第七十八話 出てきてくれたよ!
正直、それをやったら面倒な事になる確率かなり高いけど、ここはモケゾウを信じてやってみよう。
私はモケゾウに言われた通り、大きな声でこう言った。
「精霊王さまーーーー!! 出てきて下さーーーい!! 」
私の発した言葉にシルフィード国の人たちがギョッとした顔をしている。
みんなあたりをキョロキョロと見ている。
「は、はは。何も出ないでわないか! 精霊王様を呼ぶなんて獣人にあるまじきことをするなんて、やはりそんなヤツが上級精霊と契約しているなんて嘆かわしい! 今からでも遅くはない、とっとと契約を破棄して、聖女に全ての精霊を渡すのだ! 」
またあのやらかしエルフが騒いでいる。
でも、そんなの全然気にならない。
だって………もう、いるもの。
『ふふ、面白いことを言うエルフですね。精霊の意思を無視するなんて………』
精霊王様は、私が呼んですぐにいらっしゃっていた、天井付近に。
そこからみんなを観察していた。
『いつからエルフは、そんな傲慢な考えを持つ者が現れてしまったのかしらね。ちょっと魔法が上手くて、ちょっと長生きなだけで、そんなに変わらないでしょう?他の種族と』
精霊王様にとってみれば、ちょっと魔法が上手くて、ちょっと長生きな種族ぐらいの扱いなのね。
天井付近にいた精霊王様が、フワッと降りたった。
精霊王様がやらかしエルフを見つめる。
見られたそいつは、流石にヤバイと思ったのか途端に落ち着かなくなった。
でも、もう遅いよ。
流石に他のエルフは精霊王様の登場に驚いてはいたが、すぐにみんな頭を下げた。
そんなエルフを無視して精霊王様は私のところへやって来た。
『ふふ、久しぶり………でもなく、あっという間の再会ね? フィルウィルデルフィの主さん………って、わかっているわよ! モケゾウでしょ? もう、本当に融通が利かないわね〜。あ、こら、モケゾウそんな目で私を見ないでちょうだい! 』
モケゾウの方を見てみると、非常に不満そうな眼差しで精霊王様を見ていた。
「あの、精霊王様。突然お呼びしてしまって申し訳ございません」
私の謝罪に精霊王様は、微笑んで。
『別にあなたが悪いわけではないでしょう? それにこれを提案したのはフィル……いえ、モケゾウなのでしょう? 私はそんなあなたの呼びかけに応えただけよ。これでこの間の借りを返すことが出来るわ』
精霊王様の言葉にエルフに動揺が広がっている。
「え? 精霊王様を呼び出したぞ? 」
「しかもかなり親しげではないか………」
「精霊王様に貸しがあるなんて………」
『それで、シルフィード国の神木だかが枯れ始めているから、上級精霊を複数持つ者を聖女にして閉じ込めるっていう話だったかしら? 』
ん? 微妙に違うけど………。
あ、でも、何人かのエルフの顔色が変わった。
なるほど、神木の為に幽閉してその力を使えっていう話なのかな?
「い、いえ、そのようなことは………」
シリウスさんが慌てて否定しているけど、何人かのエルフは目を合わせようとしない。
シルフィード国も一枚岩ではないのだろうね。
『まあ、イイわ。神木ってあなたたちが呼んでいるモノは、ただのちょっと発育の良い、普通の木だから。枯れてきているのだって、ただの寿命よ。どうにか出来るものじゃないわ』
あ、神木って言うから、何か特別な力があるのかと思ったら普通の木なんだ。
確か世界樹とか言ってなかったっけ?
この精霊王様の発言に、シルフィード国に皆さんと、ついでに館長様もビックリしている。
そんな中、やっぱりアイツがやらかした。
「う、嘘だ! あの木は代々シルフィード国の神木として、エルフが守ってきたもの! それが普通の木だなんて………。だ、だいたい、なんでそんなことがわかるんですか?! 」
『なんでわかるかですって? そりゃわかるわよ、だってその木私があげたんだもの』
「え? 精霊王様が………」
『そうよ。昔、仲が良かったエルフの子が王様になったんだけど、なんか国のシンボルになるようなものを探しているって言ってて、王様になったお祝いにあげたの。でも、ちゃんとその子には言ったわよ? これは普通の木だから大きくて丈夫だけど、特別な力は何もないわよって』
明かされる神木の真実。
これが良いことなのか、悪いことなのかわからないけど、確実にシルフィード国の皆さまにはダメージが入っているね。
『まあ、そういうことだから、この子リスちゃん連れて行っても無意味よ。あの木はもう枯れるだけだから。あと、この子に使った精霊の契約を無理やり変える術だけど、精霊に喧嘩売っているのよね? 使ったやつもだけど、その術を教えたヤツも、しっかり罰は受けてもらうわよ。特に術に関してはしっかり、調べるわよ。無理やり契約を変えるだなんて精霊なめてるでしょ? 』
あ、精霊王様、めっちゃ怒ってるじゃん。




