ。


「キョウカ、泊まりになっちゃうけどいいの?」

「別に冬休み中だし、いいですよ」


 そういうことじゃないんだよなー……


「ルリー、ちょっといい?」


 キッチンにいるルリを呼ぶ。


「何ですかー?」


 ルリがキッチンから顔を出し、こっちにやってきた。


「実は俺の叙爵式が明後日にあるんだけど、その際にラヴェル侯爵がお祝いをしてくれるらしいんだよ。それでキョウカも一緒で泊まりになりそう」

「わかりました。その日は3人で夕食を食べます」


 ごめんね。


「うん。それでさ、親御さんに言い訳しないといけないんだけど、キョウカが外泊する理由にルリを使ってもいい?」

「別にいいですよ。私がお姉ちゃんと一緒に泊まりたい的なわがままを言うことにするんですよね?」


 賢い子だ。


「うん、お願い」

「大丈夫です」

「ありがとうね」

「いえ。タツヤさんのお役に立てるなら嬉しいです……あ、パンケーキ」


 ルリはキッチンに戻っていく。


「じゃあ、キョウカ、明後日お願いね」

「任せてください!」


 しかし、お泊まりが異世界のお偉いさんの家というね……

 気が休まらねー。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

― 新着の感想 ―
ホットケーキとパンケーキは別物と思ってますー。 配合違うので、触感とか甘さが違いません?? ちーがーうーん-でーすーーーー。(言いたかったんです)
[一言] 山田さん、気にしすぎだろ 一度決めたのだから。付いてくる泊まるは些細な問題。 キョウカが身体の関係を求めてくるわけでもないのだから、普通にしておけよ、と思う 手を出したくて堪らない○貞思…
[良い点] 初夜ですね、キョウカちゃんに食べられちゃうんですね!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ