第七十九話 お仕置きするよ!
『それで、使ったヤツと、その術を教えたヤツはどれなの?………ふーん、聖女だかと、さっきからちょいちょい失礼なヤツが該当者ね。さ〜て、どうしてくれようかしら? 』
精霊王様が腕を組みながら、ブツブツ何かおっしゃっている。
え? とりあえず精霊界に連れて行って、強制労働?
延々と精霊のために精霊界の水や空気を浄化する魔力を絞り出す?
そして、あんなことや、こんなことまで………。
途中でそれに気付いたモケゾウが私のところにすっ飛んで来て、私の耳をフランと一緒に塞いだ。
そして、私の耳を塞ぐ役目をヴォルに託し、そのまま精霊王様の元へ。
私は耳を塞がれているから聞こえないけど、どうやらモケゾウが精霊王様に説教している様子。
え? 良いの?それで。
『モケーーー!! 主になんてこと聞かせるモケ!! 主は今は子リスモケ! そんな物騒な話を聞かせないでほしいモケ! 』
『ちょ、ちょっと、落ち着いてよフィル………あ、うん、モケゾウね。ほら、ちょっと脅したって言うか、じょ、冗談に決まっているじゃない。ね? だから落ち着いてちょうだい』
『ほんとかモケ? さっきのは、完全に実行しようとしていたモケよね? 』
『だ、大丈夫よ。そんなに残酷なことなんてしないわ。ちょっとお仕置きの為に精霊界で働かせるだけだから。もちろん精霊たちに危害を加えさせない為に、魔力は封印するわよ。そうね………百年くらいでどうかしら? 』
『モケ、エルフだとしてもそこそこ長いモケ』
『それぐらいの問題行動よ? こんな術が蔓延したら、どうなってしまうか………。ちょっとシルフィードに行って、この術の関係者全員捕まえなきゃいけないし、これから忙しくなるわね………』
『………………』
『………………ちょっと! そこは協力するって言いなさいよ! 』
『モケ、僕は主の精霊モケから勝手にシルフィード国なんて行かないモケよ? 』
『ほんとあなた主最優先ね! 』
『モケ、照れるモケ』
聞こえないけど、最終的にモケゾウがなんかクネクネして照れている。
不思議だ。
モケゾウと精霊王様の話し合いは終わったみたいで、私の耳も解放された。
ずっと抑えられていたから変な感じがする。
私は耳をピコピコと動かして、調子を整えた。
何故かその様子を、陛下や宰相など獣人チームのお偉方がニヨニヨしながら見ている。
あ、うん、子リスのこの仕草可愛いですよね?
場の空気も変化したみたいだから良いか。
そんな中、私と無理やり契約させられてしまった二体の精霊、キラとドラが近付いて来た。
『あ、あの、あの子も精霊界でお仕置きなのかな? 』
『っく、わい達がきっちり止められればこんな事にならんかったのに! 』
ものすごく後悔している。
近くにいただけに、その思いは強い。
「………ちょっと聖女さんとお話してみるよ」
私はそう言うとスタスタと聖女さんに近付いた。
私に気付いた聖女さんの表情が固まった。
そんな聖女さんに近付いた私は、聖女さんの顔に手を伸ばし、そして………。
「い、いひゃい! にゃにすりゅんでしゅか?! 」
私は思いっきり聖女さんのほっぺを両手で引っ張った。
聖女さんが文句を言っているけど、そんなの聞こえなーい!
「何をするって、もちろんお仕置きですよ? 被害に遭ったのは私ですからね。こういうことは自分でしないと。さあ、まだまだ行きますよ? ふふ、よく伸びるほっぺですね〜。ほい、それ、はい」
私は聖女さんのほっぺを掴み、たてたて、よこよこ、ぐるぐるしまくった。
いくら子リスの力とはいえ、結構な時間捏ねくり回したから痛いはずだ。
でも、このぐらいは全然罰にならんのよ、本来なら。
だけど私は当事者だし、子リスだし、空気なんて読まないし、こんなセリフを言ってもいいんだ。
「ふう、…………精霊王様! 私、自分で聖女さんにお仕置きしました! それにこのまま聖女さん、うちでお預かりします! シルフィード国の聖女が私のところにいるのはお仕置きになりませんか? 」
私の言葉にこの場にいるみんながギョッとした顔をした。
していないのは私が自ら契約した精霊とトナトナ、ヴォル、あとは殿下ぐらい。
無理やり契約させられた二体すら、驚きの表情を浮かべている。
『………あらあら、フィル……じゃなくてモケゾウの主はなかなか面白い子ね。まあ、本来であれば許さないところだけど、当事者っていうのもあるし、精霊のことを考えてくれてしたことみたいだから、今回だけは大目にみるわ。ただし、その聖女っていうやつはしっかり教育してちょうだいね? 』
「は、はい! ありがとうございます! 」
精霊王様の許可ももらえたし、これで聖女さんは精霊界での強制労働はなくなる。
あとはキラとドラが戻れるようにしてあげれば良いよね。
『モケ! 大丈夫モケ! しっかり躾けるモケ! 僕に任せてほしいモケ』
どうやら教育係はモケゾウが引き受けてくれるようだ。




