第六十二話 引いても駄目なら押してみろ!
トナトナが、漂っている精霊に聞いた場所にやって来た。
岩場の奥にひっそりと存在する洞窟。
しかも、認識阻害の術がかけられていたようで、普通の人では近付けない場所。
………まあ、でもうちは平気でしたけどね?
モケゾウたちがなんかイジっていましたよ。
『あ、割れたモケ〜』とかたまに聴こえてきてたけど、何が割れていたのでしょうか?
ついでに『これ、絶対切っちゃいけないやつであります!』とか、『繋げたらなんとかなるだろう』とか、非常に慌てたように『カパカパカパカパ!!』とか聴こえてきたけど………。
え? ちょっとみんな本当に大丈夫なんだよね?!
『主〜、出来たモケ〜。入れるモケよ〜』
どうやら無事洞窟内には入れるようだ。
切ったら駄目なやつとか、本当に大丈夫なんだろうか?
「モケゾウ、ここって魔法で隠されていたんだよね? もしかして奥に犯人いる? 」
『モケ〜、まだいろいろ仕掛けがあるみたいで、イマイチわかんないモケ。もうちょっと先に進んだらわかると思うモケ〜。だから、このまま行くモケよ〜。主は心配しなくても後ろでデ〜〜〜ンと構えてくれていれば良いモケ』
そう言うと、モケゾウとその愉快な仲間たちは、先頭きって洞窟内を進んで行った。
私と殿下、そして騎士様たちはその後ろをついて行く。
ちなみにトナトナはその辺のイワシをつまみ食いしながら進んでいた………えっと、トナトナって聖獣なんだよね?
洞窟内は薄暗くて、ジメジメしている。
なので大変滑りやすくなっているわけで………。
つるっ
普通に滑った。
まあ、運動神経は悪くないから、バランス取れるし〜、と思っていたら後ろから殿下に支えられた。
「フローラ嬢、ここは滑りやすく非常に危ないので、私と手を繋いでいきましょう。あ、もし良かったら抱き上げて進んでも良いのですが………」
「手を繋ぎましょう!殿下」
私は速攻手を繋ぐことを了承した。
抱き上げられて洞窟内を進むなんて、恥ずかしくて無理です。
まあ、本当だったら幼女だから問題ないのか?
いや、でも、私も殿下もお互いに前世の記憶があるのだし、やっぱり恥ずかしくて無理だな。
殿下と手を繋いでモケゾウ達の後に続く。
心なしか、隣で手を繋いでる殿下の機嫌が良さそうだ。
時折ニコニコしながらこちらを見てくるのだが、美形にそんな風にされるのに慣れていないので手加減してほしい。
モケゾウ達は、いろいろな仕掛けを見つけては解除しているようだ。
時には触れただけで、時には叩き潰し、時には水圧で、そして時には切り刻んで進んで行く。
後からついて行く殿下や騎士様達が、ちょーーっと引いている。
そうして進んで行ったら、洞窟の最奥で、いかにもな扉を発見した。
こんな洞窟には不似合いの真っ赤な扉を。
「ねえ、モケゾウ。このあからさまに怪しい扉を開けるんだよね? 」
『そうモケね〜。んで、今調べたモケど、この扉普通に開くと爆発するモケ』
「そっか〜、爆発するんだ。………って、爆発!?」
『モケ。たぶんモケど、ここら辺一帯が全部巻き込まれて、洞窟も全部壊れちゃうモケ』
思ったより規模の大きい爆発のようだ。
一つの扉につけるには過剰戦力ではなかろうか?
自分の身だって危ないかもしれないのに。
「じゃあ、奥には行けないのかな? 」
『大丈夫モケ』
そう言うとモケゾウは、拳をシュッシュとさせ始め、そのまま扉に向かい………扉目掛けて凄いスピードで拳を繰り出した。
ドッガーーーーーン!!
「「「えーーーーー!!」」」
私と殿下と騎士様達が驚きの声をあげた。
扉はそのまま部屋の中に飛び込んで行った。
『引いて開けると爆発する仕掛けだったモケから、中に押し込んでみたモケ』
モケゾウが満足そうにそう言った。
そのまま私の近くに飛んで来たから、とりあえず頭を撫でておいた。
「えっと、ありがとうモケゾウ」
『どういたしましてモケ〜』
モケゾウが楽しそうだから、まあいいか。
ところで、凄い勢いで部屋の中に扉が入っていったんだけど………中にいる犯人(仮)は大丈夫かしら。
私たちが部屋の中に入ると、壊れた扉を呆然と見つめている、怪しいローブ姿の人がいた。
『あ、兄貴〜』
とても小さい声が聞こえた。
声がした方を見ると、天井から鳥籠の様なものが吊るされており、その中にマグローに似た子が倒れていた。
『あーーー! マグニー! 』
マグローが慌てて鳥籠に近付く。
だが、マグローが鳥籠に触れた途端。
バチッ
電撃みたいのが走った。
それを見たマサムネが、いつもの小さい刀を出して鳥籠に向かっていった。
『切る!!』
ガッシャーーーン!!
マサムネが素早く刀を振り回し、鳥籠を破壊、同時にフランとカッパがマグニーを抱えて、鳥籠の中から助け出した。
『マグニー! マグニー! 大丈夫か? 』
『う、あ、兄貴、は、は、腹減っただ………』




