第六十九話 調べたよ!
シルフィード国。
その地にはエルフと人が共存している。
特に精霊への信仰が厚く、複数の精霊と契約している者は、『聖者』、『聖女』と呼ばれ、人々から王族以上に信頼、尊敬される。
特に精霊王との面会を果たした者は、『大聖者』、『大聖女』と呼ばれ、圧倒的な権力を手にする。
私はそっと本を閉じた。
今日は図書館へ来て、シルフィード国について調べてみたのだが。
………これは、まずいのではないだろうか?
私、モケゾウ、フラン、カッパ、マサムネと契約しているし、よくわからないうちに聖獣であるトナトナから祝福も受けたりしている。
そして、問題は精霊王様なんだけど、隣国との騒ぎの時に問題起こした精霊を迎えに来た時に会ったほかに、ついこの間、ひょっこりうちに現れたのだ。
大事なことなんでもう一度言うけど、うちに現れた。
なんの前触れもなく、モケゾウが『モケ〜』と言ったときには、もう目の前にいた。
しかもそんなに大事な用件とかではなく。
『この間は迷惑かけてごめんね〜。これからも何かあったらよろしくね。じゃあ、この間のお礼と何かあった時の前払いとして加護付けておくわね。………はい! 出来た! それじゃあ、また今度会いましょう』
言いたいこと言って、やる事やって帰ってしまったのだ。
こんなに軽くていいの? 精霊王様。
で、ここで本の内容が問題になってくるわけだ。
『精霊王様との面会を果たした者は、「大聖者」、「大聖女」と呼ばれ、圧倒的な権力を手にする』
………私、めっちゃ会ってますけど?
この本の内容が本当なら、既に私『大聖女』どころか、『大大大聖女』ぐらいになっちゃっているのでは?
私がそんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「何をそんなに悩んでるの?一応僕年長者だし、話ぐらいなら聞くよ? 」
話しかけてきたのは、図書館の館長様だった。
いつもならすぐに古代語の本を読む私が、何か違う本を読んでいると気付いて声をかけてきたようだ。
………あれ? よく考えたら館長様、エルフだ。
もしかして、シルフィード国について詳しい?
「あの、館長様。館長様はシルフィード国のこと詳しいですか? 」
「うん? シルフィード? まあ、詳しい方じゃないかな? だって僕の母国だし」
エルフだからもしかして? と思って聞いたらやっぱりだった!
本より実際に住んでた人に聞いた方が早い!
「あの、私、シルフィード国について知りたいのですが………」
「え? シルフィードのこと? 僕が知っていることなら教えてあげるけど、どんなこと? 」
「えっと、精霊信仰とか聖者、聖女とかについてです」
「あ〜、なるほどね………たぶん君は聖女になれるよ。というか、すぐに聖女認定だね。それから、その本を見てたってことは、大聖女のことも調べたんでしょ?……… もしかしてだけど、精霊王様に会ったりとかしたりしてないよね? 」
館長様がちょっと焦りながら聞いてきた。
コレは、マズい状況?
私が誤魔化そうか悩んでいると、モケゾウがサラッとバラした。
『モケ? 精霊王様には主は会っているモケよ〜。この間は加護ももらったモケ。コレで主の護りもよりガッチガチになったモケ〜』
ちょ、ちょっと! モケゾウさん!
ガッチガチになったモケ〜ってご機嫌に言っている場合じゃないよ?!
ほら、見て!
館長様がガッチガチに固まっているの、見て!
「あ、あの! 館長様! 精霊王様に会ったのは本当に、ちょっとした偶然なんです!! 」
『モケ〜、精霊王様、主の家にやって来て加護渡していったモケ〜』
ちょっ! も、モケゾウさーん!!
館長様がなんだか涙目で、本当に? みたいな目でこっち見ているよ?!
「フローラ・ベルンハルト嬢、私の名前はマリウス・フォン・シルフィード。もし、貴方が何かお困りの場合は、私が微力ながらご助力させていただきます」
館長様が改まって自己紹介して来た。
しかも、名前にシルフィードって入っているんだが………。
もしかして、シルフィード国の人はみんな名前にシルフィードが入っているとか?
『モケ、絶対違うと思うモケ〜』
だから、何故いつも私が考えていることがわかるの? モケゾウさん。
『主はわかりやすいモケ〜』
ほら、また〜。
「えっと、館長様、いつも通りでお願いしますね。別に私、聖女とかになったわけじゃないので。それから、お名前なんですが………」
私の言葉に館長様がニッコリ微笑んで。
「私の名前が役に立つこともあるでしょう。何かの折には、是非使って下さい。身分は………シルフィードでちょっと名を知られる存在とだけ申しておきましょうか」
それ以上は今は言わないという意志を感じる。
とりあえず、味方だと思っていいのかな?




