第四十六話 姫様やらかしたよ!
さて、あっという間に王城に到着したよ。
モケゾウ達は今は姿を消してもらっている。
四人も精霊がいたら目立つからね。
馬車の扉が開き降りようとすると、そこには笑顔で手を差し出している殿下がいた。
えっと、いつから待っていたんですか?
「ようこそフローラ嬢! さあ、降りてその姿をよく見せて下さい」
私は殿下の手をとって馬車から降りた。
殿下は私を見ると笑みを深め
「ああ、本当に似合っていますよ。ペンダントもしてくれたのですね? こんなにステキなフローラ嬢を不特定多数に見せるのは本当に嫌ですが、こうやってエスコート出来るのは婚約者の特権ですね。今日は私から離れないように気を付けて下さい」
「褒めていただいてありがとうございます。こちらのペンダントも私にはもったいないぐらい素敵な物で、着ける機会が出来て嬉しいです」
ペンダントは本当は着けるのが怖いくらい価値があるものだろうが、実際着けるとなるとテンションが上がるわけで。
前世ではこんなの着ける機会なかったからな〜、あっても価値あるプレートアーマーとかガントレットだよね、価値はあったけど可愛さなんてどこにもなかったよ、なんて考えていたら殿下が城内へ案内してくれながら今日の流れを教えてくれた。
「今日の歓迎会は本来であれば高位貴族のみの参加なのですが、隣国からの要請で特例でフローラ嬢の参加が認められました。なので、フローラ嬢には王族席の方へ来てもらいそこで隣国の方々に会っていただこうと考えています」
そりゃそうだよね、私下位貴族だし、何よりまだ六歳だから本来ならこんな歓迎会には参加出来ない。
あ、そういえば気になっていたことがある。
「あの殿下、隣国の姫様はエリー様には会われたんですか? 」
そう、今回の一番の目的、『姫様、エリー様に会う』が達成されたのか。
「いや、まだなんだ。どうやらあちらの姫が歓迎会で会いたいと言ったみたいで。しかも叔父上にエスコートしてほしいってね」
「え? でも、エリー様は確かドレスで出るっておっしゃっていませんでしたか? 」
「ああ、それで揉めたんですが………叔父上は絶対にドレスで出るって頑張って、あちらの国もエスコートしてくれるならどんな格好でも良いって言ったものだからドレスで参加が決定しましたよ」
おお〜、エリー様頑張ったのね。
でもドレス姿でも良いだなんてどういうことだろう?
そんなことを話しながら殿下と私は控え室までやって来た。
「今回はフローラ嬢は特例で参加なので、みんなが入場し終わった後にそっと私と王族席に行くことになります。フローラ嬢が正面から登場すると隣国の姫より目立ってしまいますからね。一応あちらの面子を潰すわけにもいかないので」
いやいや、そんなに目立たないと思いますよ?
それからお茶を飲みながら待つこと三十分、どうやら皆様会場に入られたようです。
そろそろ行くのかな?と思っていたら、一緒にいた殿下の元へ騎士らしき人が何かを伝えに来た。
「うん? ああ、思った通りの展開になったんだな。フローラ嬢、あなたが叔父上に贈ったリボンが思った通りピンクになったそうです。とりあえず行ってみましょうか? 」
おぅ、やっぱり魅了持ちだったんだ。
しかもいきなり他国の王族に魅了かけてくるなんてかなりの自信家だね。
殿下と私は先程殿下に伝言を持ってきた騎士の先導で会場へと向かった。
会場にはもちろん正面からは入らず、王族席の近くにある出入り口からそっと入ってみた。
私が来たことに陛下と王妃様がすぐに気付いてくれた。
二人は私を見ると笑みを浮かべてくれたが、すぐに顔を引き締めるとそっとある方向へ顔を向けた。
それに気付いた殿下と私もそちらを見てみると、エリー様とエリー様の手を握り締めるゴージャスな美女が会場の真ん中にいた。
アレが隣国のお姫様ですか〜。
エリー様の髪に結ばれている私が作成したリボンはものの見事にパステルピンクに染まっている。
『モケ〜、見事に染まっているモケね〜。あの勢いだと何の対策もなくあの魅了を受けたら、大抵の人は魅了されるモケね〜』
モケゾウが私にだけ聞こえるように言ってきた。
確かにあの染まりっぷりはかなりの威力だね。
だけど、私の作ったリボンは負けないよ!
なかなか魅了の効果がないことでお姫様が焦れてきたようだ。
「エイドリアン様、私はあなたの素敵な姿が見たいですわ。着替えて下さるわよね? 」
「ふふ、素敵な姿なら今お見せしているではないですか? 確か今日のエスコートはドレス姿でも良いとおっしゃっていましたよね? 」
お姫様の目論見ではドレス姿でエスコートされても、その会場で魅了し、自分の為にドレス姿から男性用の衣装に着替えるエリー様を見せつけたかったんじゃないかな?
「………おかしいわね。エイドリアン様! 私の為に私に相応しい格好をして下さい! 」
傲慢とも取れるお姫様の声が会場に響き渡る。
「ふふ、無理ですわ」
笑顔で断るエリー様、ステキです。




