第七十四話 ペンダントが良い仕事するよ!
「…………で、要約すると、シルフィード国の神木である世界樹が枯れてきていて、それをなんとかするには力の強い精霊と契約している聖女の力が必要と………だから私の力、というかうちの子たちの力が欲しかったということですね? 」
シリウスさんの話を聞いた私は、とりあえずその話をまとめてみた。
だって、めちゃくちゃ長かったんだもん。
なんで、こんなすぐに終わっちゃう説明に一時間とかかかるの?
アレだよ、なんかわからないけど、シルフィード国の始まりから話が始まっちゃったからだと思う。
始まりの聖女がどうのとか、何度も国を救った英雄の話とか、神木にまつわるいろいろな雑学とか、本当に必要な部分だけ話してくれれば、三分で済んだよ!
「そうですね、その通りです」
「でもシリウスさん。うちの子の力が欲しいと言っても、ご存知の通り精霊は自分で契約する相手を決めてますよ? はい、どうぞ! って言って渡せるようなものじゃないです」
「はい、なので、出来ればベルンハルト嬢に聖女になっていただき、我が国へ来ていただければと考えておりました」
いや、そんなに簡単に違う国に行くって話に、乗るわけないじゃない。
それに今まで頑張って聖女をしてきた聖女さんにも失礼な話だと思う。
こんな他国のちびっ子に、自分が今まで精一杯頑張ってきたものをとられるなんて。
「私はこの国が好きなんで、シルフィードで聖女にはなりませんよ」
私の言葉にシリウス様の後方に控えていた別のエルフが。
「し、しかし! そうすると世界樹が! 」
「我が国の神木が枯れてしまう! 」
「あれが枯れてしまえばどんな災いが起こるか! 」
そのうち、興奮してきたのか一人のエルフがこう叫んだ。
「聖女リズベッタよ! 今こそ、そなたに授けた術を使う時だ! 獣人風情がなんだと言うのだ! さあ、聖女よ、使うのだ!! 」
そのエルフの言葉に他のエルフが動揺している中、聖女さんだけは手をキツく握り、そして何かの呪文を唱えた。
聖女さんが詠唱を終えると、聖女さんの手から何か煙のようなものが私の方へと向かって来た。
どんな術を使ったかは知らないけど、私に向けてその術を発動したのであれば、喧嘩を売られたと捉えて良いと思う。
すぐに異変に気付いたモケゾウたちが私の前に来ようとしたが、それを私は止めた。
だって、喧嘩を売られたのは私だもの。
『あ、主〜』
モケゾウが心配そうに私に声をかけてきたけど、私なら平気よ?
今日はね、念のためにアレをつけてきてたの。
私がそれをモケゾウたちに見えるようにしてあげたら、安心したようで構えを解いた。
「ねえ、聖女さん。術をかけてきたのはそちらなのだから、なんの術かは知らないけど、私にはそれに反撃する権利があると思うの。それによって何が起きても、私は知らないよ? 」
私の言葉に、聖女さんと、聖女さんをけしかけてきたエルフが眼差しをきつくする。
睨まれても怖くないよ。
そして、いよいよ煙が私を包み込もうとした瞬間、私の胸元が光った。
その光によって、煙は全て聖女さんの方へと戻っていった。
そのスピードは、私に向かってきた時よりもかなり早い。
なんでこんなことが起きるかといえば、もちろん、私が身につけているあのペンダントのおかげ。
前に殿下からいただいた、あの非常に高価な一品に、これでもかといろいろ付与したあれだ。
たぶん発動したのは、『反射』と『二倍返し』。
我ながら良い仕事しました。
「え?? や、いやーーー!!なんでこっちに来るの?! やだ! 来ないで!! 」
「な、なんでこちらに?! お、おい、やめろ!! 」
聖女さんとあのエルフの声が響く。
完全に煙に覆われた聖女さんの泣き声が聞こえる。
さて、なんの術をかけようとしてたんだか。
煙が薄くなり、聖女さんの姿が見えるようになった頃、こちらに何かがやって来た。
どうやら聖女さんの精霊のようだ。
二体の精霊はなんとも言えない表情をしている。
「どうしたの? もしかして反撃に来たの? 」
私の問いかけに二体は意外なことを言った。
『あの〜、本当にうちのバカがすみません。そしてとても言いにくいんですけど、あの………』
『ほんと、すんません! あのバカの術のせいで、強制的に、俺たちあなたと契約状態になってもうてる! マジ、すんません!ほんと、あいつバカで! てか、身体大丈夫? 俺たちも一応上級なんすけど 』
………なんですと?!
私の馬鹿みたいに豊富な魔力のせいであんまり感じなかったが、確かに魔力が少し減っている。
んで、二体の精霊ときっちり繋がりが出来ているね。
これは………どうすれば良いのかな?




