第七十話 来客だよ!
シルフィード国のことはひとまず置いておいて。
図書館から帰宅した私は、来客を迎えていた。
『今回は迷惑をかけて本当にごめんなさいね〜』
私の目の前には、一人の精霊。
特徴的な頭の飾り。
青いボンボン。
そう、この子が魔族と結婚したという『アオボン』だった。
『モケ〜、アオボンわざわざこっちに来たモケか〜? 』
『あ、隊長も久しぶりね。そうなのよ〜ママちゃんから今回のこと聞いて、こりゃ黙ったままだと義理にかけると思ってやって来たの。改めて、私がママちゃん……えっと、精霊王の子のアオボンよ。今は魔族の国で奥様生活やってるわ。本当は旦那も来るって言ってたんだけど、精霊の姿でバビューーンと来た方が速いから私だけで来ちゃったの。そこにいるのが今回の件に関わっている魔族ね? なんか、あなたにも迷惑かけてごめんなさいね』
なかなかフレンドリーな精霊だ。
いや、基本モケゾウの部下の子たちはこんな感じか。
『もう、本当に、うちの旦那がしつこくて〜。結局絆されて結婚したんだけど、頭の固い連中がグチグチ言って来てね〜。ママちゃん激怒よ。でも、うちは普通に子宝に恵まれてたからすっかりそのこと忘れてて。ママちゃんもそういうの、結構忘れっぽいから。あ、それでお詫びと言ってはなんだけど、コレ受け取ってくれない? 』
言うこと言ってなんか渡して来た。
そう言うところ、お母様の精霊王様にそっくりだね?
アオボンが渡してきたのは、なんか不思議な色の丸い硬い石。
「えっと、コレは何かな? 」
私がそう聞くとアオボンが。
『コレ、卵。何が生まれるかはわかんないけど、悪いものじゃないわよ。ちゃんとママちゃんにも見てもらったから。きっと役に立つのが生まれるはず………たぶん』
最後のたぶんでいろいろ台無しだと思う。
『モケモケ〜。確かに悪い気配はしないモケ〜。むしろコレは………モケ。主〜、もらっておいて損はないモケよ〜』
私はアオボンから石のような卵を受け取った。
見れば見る程不思議な色。
何色でもない、でも何色にでも見える、そんな不思議な卵だ。
大きさは私の手の中に収まるぐらい、持ってみると意外と軽い。
『この卵、良質な魔力を与えると良いみたいだから、肌身離さず持ってね』
「え? 私がずっと持ってるの? 」
『そうよ。だってこの中で一番良質な魔力を持ってるのは、隊長のご主人様でしょう? その卵、ちょっとやそっとじゃ壊れないから、安心してちょうだい』
そういう心配をしているわけではないのですが………。
手に持って持ち歩くわけにはいかないし。
………結果、こうなった。
『あら、とても良く似合っているわ』
『モケモケ〜、主〜、良い感じモケ〜』
私の腰に、手作りしたポーチをつけて卵を装着した。
ちなみにポーチには頑丈にガチガチに保護魔法をかけてある。
ウチの子たちが、あーでもない、こーでもないと言いながらいろいろしていたのだ。
その中にはもちろん、トナトナとヴォルも含まれる。
『うんうん、それじゃあ、私は帰るわ。それ大事にしてね。じゃあ、隊長、みんな、それから隊長のご主人様、またね』
そう言うとアオボンはバビューーンと飛んでいった。
魔法とかは使わないのね?
『モケ〜、あれがアオボンの魔法モケよ〜。長距離もあっという間に飛んでいくモケ』
「なんか、すごく精霊王様のお子様だってわかる子だったね」
『モケ〜、他にも精霊王様の子はいるけど、アオボンが一番似ているモケね〜』
まあ、とりあえずこの卵が生まれるのを楽しみにしておきますか。
さっきからやたら卵が震えているのは、気のせいだと思うことにしよう。
それからは、ずっと卵は持ち歩いている。
夜寝る時は、私のベットの近くに卵専用の置き場を作り置いてあるのだけど、どうやら私が寝た後でモケゾウたちが何かやっているらしい。
たまたま、夜目が覚めた時に卵を囲んだウチの子たち(ヴォルを除く)が、何やらブツブツ言っていたのだ。
『モケ〜、主には絶対服従モケよ〜』
『主様に逆らったら………でありますよ』
『カパ、カパカパ』
『主殿を絶対に守れ、出来なければ………だからな』
『ふふん、自分が一番強いとか思わないでね〜』
………聞かなかったことにしよう。
私は夢ということにして、もう一度眠りについた。
朝起きて卵に触れた時に、いつも以上にプルプル震えていたのはきっと気のせいだと思う。
そうやって、肌身離さず持ち続けていた卵だが、もう数日中に生まれるという話が出たところで、シルフィード国からの使者も数日中に到着するという話が届いた。
面倒なことになりそうだけど、まあ、なんとかするしかないか。




