第四十八話 戦闘準備だよ!
私の目の前には瞳をキラキラさせた騎士様達。
私が何か言う度に
「「「はい!! 我らが戦姫様の為に全力で頑張ります! 」」」
って返ってくる。
その騎士様達は荷物をいっぱい抱えている。
この森で集めたお宝達だ。
ところで、何がどうなってこうなってしまったんだろう。
時を少々戻してみようか?
魔法陣に飛び込んだところに。
魔法陣に飛び込み、出た先は見渡す限り森の中だった。
薄暗く、辺りからは何かの叫び声が聞こえる。
騎士様達はどこにいるんだろう?
『モケ〜、主あっちから人の気配を複数感じるモケよ〜。何かと戦闘している感じモケ〜』
「それって騎士様達だよね? 何かと戦闘って、絶対魔獣じゃない。よし! 急いで合流しよう! 」
私達は急いで気配のする方へ走った。
しばらくすると前方に開けた場所が見えてきた。
見えたのは魔獣に囲まれた騎士様達。
既に怪我人がいる模様。
騎士様達十人ぐらいに対して、魔獣は大小五十体ぐらい。
明らかに獲物をいたぶるような戦い方をしている………私の目の前でナメた真似をしてくれる。
『モケ! 主、なんか既にキレキレのオーラが出ているモケよ〜。大丈夫、落ち着いてモケ〜』
モケゾウに指摘され、私はふーーーっと大きく深呼吸。
よし、落ち着いた。
前世ぶりの戦闘、慎重にいかないと。
なんて考えていると目の前で、怪我をした仲間を庇うように魔獣と戦っていた騎士様の死角に当たるところから魔獣が襲いかかろうとしていた。
「危ない!! 」
私はそう言うと地面を蹴って走り出し、そのままの勢いで騎士様に襲いかかってきた魔獣の横っ腹に蹴りをぶち込んだ。
魔獣は突然の予期せぬ衝撃に耐えられず、地面でピクピクしている。
『モケモケ〜、主、全然落ち着いてなかったモケ〜。慎重って言葉をこの数秒でどこにポイポイ放り投げたモケ〜』
モケゾウ達が呆れながらこっちにやって来た。
しょうがないよ、身体が勝手に動いたんだから。
私達の登場に騎士様達も、襲ってきていた魔獣もビックリしている。
でも、先に戦闘モードに戻ったのは理性のない魔獣だった。
見た目可愛い子リスの私を、美味しそうな獲物と認識したのかロックオンしてきたのだ。
可愛い子リス舐めんなよ。
「フランとカッパは騎士様達の近くで結界張って! たぶん今着けているマント? があれば出来ると思うから。モケゾウとマサムネは私と一緒に魔獣狩りだよ! 出来るよね? 」
『了解であります! 』
『カパカパ! 』
『モケ〜、僕の拳がうなるモケ〜』
『とりあえず、切る!』
みんなが持ち場につく。
私は騎士様達の持ち物を見て、自分で扱える武器がないか確認。
昔なら何でも、それこそバスターソードや大きいハンマーでも良かったんだけど今のこの可愛いおててではそんなもの持てないのですよ。
呆気にとられている騎士様達だったがようやく事態が飲み込めてきたらしい。
「な、何でベルンハルト様がここに?! 」
「え? 子リス令嬢………は!! 殿下の婚約者様?! 」
「いや、さっきの矢のような速さで飛び込んで来てからの蹴り………え? 」
みんな漏れなく混乱中。
でも、ここはある意味戦場なんですよ。
「騎士様方、落ち着いて下さい。ここはまだ魔獣がたくさんおります。お話はこの場の安全が確保されてからでも遅くありません。………ところで、そちらの騎士様と、そちらの騎士様、お腰につけたナイフを貸して頂けませんか? 」
私に指名された騎士様達はよく分かっていないようだけど、すぐに私にナイフを渡してくれた。
それから一応一言皆様に言っておこうか。
「これから起こることは、私と皆様の秘密と言うことにしておいて下さい。いろいろと面倒なので」
まあ、守られなかったらその時また考えよう。
私はナイフを右手と左手それぞれに持ち、魔獣の方へと歩み出した。
「な!? な、何をされるおつもりですか? 」
「え? あ〜、ちょっと一狩り? 」
私は騎士様にそう言うと今度こそ魔獣の方へと走り出した。
後ろで何か騒いでいるけど後回し。
魔獣の方を見ればモケゾウが拳シュッシュで魔獣を叩きのめしている。
あれって魔法なんだよね?
マサムネはどこから出したのか可愛い剣を『切る、キル』と言いながら振り回している。
じゃあ、私もやりますか?
私が出てきたのを見て魔獣達がこちらにやって来た。
完全に私のことをご飯だと思っている、ヨダレが凄い。
でもね、私だって君たちのこと良い獲物だって思っているよ?
だって君たち、前世でよく稼がせていただいていた魔獣だもの。
ふふ、これは良い手土産になりそうだわ。




