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IMAGE Crushers!  作者: 水浅葱ゆきねこ
第一話 拝み屋の少年と呪われた王国

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消幕

※ 二話連続投稿しております。ご注意ください。(二話目)

 ざり、と靴底が砂を擦る音で振り返る。

「よぅ」

 軽く、片手を上げてこちらへ向かってくる少年を認めて、肩の力を抜いた。

「遅い。咲耶」

「充分止められてんだろ。平気平気」

 憮然として文句を言うが、簡単にあしらわれる。

 低い呻き声を上げ、被せられた光る網から身体の自由を取り戻そうと身を捩る大猿を、感心したように咲耶は見詰めた。

(サル)相手に雷撃か。やるもんだな」

「力押しでないと無理な相手でね」

 素っ気なく、褒め言葉を受け流す。

 次の瞬間、彼は鋭く上空を見上げた。

「どうした、紫月」

 相棒の声にも、しばらく反応しない。

 更には促さず、咲耶は待った。

「……いや。見られていた気がしたんだ」

 視線を戻し、短く告げる。

「上からか?」

「ああ」

「敵意は?」

「ない」

 数秒、胡乱な視線を先ほどの相棒と同様に上方へ向けるが、しかし咲耶はすぐにそれを目の前の大猿へと戻した。

「注意しておいてくれ。いきなり、死角から襲われるのはごめんだ」

「同感だね」

 長い黒髪の少年は、一歩前へ出て、ざっ、とスニーカーの底で足元を均す。

 これは癖だ。足場を確かめるための。

 例え、そこがコンクリートの上でも、床板の上でも、街灯の天辺でも。

 そして、片手を目の前の(ばけもの)へと向けた。

 挑発するように、人差し指をくい、と引く。同時に、唇が小さく動いた。

 次の瞬間、大猿の身体を戒める網から、一面に真紅の炎が迸った。

 絶叫が、夜空を裂く。

 申は金気。雷は木気。

 木は火を生じ、火は金に克つ。

 しかし、二人の扱う術は違う。それを併せることなど、本来は至難の業だ。

 不敵な笑みを浮かべ、咲耶は言い放った。

「いいぜ、紫月。とっとと終わらせよう」

 無言で、紫月は大猿との距離を詰める。

 その右手は、淡い光に包まれていた。





 守島咲耶。そして、弥栄紫月。

 後に『魔を滅(IMAGE)る者たち(Crushers)』と呼ばれる二人の、これが出会いの物語である。




『IMAGE CRUSHERS! 2』に続きます。

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