第125話 報告と説明
家に帰った俺はルリと一緒にミリアムとモニカが帰ってくるのを待つことにした。
その間、気を遣ったルリが俺に引っ付いてきたのでルリを抱きかかえながらコタツに入り、頭を撫でる。
すると、8時すぎには2人が戻ってきた。
「ただ今戻りました」
「戻ったにゃー」
ミリアムはモニカの腕から飛び降りると、そのままコタツの中に入っていく。
「報告した?」
「はい。とりあえず、事件は解決したことを伝えました」
「ありがとう」
あとは明日、クロード様に報告すれば終わりだな。
「タツヤ様、大丈夫ですか?」
「うん? 大丈夫だよ」
「そうですか……少しお疲れのように見えます」
モニカが心配そうに見てくる。
「バルトルトが強くてね。ちょっとビビっただけだよ」
そう言うと、モニカがそっと俺の背中に触れてきた。
「今日はお一人になられない方が良いと思います」
「そうだね。ルリと一緒にいるよ。あ、モニカ、飲まない? モニカも一緒にいてよ」
「もちろんです。ですが、先にお風呂に入られては?」
そうしようかな。
身体も冷えたし。
「あ、入れてきます」
ルリが俺から離れ、お風呂場に行った。
そして、ルリがお風呂を用意してくれたので順番にお風呂に入ると、お酒を飲み、早めに就寝した。
翌日、ゆっくり眠れた俺は朝早くに起きると、リビングでまったりと過ごす。
一日経てば、昨日のドキドキもなくなり、いつもの自分に戻っていた。
そのままゆっくりと過ごし、早めの昼食を食べると、モニカと共に転移し、ハリアーの町の近くの道の分岐点に飛ぶ。
「確か、あっちに他の開拓村があるんだよね?」
この分岐点は右に行けば王都であり、まっすぐ行けばハリアーの町だ。
そして、左のボコボコした道を行けば、他の開拓村と聞いている。
「そうですね。距離的に考えても昨日の者達はその開拓村の者と思われます」
「そっか……いや、いいや。行こう」
「はい」
俺達はそのまま道をまっすぐ行き、ハリアーの町を目指して歩いていった。
そして、ハリアーの町に着くと、クロード様の屋敷に向かう。
クロード様の屋敷に着くと、門番に声をかけ、執事さんを呼んでもらう。
すると、すぐに執事さんがやってきて、クロード様の部屋に案内された。
「山田殿、ご苦労だったようだな」
クロード様の執務室に入ると、クロード様が労いの言葉をかけてくる。
「はい。クロード様に援軍を出してもらい、心強かったです。それに加え、後処理までして頂き、誠にありがとうございます」
俺がそう言って頭を下げると、モニカも頭を下げた。
「うむ。まずは上級悪魔を倒したことは見事だった。陛下も褒めておられたぞ」
え? マジ?
王様に褒めてもらっちゃった。
「ありがとうございます。恐ろしい相手でしたが、撃退し、村を守れて良かったです」
「悪魔も盗賊も我々の敵だ。よくやってくれたぞ。それで事情を聞きたいのだが……」
「はい。一から説明しますと、以前、ウチの村に受け入れを要請した別の開拓村の者が直談判に来たのです」
「なるほど。例の件か……」
これはもちろん、クロード様も把握している。
「はい。それでとりあえずは話を聞くことにしたのです。しかし、とてもではないですが、人にものを頼む態度ではありませんでしたし、中には開拓村の者とは思えない者もいました」
「続けてくれ」
「はい。我らはそれを見て、盗賊が混じっていると思いました。さらには魔力を感じ、悪魔に憑かれている可能性が高いと判断したのです。それでモニカを遣わしてクロード様に伝えました」
「ラヴェル侯爵にも伝えたな?」
さすがにその辺りも把握しているか。
「はい。ラヴェル侯爵夫人のマリエル様と交流があるため、伝えました」
「うむ。それについての判断は良かった。そのおかげでこちらもスムーズに軍を出すことができたからな。いかんせん、開拓村となると、国の管理だからこちらが何かをすると問題になるのだ」
その辺りの管理の問題はどこの世界も一緒だな。
「我々は30人程度の小さな村ですので必死でした」
「それでその悪魔を倒したわけだな?」
「はい。本当はクロード様の援軍を待ちたかったのですが、暗くなると同時に向こうから攻めてきましたので外に出て、撃退しました」
攻めてきてはないけど、こう言っておこう。
「わかった。そのことをこちらから王家に報告しておこう」
「よろしくお願いいたします」
「うむ。それではこちらも報告をしよう。捕らえた者達からこの度の経緯を聞いたのだ」
素直にしゃべったのだろうか?
いや、ここは怖いから聞かない方が良い。
「何だったんですか?」
「まず開拓村の者から聞いた話だが、やはり自分達のところの開拓が上手くいかないことに焦っていたようだ。国からの援助が今年で打ち切りだからな」
そういうことか。
それで受け入れを頼んできたんだな。
「なるほど」
「それでどうしようかと思っているところに近くの開拓村が成功したのを聞いて、便乗しようと考えたらしい」
まあ、わからないでもない。
「しかし、我々が断りました」
「そういうことだ。そうしていると、盗賊がやってきて、奪えばいいと提案してきたらしい」
えー……
何それ?
「まさかその提案を受けたんですか?」
「そのようだ。同じような開拓村だったのに大魔導士一人でこうも違ったわけだから嫉妬もあるんだろうな。悪魔にそういう心の隙を突かれたのだろう」
それで憑りつかれたのか。
「こちらはいい迷惑ですね」
「だろうな。とにかく、そういうことだ」
「捕らえた者は?」
「盗賊は全員死刑だ。開拓村の者は国の管理だから国が決めるが、間違いなく、全員死刑だろうな」
盗賊はわかるが……
「開拓村の者もですか?」
「盗賊に加担した者は盗賊だ。それにあいつらは自分達の開拓村の監査官を殺したそうだ。これは明確な国への反逆。国家に所属する魔法使いを殺すなどあり得ない。問答無用で死刑だろう」
監査官を殺したのか……
「そうですか。そこまででしたか」
「とんでもない話だ。この話を聞いて、一切の同情が消えた」
俺もそうだ。
最初は大変だろうしなーと思ったが、その気持ちは完全に消えた。
自分勝手を通り越している。
「わかりました。後のことはお任せします」
「うむ。山田殿は引き続き、リンゴの栽培を頼む。ウチの妻や娘も楽しみにしているのだ」
奥さんと娘さんがいたのか……
まあ、いてもおかしくないか。
「かしこまりました。引き続き、よろしくお願いいたします」
話を終えた俺達は退室し、家に帰ることにした。
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