閑話 ここ最近の騎士様達
「「「よろしくお願いします!!!」」」
今日も精霊様達の訓練を受けている。
俺はこの間、転移の魔方陣で飛ばされた騎士だ。
あの時は正直死を覚悟した。
あの数の魔物に囲まれたらもう無理だろうと誰でも思う。
でも、俺は、俺達は無事生還を果たした!
主にベルンハルト様と精霊様の力で。
もともとベルンハルト様は高位貴族を恐れない令嬢として有名だったが、そこに精霊と契約もしたっていうことでますます有名になった。
確かに可愛らしいその仕草は高位貴族をメロメロにさせていたが、騎士の中には強さが全てという脳味噌まで筋肉の勢力が少なからず存在していた。
その勢力がベルンハルト様に屈したのだ。
何故なら強いから。
俺達が劣勢に立たされていたあの状況、いくら精霊様がいたからと言って普通の貴族の令嬢では太刀打ち出来るわけないんだ。
なのにベルンハルト様は華麗な剣技で魔獣を圧倒した。
可愛らしさと強さの両立、奇跡の瞬間だった。
そしてあの時、ベルンハルト様の剣技を見ていた騎士は、皆、脳味噌まで筋肉だった。
正直、俺達はベルンハルト様に仕えたいと思っている。
チャンスはある、ベルンハルト様はリース殿下の婚約者だからだ。
将来嫁いで来られたら是非ベルンハルト様の護衛として仕えたい。
その為には今より強くならねば!
そう考えていた俺達に精霊様直々に鍛えてくれると言ってくれた。
俺達は喜んだ………それが地獄への入り口とも知らずに。
「ウギャーーーー!」
「ヒーーーー! 燃える!燃える! 」
「 待ってーーー! 飛ぶーーーー! 」
阿鼻叫喚だった。
そもそも精霊様達はみんな常識はずれに強い。
噂では調子に乗っていた魔術師隊の精霊と契約者をボコボコにしたとか、王弟であるエイドリアン様の精霊を舎弟にしたとかいろいろ聞く。
聞いた時は話を大きくし過ぎだろうと笑っていたが、むしろ小さめな表現だった!
今、騎士団の訓練場はいろんな属性の魔法が乱れ飛んでいる。
俺達はそれを避ける訓練を受けているのだが、もう地獄だ。
風で飛ばされ、火炎に巻き込まれ、水の球に突っ込まれ、土の中に埋もれる。
そして辛いのがダウンが許されず、回復させられまたやらされるのだ。
もしかして新手の拷問か?
『モケ〜、そこ〜、まだまだイケるモケね? それじゃあ、次は………』
ヤバイ、訓練に集中していなかったのがバレた。
俺達は死ぬほど頑張った。
何度か川の向こうにいる死んだばあちゃんが見えたような気がする。
まだこっちに来るなって言われたから踏ん張った。
精霊様達も凄いが、たまに一緒に来る聖獣様も凄い。
俺達をあの森から運んでくれた命の恩人だ。
最初は小さなヌイグルミのような大きさだったのに、あっという間に巨大化した。
俺達だけでも運ぶの大変なのに、ついでとばかりにあの森でベルンハルト様と精霊様が狩った魔獣も軽く運んでくれた。
そんな聖獣様はイワシを好まれる。
俺達は感謝の気持ちを込めて、新鮮なイワシを手に入れては聖獣様に捧げている。
『わーい、今日もイワシいっぱいトナ〜。みんなありがとね〜。この国は良い国だな〜。やっぱり移住してきて正解だったよ〜』
イワシを口いっぱいに頬張った聖獣様は満足そうだ。
ところで、聖獣様はトナカイの姿をしているのだが、なんか勘違いした貴族が聖獣様を利用してのし上がろうとした。
まあ、要するにトナカイ獣人の一部が聖獣様を担ぎ上げようとしたんだ。
でも………瞬殺された。
精霊様が言うには聖獣様だけがターゲットだったら軽く退けて終わる話だったらしい。
だけどアイツらは精霊様の逆鱗に触れた。
そう、ベルンハルト様をも巻き込もうとしたらしい。
そこからは精霊様と聖獣様が協力してその勢力を潰した。
最終的には全部の証拠も揃えて、陛下の前に連れて行き、聖獣様が念入りに踏んでいた。
たぶん皆様の実力ならあっさり始末することも出来たはずだが………その事を後日聞くと。
『モケ〜、主には血生臭いのあんまり見せたくないモケ〜。主の望みは可愛らしい物と平和な暮らしモケ〜。………まあ、たまに脳筋の香りはするモケど。それはそれとして、主がそう願っているなら僕たちも平和的に解決するモケ〜』
なるほど、だから陛下に裁定を預けたと。
あ〜、だからたまに王城の入り口にグルグル巻きの小悪党が吊るされているのか。
その事も聞いてみたら、吹けていない口笛で誤魔化された。
え? 隠しているつもりなんですか?
最近は踏んだ跡もあるから、ますます誤魔化せないですよ。




