第八十一話 ヒヨコの名は?
「ヒヨコ………」
精霊王様のお墨付きの卵から。まさかヒヨコが生まれるとは………。
毛の色は黄色の中に目立つ赤い毛が混じっている、その毛はホワホワだ。
そのヒヨコは頭に割れた殻を乗せたまま、器用に下の殻から飛び出した。
そしてそのまま私の足元で私を見上げ。
『ましゅたー、いちゅもおいちいまりょくありがとー』
………ヒヨコ、喋りました。
ましゅたー………マスターか? それって私のこと?
「あ、えっと、はじめまして。君は………ヒヨコなのかな? 」
私の問いかけに、ヒヨコが自分の姿を確かめている。
『………い、いまは、ちっちゃいけど、ほんとはもっとかっこいいの! 』
「そ、そうなんだ〜。お名前はなんて言うの? 」
『なまえ………ましゅたーがつけて』
「え? 私が? 」
目の前のヒヨコが勢いよく首を縦に振ってます。
その勢いで頭に乗っていた卵の殻が落ちたけど、何事もなかったかのようにまた頭に乗せている。
それって、必要なものだったの?
それにしても名前か〜。
うーん、ヒヨコだけどかっこよくなるって本人言っているから、かっこいい名前が良いよね。
「じゃあ、『ホムラ』って言うのはどう? 東の方では火をイメージする言葉みたいなんだけど。君のその黄色の毛の中の赤い毛がとっても特徴的だから、どうかなって」
『ホムラ………うん! ホムラはホムラなの! ありがとー、ましゅたー! 』
ヒヨコ………じゃなくてホムラが嬉しそうに私の周りをグルグルしている。
それを見ていたみんなも何故か私の周りをグルグルし始めた。
楽しそうなのは良いんだけど、シルフィード国の神木を救う話はどこにいっちゃったのかな?
楽しそうなところ本当に申し訳ないけど、グルグルしている子たちを一人ずつ捕まえてお話モードに戻させてもらった。
「それでモケゾウ、ホムラが神木を救うことが出来るって本当なの? 」
当のホムラは、何故かトナトナの背中に乗っかっている。
『モケ、そうモケよ。今は生まれたばかりであんな姿モケど、すぐに姿が変化するはずモケ。そうしたら、精霊王様に頼まれた用事のついでに神木もなんとかするモケ。シルフィード国へは今回特別に精霊王様が道を作ってくれるみたいモケから、バビューンと行って、バビューンって帰って来るモケ』
「それって私も行くの? 」
『いや、主は行かないで良いモケ。僕たちだけで行ってくるモケから、主は待っててほしいモケ。もちろんあそこでトナトナの背中ではしゃいでいるヒヨコは連れて行くモケ。心配しなくても危険なことはさせないから安心してほしいモケ〜』
そう言うとモケゾウはトナトナの背中にいたホムラを捕まえてきた。
ホムラは首根っこをつかまれ、ダラーンと力を抜いている。
その目は………なんだろ、諦めの境地?
「ホムラ、生まれたばかりの君に頼むのは酷だけど、本当にシルフィード国の神木を助けられるのかな? 」
私の質問にホムラは、モケゾウに首根っこつかまれながらも。
『ましゅたー、ホムラできる子だよー! ましゅたーとはなれるのイヤだけど、このこわいあおいのといっちょにいってくるよー! だから、かえってきたらおいちいまりょくいっぱいちょーだいね! 』
足をバタバタさせながらそう言った。
どうやら小さくてヒヨコだけど、何をすれば良いのかわかっているらしい。
私はそんなホムラに魔力を少し流しておいた。
『うーん! やっぱりましゅたーのまりょくはおいちいの! これでがんばってくるのー! 』
どうやらホムラの中で、シルフィード国に行くことは決まっているらしい。
そんな中、殿下がこちらに近付いて来た。
「フローラ嬢、また新しい仲間が出来たんですね………ヒヨコ………かわいいですね」
殿下、何故ヒヨコ? ってめっちゃ顔に出てますよ。
そして今度はモケゾウに話しかけた。
「モケゾウ様、私もシルフィード国へ連れて行ってもらえませんか? フローラ嬢を危険な目にあわせた存在を許せません。微力ながら私にもお手伝いさせて下さい! 」
『………モケ、最近訓練も頑張っているモケから、特別に連れて行っても良いモケ。ただし、ヤるからには徹底的にヤるモケよ? 』
「は、はい! ありがとうございます! 足手まといにならないように頑張ります! 」
え? 殿下も行くことになっちゃった。
いいの? 殿下だよ?
私はそんな気持ちを込めて陛下の方を見たら、その様子が見えていたのか陛下は、なんともいい笑顔で頷いていた。
いや、なんでそんな了承されているんですか?
その後はあっという間に話がまとまっていった。
シルフィード国の人たちは精霊王様の道は使わせてもらえないようで、自力で帰ることに。
唯一、館長様が見届け人としてモケゾウたちに同行を許された。
館長様、ものすごく遠くを見ているけど大丈夫かな?
私は、応援することしか出来ないよ、ごめんね。




