第五十九話 殿下と話したよ!
あれから数日経った。
父と母には本当に心労をかけてしまった。
家に戻ってからは必ず父か母のどちらかに抱きかかえられている。
私がまたいなくなってしまうんじゃないかとかなり心配しているのだ。
それほど今回の件は大きな事件だったってことか、本当にごめんなさい。
私が父と母に甘えさせてもらっている間にモケゾウ達は、お城に頻繁に出入りしていたようだ。
「ねえ、みんな、そんなに頻繁に何しにいっているの? 」
『モケ〜、もちろん訓練だモケ〜。主が助けた騎士達と魔術師と契約している精霊と、それから王子』
「え? 殿下も訓練してるの? 」
『僕の弟子だモケ』
い、いつの間に!
っていうか、お城ってそんなに簡単に往き来したり、勝手に訓練とかしても良いの?
『勝手じゃないモケ〜。あっちから頼まれたモケ〜。気が向いた時にはトナトナも行ってるモケ〜。そうすると騎士達がトナトナにイワシお供えしているモケよ』
うん、完全に馴染んでいる。
トナトナがうちに住み着いてからやたら庭の植物が元気なんだけど、聖獣効果ですか?
『いや、それはトナトナにくっ付いてきた精霊達だモケ〜。なんかトナトナを解放してくれてありがとう〜ってこの辺祝福しまくっているモケ〜。一つ一つは小さい力モケど、それが合わさって効果が出ているモケね。毎日がお祭り騒ぎモケ』
なんか勝手に我が家がお祭り騒ぎだった。
『そう言えば、王子が主に話があるから会いたいって言ってたモケ〜』
「話って、もしかして今度こそ………」
『違うモケ。婚約解消ではないモケよ。たぶん前世の話モケ〜』
モケゾウから殿下が話があると聞いた日に、殿下からお城への招待状が届いた。
「よく来てくれました、英雄………いや、フローラ嬢」
殿下がにこやかに迎えてくれた。
今日は中庭で殿下と二人………いや、モケゾウ達が一緒にいる、もちろんトナトナも。
「師匠達も来てくれてありがとうございます。お菓子と騎士達がイワシを準備してますので召し上がって下さい」
モケゾウ達とトナトナは用意されたお菓子とイワシを早速いただいている。
あ〜、みんな自分よりも大きいケーキと格闘している………うん、全身クリームだらけだね、帰ったらお風呂直行だよ。
そしてトナトナ、騎士様達がいっぱいイワシくれるからって三匹同時に口に入れるのはやめた方が良いと思う、その状態のトナトナを拝んでいる騎士様もいるが、今のトナトナはただの食いしん坊だ。
「殿下、なんかモケゾウ達が訓練だって言って頻繁にお邪魔しているようですが大丈夫ですか? 」
「ええ、大丈夫です。騎士も精霊達も頑張って訓練を受けています、もちろん私も。なので感謝こそすれ、フローラ嬢が心配することはありませんよ」
殿下の言葉にホッとする。
「………フローラ嬢。私はあなたにずっと謝りたかったのです。この間の隣国の騒ぎの時に、私は前世のことを一部思い出しました。私が………私のせいであなたの前世である英雄様が………。ほ、本当に申し訳ありませんでした」
殿下はそう言うと深く頭を下げた。
でも、正直私も最期はよく思い出せない。
けれど、この間ふと頭に浮かんだように護りたかったから護ったんだ。
それに対して謝罪はいらない、むしろそれなら………。
「殿下、頭をお上げください。私は前世の記憶を全て思い出したわけではありませんが、殿下を護ったのは護りたかったからです。だから出来れば謝罪ではなくて一言『ありがとう』って言ってもらいたいです」
「英雄………いや、フローラ嬢、前世も今世も私を護ってくれて本当にありがとう。でも、これからは私も強くなるように努力するから見ててください」
そう言った殿下の顔はとても晴れやかな顔だった。
「ところでフローラ嬢、相談があるのですが。私とフローラ嬢の前世のことを家族には伝えた方が良いのではないかと思いまして。と言いますか、すでにいろいろ怪しまれています。特にフローラ嬢、さすがにあそこまで力を示したら、脳筋な騎士達は良くても陛下や宰相、それに叔父上達は何かあると察していますよ。なので、いっそのこと話した方が面倒がないと思います。まあ、どこまで信じてくれるかはわかりませんがね」
なるほど、やっぱり秘密に出来なかったから隠し通すことは無理だったか。
しかし、この可愛い子リスが前世ムッキムキの英雄だったって言っても笑い話ではないだろうか?
『モケ〜、僕がちゃんと証言するから大丈夫だモケ〜。それに、たぶん大丈夫モケよ、だって主が普通じゃないことなんて結構前からみんな気付いているモケし。話してもきっと、「あー、やっぱりね」ってなると思うモケ〜』
いやいや、モケゾウさん、私子リスだよ?
見た目庇護欲誘う可愛らしい幼女だよ?
どこにも筋肉ついてないんだよ?
「「「あー、やっぱり」」」
陛下、宰相、エリー様の声がかさなった。
え? 何すんなり信じているの?
子リスなんですけど?




