第八十八話 自己紹介するよ!
「では一緒に教室に行こうかの〜」
「ええ、カルド先生二人をよろしくね。二人とも何かあったらすぐに言うのよ? 」
そう言って学園長先生は笑顔で送り出してくれた。
教室に向かう道中、カルド先生がサラッとクラスのことを教えてくれた。
「この学校は高位貴族が多く通っているが、中には他国の者もおる。二人が所属するクラスには一人留学生がおるな。あと、この学校は実力主義じゃから年齢はバラバラじゃ。二人は学校に入る前に受けたテストや使える能力で、このAクラスに所属することが決まった。もしかしたらその事で難癖つけてくる者がいるかもしれんが、その場合は儂に言っておくれ。まあ、対処できるようならしてもらっても構わんがな」
最後のセリフは、少し悪い顔をしながらそう言ったカルド先生。
対処………出来るよ。
ただ、過剰防衛にならなければ良いなって強く思うけど。
一応確認しておこうかな?
「カルド先生。対処する場合、こちらにも何か罰があったりしますか? 」
私の質問にちょっと驚いた顔をしたが、すぐに笑顔でこう答えてくれた。
「ふぉっふぉっふぉ、そうか、自分で対処するか。ふむ、相手がもし不当な攻め、要求をしてきた場合は決闘が認められておる。もちろん教員が見守る中でな。獣人らしい決着のつけ方じゃろ? 決闘の場合は、代理も立てられるが………ふぉっふぉっふぉ、その目は自分でやる気じゃな? いいぞ、いいぞ〜面白い。何かされたり、言われたら相手に決闘を申し込めば良い。そんな難癖つけてくる奴は、だいたい決闘を受けるはずじゃ」
学校で決闘か〜。
基本上位貴族は武闘派だから、丁度いいのかもしれない。
『………主〜、ちょっと楽しみにしてるモケね? 』
「そ、そんな事ないよ? 」
『モケ〜、そうモケか〜。………もし決闘になったら僕たちが代理で出るモケ〜』
「いや! そこは私が出るよ! ほ、ほら、決闘を申し込まれたのに本人が出ないなんて相手にも失礼だしさ!」
私の言葉に、姿を消しているはずのモケゾウからじーっと見つめられている気がする。
『………やっぱり主は主モケ。自分の獲物は自分で狩るモケね〜』
心なしかその声は嬉しそうな気が………。
そうこうしているうちに、教室に辿り着いたようだ。
「ここがAクラスの教室じゃ」
カルド先生が中へ入って行くのに私たちも続いた。
先生が入り、私たちも入るとクラスがシーンと静まり返った。
「ふぉっふぉっふぉ、いつもはもう少し騒いでおるのじゃがな〜。ほれ、じゃあ気になって仕方がないようじゃから早速二人に自己紹介してもらおうかの〜」
先生の隣にいたリズからするよう先生に促された。
「シルフィード国から来ましたリズベッタと申します。どうぞよろしくお願いします」
リズがそう言うとみんなが拍手してくれた。
中にはちょっと固い表情の子もいるけど、それはナターシャ様のお茶会で見かけた方だから、リズが私と仲良くしているのを見たら警戒が解けると思う。
次は私の番だ。
「フローラ・ベルンハルトと申します。よろしくお願いします」
私がそう言うと一瞬シーンと静まり返った後に雄叫び? のようなものと割れんばかりに拍手が鳴り響いた。
「学校でフローラ様にお会いできるなんて! 生きてて良かった! 」
あれはビビ様ですね、若干泣いている気もしますが………。
「ふふ、私も自分の気持ちに素直になろうと思います。フローラ様と学校生活を送れるなんて………ふふ、楽しみですわ」
こちらに一生懸命手を振ってくれているのはナターシャ様ですね。
私も小さく手を振り返しておきます。
すると何故かクラスの半数以上が手を振りだしたではないですか!
これは………振り返すべき?
『モケモケ〜諦めて手を振った方が良いモケよ〜』
諦めてって………。
あ、でも、ここでナターシャ様だけに手を振って終わると、ナターシャ様に変に迷惑がかかるかも。
私はなんとなく全体に小さく手を振ってみた。
「「「ウオーーーーン!!!」」」
なんか吼えた?!
教室中がプチパニックに陥っている。
みんな尻尾がブンブン揺れてる。
「ええーーーい!! 静まれ!! いくら本能でフローラ君の可愛さにやられても、Aクラスの者なら理性で抑えろ!! 全く、はしゃぎおって。じじいに大声を出させるんじゃない」
生徒よりも大きい声でカルド先生がみんなを止めた。
声だけで止めるなんて、やっぱりこの先生強い。
「よし、少し落ち着いたな。それじゃ、フローラ君とリズ君の席は一番前のはじっこじゃ。後ろの席にリースがおるから何かあれば聞けば良い。まあ、聞く前に教えるじゃろうがな、ふぉっふぉっふぉ」
こうして、私たちの学校生活は幕を開けた。
ちなみにその日家に帰ると、山ほどお菓子を作って待っていてくれたヴォルからの質問攻めにあったことは言うまでもない。
もちろん途中でマサムネの峰打ちが入ったところまでが一連の流れだけどね。




