第七十一話 対面するよ!
ついにシルフィード国の人たちに会う日が来た。
私は身支度を整え、迎えの馬車に乗り、王城へと向かった。
もちろんいつものように、モケゾウ、フラン、カッパ、マサムネ、トナトナ、それからヴォルも付いて来ている。
モケゾウたちには、騒ぎになると困るから姿を消してもらっていた。
いつものように城に到着すると、そこには既に殿下が待っていてくれた。
「今日はわざわざ来ていただいて申し訳ありません。シルフィード国からの客人は、昨日無事到着し、今日正式に陛下へ挨拶との手筈になっています。その時にフローラ嬢も同席していただく形となりますので、よろしくお願いします」
殿下はそう言うと、私の手を握り城の中へと案内してくれた。
今回は他国からの客人と会うということで、謁見室での集まりとなるらしい。
謁見室へ入るとそこには陛下、王妃様、宰相様、エリー様と騎士団の方々が待っていた。
どうやら今からシルフィード国の客人が、この部屋へ来るようだ。
謁見室の扉が開き、現れたのはシルフィード国からの客人その数、十人。
みんなエルフのように見える。
そしてその大人ばかりの中に、一人だけ少女が混じっていた。
その容姿は、ストレートの腰まであるサラサラの金色の髪に、アクアマリンのような瞳、まさにみんなが思い浮かべるエルフの姿であった。
「この度は、このような機会を設けていただき誠にありがとうございます」
そう挨拶したのは、銀色の髪の、見た目三十歳ぐらいのエルフの男性だ。
彼がこの団体の責任者らしい。
「いや、こちらも会う機会が早々ない、シルフィード国の方々にお会い出来て光栄だ」
陛下がそう返す。
そう挨拶を交わす面々だが、さっきから妙に視線を感じる。
エルフの皆さんが、こちらをチラチラ見ておられるからだ。
ちなみにその視線は、私のそばに控えているヴォルにも注がれている。
その声は聞こえないが、なんで魔族が獣人の子供に付き従っているんだよ! ってところだろうか?
私がそんな視線を浴びている間にも、陛下とシルフィード国の代表の方の会話は続く。
そして、その当たり障りのない話がひと段落した頃、ようやく本題へと話が移った。
「………そろそろ、そちらの方を紹介頂いてもよろしいですか? 」
そう言って私の方を見た。
「うむ。ベルンハルト嬢こちらへ」
私は陛下に呼ばれ、代表のエルフ、名前は確かシリウス・フォン・シルフィードの前へ向かった。
………シリウス・フォン・シルフィード?
………最近この名前に似た名前を聞いたよね?
そして近くでまじまじとそのエルフの顔を見てみる。
………あー、完全に身内だね、外見の年齢は違うけどそっくりだ。
「こちらが、私の息子、リースの婚約者のフローラ・ベルンハルト嬢だ」
陛下から紹介された私は。
「お初にお目にかかります。フローラ・ベルンハルトと申します」
「ああ、あなたが………。初めてお会いしたばかりで、こんなお願いをするのもなんなんですが、契約されている精霊を見せていただくことは可能でしょうか? 」
私は一応陛下の方を見てみた。
陛下は大きく頷いている。
「わかりました。みんな出てきて! 」
『モケ〜』
『はい!であります!』
『カパカパー』
『参上! 』
『ついでに僕もいるよ〜』
あ、トナトナもついでに出てきた。
これだとトナトナも私の契約している子に思われちゃうじゃん。
そして、なんでヴォルはそっちに移動した?
それだとヴォルも私が契約しているみたいになるじゃん。
なんでそんなに胸を張ってそこにいるのか、私には理解不能だよ?
そして、そんなみんなを見たシルフィード国の人達は案の定な反応だった。
「な、なんと! 本当に精霊を複数! 」
「しかも皆、上級! 」
「え?え? え? あちらのトナカイは………聖獣?!」
ほら、トナトナったら〜。
嬉しそうにお尻フリフリして、踊っている場合ではない。
なんだか混沌としてきた中へ、先程のエルフの少女がやって来た。
するとシルフィードの代表シリウスさんが。
「ああ、リズ、こちらへ。ベルンハルト嬢、この子が我がシルフィード国の聖女、リズベッタです」
「初めまして。リズベッタです」
名前を名乗った少女は、笑顔だけど目が笑ってなかった。
まあ、でも、そんな目で見られても全く怖くない。
それより、敏感にその空気を察した、うちの子たちの様子の方が怖いわけで………。
「あの、ベルンハルト様、私と二人でお話してくれませんか? 」
うん?
何を言っているのかな? この子は。
そんな目で見てくる子と二人って、どう考えたって嫌な予感しかしないわ。
なので、子供な私は空気を読まずに。
「え? イヤです」
こう答えてみた。
その瞬間、周りの大人、主にシルフィードの面々が固まった。
まさか断られるとは思っていなかったようだ。




